---74--- 拠点 修行 瞑るか?瞑らないか?(フェンラ、アイ、レレ)
拠点家屋玄関前に行くまでに、邪眼がどういった性能なのかをフェンラから聞きながら歩いている。 二人の会話を聞きく限り、何ら邪眼につての情報を持っていない事が分かり、魔族の能力等はすべて把握しているレレは、少しばかり苛立ちを覚える。
だがこの機会に、何の情報も無い状態から、どうやってシアキ達が邪眼の正しい使用方法を見つけ出すのかに興味が湧いて来るのだった。
玄関前に到着する。二人の後ろを歩いていたレレは玄関前の階段に腰を降ろし太ももに肘を乗せ両手を頬に当て、興味ない表情で両者を見る。
「お義兄様、私は、ココで座って待ってますわ。
その劣等種が怪我をしたら呼んでくださいまし、特別にその劣等種の回復は約束通りして差し上げますわ。
あとお義兄様、邪眼についての情報は、私は、何もお教えしませんので、期待はしないで下さいましね
どうしてもと仰るならお教えしますが、お義兄様には、私が把握していない特殊能力がある様ですし特に問題はありませんわよね、ふふふ。
さぁ~私に見せてくださいまし、その特殊能力を使う所を、ふふふ」
ペロリの舌を出し自身の唇を舐めながら座っている。
正直レレをこの場に連れて来たのは邪眼についての情報を何か教えてもらおうと思っていたが、先に何も教えないと言う様に釘を刺されてしまった。
嫌な予感がしたので、レレのステータスを覗き見る。
すると備考欄に「強制他者能力吸収取得 使用準備 -行動分析観察中-」と表示され点滅している。
この能力吸収を目論む事はルルから聞かされていたので、事前に予想されていた行動なので気にも留めず、今は得られている情報だけで邪眼についての修行方法を考える事にする。 そして能力を吸収しようが、元々概念のないこの世界の住人が幾ら概念を理解しようとも自分のこの能力を使用する事は出来ないとルルに聞かされているので、その行動分析観察中と言うのを逆に利用しようと考え行動する。
「ハハハ、流石レレだな、そうだな俺の能力使えばある程度は何とかなると思うから、すまんが邪魔せずソコに座って俺達の事を見守っててくれ。
あと回復をすぐお願いするかもしれないから、呼んだらすぐ来てくれ、さもないと仲間が死んだら嫌だからな。
・・今ある情報だけで考えを纏めるから、少しだけ静かにしててくれな・・・」
「分かってますわ、さぁ~その情報の少なさでどうやるのかお手並み拝見ですわ、ふふふ」
二人のやり取りを見てフェンラは、邪眼について自分が生きてきた間で得た情報で有益と思われる物が、昨日得た情報だけなので、何だか申訳ない気持ちになる。
思考中のシアキは実に近寄りがたい。邪魔をしないようにフェンラは物音を立てないようにし横で待機する。
今分かっている事をシアキは頭の中で思い描き整理する。
昨日神降ろし中のリムから、少しだけ情報が聞け、邪眼使いと言う職は今まで自分達が理解していた「己の力を増幅増減を制御する職」と言うのではなく、実際は「己の力と相手の力を視て制御する職」であるとの事。
その事を理解し邪眼を使用したところ、魔素、聖素、魔聖素と言う見えない魔法の元になる物質自体を、邪眼で目視出来て可視化する事に成功したという事。
掌に出された火の魔法も邪眼で見て強制的に魔法を操る事にも成功したという事。
先程、エラルを邪眼で操り、自身の足元まで動く事なく、ただ浮かせ運んだという事。
邪眼使用後は凄い眼精疲労に襲われるという事。
この中で見えない物が可視化出来たという事を聞いた時からある事が頭の中で出来ないかと思い付いている。
それは、透明化だ、いや所謂、透視が出来ないかと真っ先に思い付いていたのだ。
邪眼で見えないはずの魔素、聖素、魔聖素、つまり粒子的な物質が可視化出来るなら、壁や岩も突詰めると構成しているのは粒子であると考えそれらを透明化させれば即席の透視が出来るのではと勝手な考えをしている。
特定の壁や岩等に意識を集中して構成粒子のみを透明化し邪眼で透かして見る事が本気で出来ないかと考えるのだが、これは純粋にそう考えてでは発想ではない。 壁を透視出来れば、女の子の着替えが覗けそうだとか、服を透視出来れば下着姿等が拝めるかもと、シアキも健全な男の子なので、そんなくだらないピンク的発想で考え出されたものだ。
そしてシアキは考え事をすると無意識に小声で口にする癖がある。
