晩夏の実り⑦
「……私を、この子たちと共に買ってください」
私を引き止めるために「買ってくれ」と声をかけたのかと思ったがその言葉はそのままの意味だったらしい。このるたち、とは先ほど聞いた二人の獣人だろう。
「……この子たちは双子で、キツネの獣人です。私と血は繋がっていません。ですが、この子たちは私の家族同然なんです。この劣悪な環境で私よりも幼いこの子たちが生き抜けると思いますか?
ユキヒョウの獣人である私はこの程度の暴力なら耐えられる。けれど、キツネの獣人であるこの子たちはそうはいかない」
汚れてくすんではいるものの、三人とも光を反射する銀髪。遠目からだが、見える限りの要素から姉妹かと思ってしまうほど彼女たちはよく似ている。キツネの獣人だという双子は下で丸まっていて動く気配がないのを見るに眠っている、というよりかは体が限界を迎えて気絶している、というのが正しいだろう。
「お願いします……私に出来ることなら何でもします。あなた様に仕えて命を終わらせる覚悟もあります。どうか私たち三人の命を拾っては、いただけませんか。この子たちの命を救っては、 いただけませんか」
決死の覚悟というものなのだろうか。家族なのだと彼女は言ったが、実際は血の繋がっていない赤の他人だ。その双子のために己の矜持を捻じ曲げ、地に頭を擦り付ける価値はあるのだろうか。私にはそこまでする価値があるようには見えなかった。だが、彼女たちにとって「家族」というのは守り、慈しみ、愛する存在らしい。まあその価値を決めるのは私ではないのだろう。
それよりも私に声をかけたのは私が偶然彼女たちの前を通ったからか、それとも利用できそうな者を選んで声をかけたのか。そちらの方が私にとっては興味のあることだ。
そして、自分たち三人をまとめて買ってくれと図々しくも頼み込んでくる。その度胸も多少は興味を引いた。だが、それだけで頼みを聞いてやる理由はない。クレリデイラには居ない優しい人間なら懇願されれば助けてやるのかもしれない。私は奴隷制度が好きでも嫌いでもないが、それでも情で助けようと思うほど優しい人間ではないのだ。
「私がそこの彼女たちを君と共に買ったところで、私になんの利益がある?使用人は三人も必要としていない。ー人でもいれば十分だ。それに君を買うと決めた訳でもない」
これは事実だ。
兄姉の中には十数人の使用人を従えている者も存在するが私には必要ない。自分の身は自分で守れるし、護衛にしても一人居れば十分。身の回りのことをさせるにしても、私の好みの服はドレスなどではなく動きやすいスラックスだから人手は大して必要なく、所有している物自体も数が少なく管理は簡単。
人が不必要に増えていく方が手間が増えるというものだ。まだ使用人としても、護衛としても教育を施せていないのなら尚更。
「……そ、れは」
「私を納得させられるだけの大層な理由は? 私が君たち三人を庇護下にいれてもいいと断言できるほどのもっともらしい理由を言ってみろ」




