表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/49

晩夏の実り⑤

「やっぱり外に行こう。大丈夫、誰かを傷つけることなんてない」


「……うん」


「フェリーチャに支度を手伝ってもらおうか、呼び出せばすぐにくるよ」


 廊下を覗き、通りかかった使用人にフェリーチャを連れてくるよう言いつける。


「……ミリーはフェリーチャといつから一緒に居るの」


「フェリーチャ? いつから、か。七歳の時からだ。およそ四年ほど彼女たちは私に仕えている」


 クレリデイラの兄妹全員が専属の使用人を付けている。専属の使用人が付けられるのは七歳になった時だ。クレアの質問に答えようと昔を思い出した。


「あの時は────」


 七歳の頃のこと。クレリデイラでは七歳になった時から専属の使用人をつけられ、それと共に序列争いに参加する席を与えられる。


 故に七歳の誕生日の日、またはそれよりも前から己で自分の専属使用人を見つけるのだ。下に位置している街ジェラムの民から連れてきたり、奴隷商人から買い取ることもでき、元々クレリデイラに仕えていた無所属の使用人でもいい。


 自分で選択すること、その条件さえ満たしていれば連れてくる者は誰でもいい。


 この選択はクレリデイラの子供たちに与えられる最初の試練ともいえる。周囲の者たちが味方とは断定できず、ほとんどの場合が敵であるこの屋敷で、唯一確実な味方を得る機会。この選択が自分の命運を分けることになると言っても過言ではない。


 実際、己の使用人に裏切られて失脚していく者も少なくないのだ。


私の場合は奴隷商人から買い取ることを選んだ。他の選択肢では選んだ者が誰の息がかかっているか分かったものではないからだ。


 クレリデイラの屋敷には月に数回様々な商会の商人たちがやって来る。その中には奴隷商もいた。シリディ国では奴隷が禁止されていないが、他の国では禁止しているところも増えていると聞く。それを鑑みるとシリディ国の貴族で奴隷を購入するクレリデイラ家は優良顧客なのだろう。


 三台ほど連なってやって来た荷馬車。見た目は大して大きくもなく布と木でつくられている質素な商人の馬車だ。大人数が乗り込める馬車ではない。最初にその馬車から降りて地に足をつけたのは平凡そうな男たち。おそらく商会に商人たちだ。これで終わりかと思ったが、続いて降りてくる人影があった。


 出て来たのは長身で屈強な男、 しかも一人や二人ではない。到底一つの馬車に収まり切る人数ではないから、拡張魔法が掛けられているのかもしれないと思い当たった。


 そして中でも目を引いたのは最後に馬車から降りてきた紳士服の男。身なりが良く肌つやも良いのを見るに、これまで降りてきた男たちは皆彼に雇われていて、あの男こそがこの奴隷商会の商会長なのだろう。


「中から荷物を降せ! 木のものから順にだ! 鉄は次に、そのまま拘束している奴隷は上物だからな、中にそのまま置いておけ!」


「お前たち、サボリでもしたら飯はなしだ!給金も覚悟しておけ!」


 野太い声が響き渡ると一斉に大人数が動き始めた。聞こえてくる声の中には指示を飛ばす声だけでなく、木の格子に入れられた奴隷の引き攣るような小さい悲鳴も混じっていた。その声に気を取られ、声のする方を眺めていると優雅な足取りで近づいてくるのは先ほどの紳士服の男だった。もっとも、彼が近づいて来ているのは屋敷の入り口付近にクレリデイラの子どもたちが集まっているからだが。


「クレリデイラ家の皆様、いつも私の商会をご贔屓にしてくださり誠にありがとうございます。今回も上玉の奴隷をご用意しておりますので、どうぞごゆっくりご覧下さい。気に入ったものがありましたら近くの者にお申し付けください」


 男は芝居がかった振る舞いで挨拶を済ませると使用人に連れられて屋敷の中に入っていった。


 父上に挨拶でもするのだろう。そう思っていいつの間にか綺麗に並べられた商品を眺め吟味している兄姉たち。なにがそこまで楽しいのか私には分からないが、見るかぎり兄姉たちは愉しそうな雰囲気をまとっていた。


 私も自分の使用人でも適当に見つけて帰ろうと歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