「邪眼で壁や物とか透視、出来るかな~・・・」
小声ではあったが、すぐ横で静かに様子を伺っていたフェンラの耳にはっきりと、邪眼で透視と言うキーワードが聞きとれた。
そのキーワードを元にフェンラは瞬時に思考を巡らす。
敵との交戦中であった場合、気配感知をする事が一般的だ。これは相手にも自分の居場所を伝えると言う危険性があり、余程の実力差が無い限り表だって使えない能力ではない。
もし気配を完全に消した状態で建物や障害物の影に隠れ、邪眼で物体の先にある物を透視が出来れば、敵に自身の位置を悟られず、目視するだけ敵の数、捕虜の位置、各種様々な情報を得られる事になる。
自分はこのパーティーの頭脳として頼りにされているので、邪眼でその様な事が出来れば戦況を有利にする為の情報収集が可能であり、その場で新鮮な情報を元に戦略を立案出来て、且、シアキの使う念話と併用をすれば、敵との戦闘に置いて十分過ぎる程、有益な状況を用意出来、敵より二手三手先の行動を取り圧倒する事が確実となるだろうと言う考えが纏まり上がる。
「透視か~お主は、やはりすごい事を思い付くの~、確かに、気配感知を使わず、気配を完全に消したまま、建物や物影から透視し、その先が見られれば、敵に悟られず敵の位置や罠等を見破れ、戦況を有利に出来るかも知れぬな。
お主の念話と併用すれば、きっと敵の数手先まで有利なモノに出来るじゃろうな。
邪眼は見え無い物を見る事に特化しておると我は考えておるのじゃが、そうじゃな物体その物を構成している物質を透明化する事が出来れば、透視も可能かも知れぬな。
じゃがどうやるかは皆目見当はつかんのじゃ・・・、でもその方向で修行を進めてみるのもよさそうじゃな」
少しピンクな思考で考えた事を、正しい路線で解釈しているフェンラの言葉を聞き恥ずかしくなる。
今度は真面目に邪眼の修行方法を考える。
まずこの世界にある物質を構成要素を知る必要があり、魔素など魔法の素となる物質が本当に粒子なのかを知る必要がある。
だが、これは専門の学者等でない限り分からないので、何処かの研究機関等を調べ聞きに行くとして後回しにする。
今出来るのは魔素系、聖素系、魔聖素系の魔法を使い物質の生成を行い、それらの物を使い、手探りで透視の修行をして行く事のみだ。
構成要素の勉強が出来れば、対象を岩、木、建物等に応用範囲を広げ修行を開始しようと考える。
ココはやはりラナ王国等で魔法の魔素等を研究している学者等を見つけ、少し話を聞く必要があるだろうとの思いに至る。
次に邪眼の連続使用時間の検証だ。
これは実に検証したくないことだ。また魔素焼けを起こし、フェンラを傷付ける可能性があると思うと心が痛む。
まだ本当にレレが治療をしてくれると言う確証が持てないので、この検証は邪眼を使い熟せるようになってから行う事にしようと思う。
取敢えず、最初にすべきは、邪眼使用で、どの項目値が減るのかを確認する必要がある。
もし体力が減るなら、戦闘時で体力消耗した状態で使用する事を禁止しなければならない。 また精神力が減るなら、逃げ道を確保してようが、精神力ゼロとなり気絶する事も想定されるので担いで逃げられる味方が傍に居ない際は使用をせずに、素直に敵の捕虜として捕まる事を念押ししておかなければならないと考える。
あとレレの視線が痛い。
確実に何かを見破ろうとする目をしている。行動所作一つ一つ何も見逃さないぞと言う感じで視線を向け笑顔で観察している。
「よし、何か色々思い付いたぞ・・・・あ!そうだ!」
先にフェンラには、この修行期間中、自身のステータスを開きっぱなしで行う旨を伝える。
唐突にフェンラの手をシアキは握り眼を見つめる。この行動の意味が分からないフェンラは恥ずかしさのあまり眼をキョロキョロさせる。
「駄目だフェンラ、俺の眼をちゃんと見ろ、じゃないと修行が始められないだろ」
この行動はきっと意味のある行動だと思い、レレは身を少し前に乗り出し、両者の間に何かの術が発動しているのかを探る。
そしてシアキは魔素で円柱状の膜をただ単に作り、その中にフェンラと共に入る。
この手を握るのも、見つめ合うのも、魔素の円柱形の膜の中に入るのも何ら意味の無い事だ。所謂レレに誤った情報を与える為の偽装だ。
恥ずかしそうにしているフェンラの表情を見ながら、念話を繋ぐ。
『フェンラ!良いか今やってる事は何ら意味の無い事だ。レレに少し誤った情報を与える為の偽装工作だ。
