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嵐の吹き荒れる梅雨⑤

 はっと息を飲んだ。なぜクレアが私の任務のことを知っている?


 私はクレアに任務の内容を言ったことはないし、それを悟らせないように誤魔化してきたのだ。いずれクレアもクレリデイラの一員として人を殺す時が来ることは分かってるが、私が人を殺していることをこの心優しい少女が知ってしまえば彼女は私を軽蔑する。


 それが分かっていたから隠してきた。なのに、なぜクレアが知っている?


 考え込んでいる私に図星だから何も言わないのだと悟ったクレアは言葉を失っていた。


「ほんとだったの……?」


「誰から聞いた? 誰が君に教えた?」


 クレアに近づき問い詰めるように上から見つめる。


「……カリーナお姉ちゃんとセレーナお姉ちゃん」


 わざとだ。名前を聞いた瞬間思った。私の任務を教えたのはおそらくわざとだろう。あの双子は昔から誰かを虐めることが好きで、人が嫌がることを進んでやる愉快犯だった。今回のこれもそれの類いだ。もう少しでまたアジェルダ戦地に戻ることになるから、今のうちに新しい玩具で遊んでおこうとでも思ったのだろう。腹が立つ。


「別におかしい事でもないだろう、この家はそうやって成り立ってる。外敵を秘密裏に排除するのが私の役目で、戦地で真っ向から敵を叩きのめすのがカーティス兄さんやセレーナ姉さんたちの役目だ」


 冷静を保つよう務めながらそう答える。


「クレア、君だってそのうちそういう任務が与えられるだろう」


「ひ、ひと、人殺しなんて!」


 そんなの出来るわけない。叫び声とは打って変わってか細い声でぽつりとそういうクレアが私は何故か癪に障った。怒りなのか、不安なのか、予想していたこととはいえクレアに受け入れて貰えなかった悲しみなのか。様々な感情が胸の中で渦巻いている。


 声を荒らげることはなかった。だが、手に持っていたナイフを強く握り過ぎたのか爪が掌にくい込みポタポタと血が滴っていた。それを認識しても痛みを感じることはなかった。


「そう、だったらそのまま野垂れ死ねばいい。この屋敷に出来損ないの居場所はない」


 気づけば口をついて出ていた。酷い言葉だ。こんなことを言いたかった訳じゃない。違う、君を、クレアを傷つけたい訳じゃない。


 それなのに口から出た言葉は止まってくれない。頭では理解しているのに体がついてきてくれない。


「クリスティーナ姉さんは商才があったから、戦わなくとも第二位の座に着けてる。シエラン兄さんも戦闘の才能はなかった。けど、情報収集の腕は兄弟いち秀でてる。クレオ姉さんだってそうだ、あの人は片目が失明してるから戦闘で優位に立てない。その代わり拷問官として返り咲いた」


 自分より上に立つ兄と姉。正しく邪魔な存在だ。自分よりも価値のある存在としてクレリデイラに貢献しているから、切り捨てられるのが早いのは私になる。

 それでも、認めなければならない。そういうものだ。


 私たちクレリデイラ家に家族愛はない、利用し利用される関係、切り捨てられるとき助けてくれる存在はいないのだ。自分のことは自分で守るしかない。だからクレア、君も自分の価値を証明しないと此処では生き残れないんだよ。


「戦うのが嫌だと言うならそれでもいい。けど、それなら君の価値は? この家で君を第十位に置いておくに相応しい才能は? それを証明してから我儘を言った方がいい」


 立ち尽くすクレアを置いて立ち去った。出来るだけ早くこの場を離れたかったのだ。自分が何を言ったのか、思い出したくも考えたくなかった。


 自室に帰ってきても何をする気にもなれずに腰のポーチを放り投げソファに座り込む。目の前の本の山すら煩わしくて机を蹴りつければ、本の山は音を立てて崩れた。


 酷いことを言ってしまったのだと思う。謝った方がいいこともわかっているが、あれは事実だったしどうやって謝ればいいのかも分からない。


 昔から、クレリデイラ家の子供たちはこう言われて育つ。「あなたがあなたの価値を証明できなければ、人としてここで生きていくことは許されない」、それが教育係が教育の際に使う言葉であり母親が子供に語りかける言葉だ。


 力で証明できなければ頭脳で示せ。私は同年代よりも頭は良かったが、それでもクリスティーナ姉さんのような上の兄弟たちと頭脳戦で戦って生き残れるかと言われれば断言できず、力で勝ち残れるかと言われればそれはなかった。だから、ほかの兄妹が得意としておらず家の利になる特技を身につけた。それが暗殺だ。


 クレアが生き残るのは容易じゃない。手をちに染めなければここでは生きていけない。それをどうやって伝えればよかった? 

 これ以上何も考えたくなくてソファからベッドに移動しそのまま眠りについた。

作者からのお願いです。

おもしろい、続きがみたいと思われた方はブックマーク、評価をおねがいします。

 おもしろくないと思われた方も、面倒でしょうが評価での意思表示をしてくれたら嬉しいです。

 おもしろくないけど読めたから☆ひとつ。

 まあ頑張ってるから☆ふたつ。どんな付け方でも構いません。今後の執筆の糧にしていきます。

 作者としては反応があると嬉しくなります

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