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枯死向寒⑦

 父上にクリスティーナ姉さん、シエラン兄さんたちは双子の後釜に誰を据えるか、アジェルダ戦地の戦況について話し合い解散した。私にも、クレアにも任務は割り振られなかったがこの先いつかはその時が来るだろう。状況が切迫している今、クレアが戦場に無理やり、火種として投入されることになる可能性もある。きっとそのうち私にもジェニーロスト国の上層部の暗殺任務が割り振られる。


 私の任務は別にいい。けれど、クレアが兵器として使われる前に手を打たなければならない。


 どうしたものかと思ったが、クレアがお腹が空いたと言うので、そのまま夕食を食べるために食堂に残った。食堂には私とクレア、クレオ姉さんしかいなかった。


「……クレオお姉ちゃん? どうしたの、大丈夫?」


「……あ、ああ。……なんでもない、気にするな」


 珍しくぼんやりとしている。いつもきっちりと服を着込み、身だしなみを整え、厳格な立ち振る舞いをする彼女にしては珍しいことだった。心ここにあらず、といった様子でクレアの問いかけにもまともに応じず、足早に立ち去っていった。食事をするために残っていた訳ではなかったようだった。


 どこか嫌な予感がする。嵐の前の静けさ、ここから更に状況が悪化してしまうのではと思うような違和感。


 その夜は何か変なものを感じながら眠りについた。クレオ姉さんが何をしようとしているのかを誰も知らず、屋敷のもの達も深い眠りにおちていた。


────地下牢


 屋敷の者、兄妹、牢屋の囚人でさえ眠りについた深夜のこと。地下牢を一人歩く者がいた。いつもの高いヒールは履いていないのか、足音も響かない。服装も目立たない、かつ動きやすいものを身につけたクレオの姿が地下牢にあった。


「デューク、起きろ……デューク」


 怪我は無いものの気を張って疲れたのか眠っているデューク・アボルビュートにクレオは声をかけた。


「ん、クレオ?」


「そうだ、逃げるぞ。今すぐここを出るんだ」


 呼び掛けに目が覚めたデュークは、クレオが言った言葉を噛み締めるように数秒思考した後驚愕に表情を染めた。


 囚人である自分を連れ出すということは、クレオが被害を被る結果に繋がる。それを理解したからこそ彼は驚いていた。そうしている間にもクレオはデュークの手を拘束していた手枷を外し、持ってきていた暖かいローブを彼に差し出した。


「そんな急に動き出すなんて、余程のことがあったのか?」


「カサール国とジェニーロスト国が手を組んだ。この戦争はシリディ国が敗ける」


「あの国が参戦してきたのか? いつも傍観者に徹していたあの国が……?」


「何が目的かは知らない。だがこの国の、いや父上の敵に回ったことは確かた。追い詰められた父上は手段を選ばない」


 クレオは自分の父、コーディ・クレリデイラの残虐さをよく理解していた。だからこそ、逃げ場がなくなり追い詰められた父上は、カサール国の人質として捕らえたデュークに何をするか分からない。


 屋敷が騒がしくなり、人の目による監視が散漫になった今日。逃げるなら今しかない。長年培った勘で、クレオは逃亡という行動に打って出たのだ。


「逃げるための馬車を用意しておいた。遠回りにはなるが、アジェルダ戦地を避け迂回してカサール国に向かう」


「……いいのか、クレオ。この作戦は君のこれまでの努力が無駄になる」


 クレオを心配し顔色を伺うデュークをキッと睨みつけ、彼女は言った。


「いい。どうせこの家にいたところで、いつか当主争いで死ぬんだ。それに……」


「それに?」


「惚れた男を守りたいと思うのは当然だ」


 その日、クレリデイラの屋敷から二人の人間が消えた。

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