そして今は声を出さず、俺の眼をじっと見ておいてくれ!。
すまんが、修行期間中、無意味な事を数々仕掛けるから、修行前は手を繋いで眼を見るこんな無意味な行動をレレの前では行うから一々意味を考えるな。
それと、修行をする際は、フェンラの強さを、逐一確認させてもらいながら修行を行うからな。
あと必ず、邪眼使用時、違和感、痛み、疲れ等を少しでも感じたら逐一言葉にして教えてくれ。
なんせ邪眼については、まだ何も俺は把握してないからな、頼むな』
『ど、どうして、レレ殿を騙すような事をする必要があるのじゃ?。
レレ殿は、もう仲間であろう?このような事をする必要はないはずじゃが?』
『逆だ、興味が無くなればレレはルルと違い躊躇なく全員を屠る。
その為には思考しても解けなくなるような事を無意味に放り込んでおいた方が良いんだよ。
それに、レレは義妹になってくれてるが、仲間に成った訳じゃないからな、いつ裏切ってもおかしくないって事だ』
十分すぎる変な沈黙の間が空いているのでレレはこれが特殊能力の何らかの発動条件ではないかと勘繰り、行動と周囲の変化を見逃すまいと凝視してくる。
「よし準備出来たぞ、これで邪眼の強さのキッカケはこれで十分だ。
あとは修行でそれを開花させるだけだ」
―― 何でしょう?・・・今のは?。
私の時は、瞬時に行えたはずですわよね。
あのような時間などを掛けず、強くするキッカケを与えて見せたはずですわ。
もしかすると、強さのキッカケを与える術には、幾つか種類があり、個々に応じで使い分けを行っているのでしょうか?。
それとも、私の時のは、簡易式で中途半端な時限式で弱くなる様にされているモノを施されたのではないでしょうか?。
・・・いえこれは十分有り得ますわね。お義兄様は、頭の回転が速い方ですし、安全策を講じている可能性はありますわね。
だとすると、私が使える蘇生系の術を駆使して人族としてお義兄様を延命させれる限界は約百二十年、魔族に種族を替えた場合、最も長寿のものにして約八千年前後ですわね。 この場合魔族になったお義兄様が、私の私物になる事を拒む為事も予想出来ますし、その際、私を強制的弱くする為の準備をされていると考えるのが自然ですわね。
不味いですは、お姉様が言った通り、言葉遣いが仇となり、恐らく、私の事を、お義兄様は一切信用していない可能性が濃厚になってきましたわね。
どうしましょう・・・ココは信頼を得て正式な方法で術を掛け直して頂けるよう懇願すべきですわね。
でも、今更口調を変えた所で全部嘘臭くなりますし、私の場合、既に素を見られている以上、お姉様のように素を見せていないのとは訳が違いますわね・・・。
何やらレレは、難しい顔をし座りながら頭を抱え悶えている。きちんと今の無意味な行動を、意味ある行動と捉え、思考し悩んでいるようだ。
それを見ていると少し心が痛むが、これも仲間の身の安全を考えると仕方の無い事だと割り切り見ないようにする。
今は邪眼で自由に魔素を可視化したり透明化したり出来るかを確認する事が優先であると考えフェンラの方を見る。
早速右手掌の上に、以下のイメージをして球体を作る。
厚み一センチ程で気密性のある隙間の無い、直径十センチ程の中身が空洞の球体を魔素で作るイメージをする。
魔素で作った物の空洞部分に流体状になるように魔聖素を満たすイメージをする。
魔聖素で満たされた空間中央付近に魔素で直径一センチ台の球体を浮遊させるイメージをする。
勿論これは空間から魔素と魔聖素が自動供給され、解除と念じれば消える。
掌に何か集まっている感覚が得られたので、恐らく思い描いた通りの物が掌にあると思われる。
何故、三重構造にしたかだが、魔素を透明化した際、表面と中央にある魔素は透明化するのか、それとも中央の魔素の球体は可視化された状態なのかを同時に確認する為にこの構造を選んでいる。
これでフェンラの邪眼での透明化が何処までを透明化するのかが判明するのだ。
「さぁ~俺の掌にある物を詳細に出来る限り教えてくれ?」
何もない右手の掌を向けられる。
その行為が何を示しているのかは一目瞭然、掌に見えない魔素等で作った物があると推測される。 両目を閉じ邪眼のみを開きシアキの掌にある見えない物を邪眼を通し確認する。 掌にあったのは、魔素で作ったと思われる黒い球体のみがあった。
使用方法は邪眼のみを開き使用するという事が分かった。
