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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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お相手探し

 コルネ伯爵の美しいウェディングドレス姿を見て、私も着てみたいと思った。しかしウェディングドレスは特別なもの。花嫁だけが、着られる物なのだ。


 相手が必要、新郎が必要、そこで浮かんだのは……。


(まさかのジーク! とんでもない事態だわ!)


 このままでいけないと思った私は父親に手紙を書く。


『お父様、私、縁談話があれば、受けたいのですが』と。


 するとすぐに父親から返信が届く。


『父さんの知り合いのモーリス男爵のご子息、リュックモンド氏がまさに花嫁探しをしている! ぜひ会ってみるといい。仕事が早く終わる日があれば、我が家で夕食を食べることにして、そこで顔合わせるのでもいいだろう。もしくは仕事が休みの日でも屋敷に来るといい』


 こうもトントン拍子で縁談話が来ると思わず、驚きもしたが……。


(きっと(しゅ)が、私に結婚せよと啓示を与えてくれているのかもしれない)


 それを確信するのは、この言葉を聞いた時。


「リエット。春になった。決して僕がショックを受けたわけではないぞ。温かくなったからな。アナグラムの解読は終了で、武術訓練を再開しようと思った。だが忌々しい……いや、尊敬すべき長官が新たな任務を課してだな、しばし王都を離れる必要がある」


 図書館ではなく、裏庭に来るよう言われ、武術訓練が再開だわ!と思ったら、まさかの朗報!


 ジークに縁談することがバレたら、何をされるかわからない。策を練ったところだったのに、まさか王都をジークが離れるなんて!


「そうなのですね……! それは……とても好都合ではなく、残念です。はい、心から残念に思っています」

「……リエット、棒読みに思えるのは気のせいかな?」

「気のせいだと思います。あ、よかったらこちらをどうぞ」


 すかさず私はメイド服のエプロンからある物を取り出す。


「……これは?」

「私の好きな香水です。……ジークにぜひつけていただきたくて!」

「リエット……!」


 感極まったジークにぎゅうぎゅう抱きしめられるが、これは我慢。この香水をジークが愛用してくれれば、たとえ彼がその驚くべくスキルで気配を消しても、香りで感知できる!


(これで万一も起きない。万全の状態で縁談ができるわ!)


 ◇


「リュックモンド・モーリスと申します。オルリック嬢、お会いできて光栄です」


 ジークが王都を立った翌日、早上がりさせてもらい、実家に帰り、リュックモンド氏と家族と共に夕食をいただいた。


 リュックモンド氏はジークとは真逆。武術とは無縁と思われる細身であり、眼鏡が似合う、王都の役場で事務官をする文官だった。


 やや神経質そうに見えるが、その顔は整っており、黒のテールコートもよく似合っている。


(悪くないわ)


「では我々はひと足先に退出するが、この後、食後の紅茶と焼き菓子を出すので、寛いでください」


 父親はそう言うと、母親と兄を伴い、ダイニングルームを退出。私とリュックモンド氏は食後の焼き菓子で歓談となる。


「オルリック嬢は宮殿で行儀見習いをされているのですよね?」

「はい。メイドをしております」

「それを聞いて安心しました!」

「……?」


 首を傾げると、リュックモンド氏は笑顔でこんなことを言い出す。


「私と結婚したら、宮殿勤めは辞めていただいて構いません。宮殿でも、結婚退職する使用人を無理に引き止めることはないので、問題なく辞められるはずです」


 これには「!」と思う。

 メイドの方は辞めてもいいだろうが、ミラーの方は……。そう簡単に辞められる気がしないし、結婚後も続けるつもりでいたのだけど。


「実はモーリス男爵家は、相応に財力はあるのですが、父上が子供好きで……。私には弟と妹が八人いるんです」

「は、八人!?」

「はい。弟がなかなかできなくて、孤児院から引き取った兄妹もいるのですが……。その後誕生した妹は、三つ子で」


 農家は子沢山と聞くが、貴族で九人の子供はかなり多いと思う。


「それで私と結婚した暁には、まだ未婚の弟と妹のために、オルリック嬢には頑張っていただきたいと思っているのです」

「……それはつまり……」

「まあ、宮殿でメイドをやる必要はないと言うことです。モーリス家でメイドをやるとでも思っていただければ!」


 これには「なんですって!」と叫びそうになるが、我慢、我慢。


(男爵家は平民すれすれの財政であることは、よく聞く話。使用人の数が少なく、男爵夫人が奮闘するのも仕方ないこと)


 私はちゃんと我慢して受け入れようと考えた。だが──。


「オルリック嬢は修道院にいたことがあるのですよね? ある意味傷物でありながら、男爵夫人になれるんですよ。そこはありがたく思っていただきたいですね」


 リュックモンド氏は言わないでいい一言を口にした。これを聞いた私は……。


「マリエット! すっかりおとなしくなったと思ったのに! なぜリュックモンド氏が気絶しているんだ!?」

「さぁ、突然気を失われたので、私も何が起きたのやら。見ての通り、リュックモンド氏はどこにも怪我をしていません。……寝不足だったのではないでしょうか」


 しれっと答え、知らぬ存ぜぬを突き通すと、父親は「もしやリュックモンド氏は何か特殊な病持ちなのでは!? この結婚、考え直した方がいいかもしれない」と呟く。


 これを聞いた私は心の中で「よし!」と笑顔。そしてジークに鍛えてもらえてよかったと、心底思うのだった。


お読みいただき、ありがとうございます!

次は5/1に更新しますね☆彡


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