そして使用中、精神力と体力が同時に微量だが減り続けている、これ位なら戦闘中致命傷になる様な怪我を負い体力が極限まで減っていない限りは使い続けても命は落とすだろう。
「魔素で作った球体状の物が掌に一つあるだけじゃな」
「それだけか?」
その問い掛けは、他にまだ何かあると言う感じなので、他に何かないかとシアキの周りを邪眼で凝視するが何も確認する事は出来ない。
「他には無いのじゃ、その問い掛けからすると他に何かあるのかの~シアキ殿?」
この返答で表面上の魔素部分だけしか可視化出来ない事が立証出来た。
次に魔素を透明化させ見るように伝える。
これが出来れば邪眼での魔素等で作られたトラップを見破れる透視技の基礎的な物が完成するはずだ。
「じゃ~その魔素を透明化・・いや半透明になるとでも思って魔素を透かすようなイメージで見てくれるか?」
一つ頷き、先程から邪眼のみを見開き、瞬きをせず掌を凝視し続けている状態なので、邪眼が乾き、涙がジワリと出てくる。
真剣に試みているが、魔素のみを消すと通常視界に戻るのみで、魔素単体のみを消す事には繋がらない。
何度も試みるが変わらない。そろそろ邪眼の乾燥が酷くなり痛みを覚える。
邪眼を潤そうと涙が止めどなく流れるが、瞬きをしないので邪眼そのモノは潤わない。
邪眼から涙が流れ落ちて瞳を閉じている両目を濡らしていく。
そしてシアキは手の甲に魔素のみの球体を新たに作るイメージをして球体を増やす。
そこで集中が途切れ、瞬きをしフェンラは邪眼の使用を終える。
「駄目じゃ~何も変わらぬのじゃ。
手の甲に魔素の球体が新たに増えたのは確認出来たが、魔素だけ消す事は無理じゃ。
見えない物を見て更に見えた物をまた見えなくするとか複雑すぎるのじゃ。どうして良いのか頭が混乱して分からなくなるのじゃ。
それにこの使用後の眼精疲労感は何とかならぬかの~アイ殿はこの眼精疲労を、どうやって治しておるのか、後で聞かねばならぬな」
邪眼を瞑り邪眼の目頭をクイクイっと揉みほぐしている。
恐らく体力が微妙に減っているのは、この眼精疲労が蓄積しているのが原因かもしれないと推測する。
ステータスを見ていると備考欄に突然「邪眼誤使用により魔素焼け注意-警告Lv1-眼精疲労付与中-」と表示され、ゆっくり点滅しだす。
誤使用とは誤った使い方をしているという事だ。
正しい方法を見つけなければ、フェンラがまた魔素焼けに苦しめられる事になる。
だがこれで、邪眼を正しく使わなければ、肉体的に何らかの疲労等となり現れる事が判明した。
警告レベルが一なので何処まで警告レベルが有るのか分からないが、今回は眼精疲労だけで済んでいる様だ。 恐らくは、しばらく邪眼を使用せず休んで居れば回復し問題はないだろうと考え、フェンラに邪眼使用を一旦中止させる。
「フェンラ!その邪眼の使い方は誤った使用方法だ。
そのままでは、また魔素焼けを起こすから、一旦邪眼の使用は中止だ。
少し正しい邪眼の使用方法を先に考えないといけないな・・」
邪眼の目頭を押さえながら本来の自分の眼を開け驚いた表情をみせる。
「また我は魔素焼けを起こしそうになっておるのか!。
はぁ~折角邪眼の使用方法を発見したと思ったのじゃが、また使用方法を間違っておるのか!残念じゃな・・。 でも何故分かったのじゃ・・・あ!そうじゃったな。
では、この事をアイ殿にも知らせて使用させぬように教えてやらねばじゃな」
暫らくフェンラは休ませておく事にして、先に同じ邪眼使いである魔族のアイとフェンラの違いを考える。 両者ではアイの方が基礎値が高い上に魔族であるため回復力も優れているので眼精疲労を起こしたとしても、瞬時に癒されているのだろうと考えていると、今迄種族等を気にも留めていなかったので疑問が電撃のように頭に走る。
それは、魔族であるアイ自身が邪眼そのモノと言っても過言ではない。そして共生する予定である獣人のエラルは魔族に種族転生してしまうのに、何故邪眼を付与されているフェンラは魔族にならず、空族のまま、邪眼をそのまま使用出来ているのかと言う疑問が生まれた。
今更ここで聞くのは何だと思ったのだが、その疑問をフェンラにぶつける。
「そう言えばこれは修行に関係ないんだが、何でフェンラは邪眼を身に宿しているのに魔族にならないんだ?」
その質問を受け何故そんな当り前な事を今更聞くのかと疑問符が頭に付いた様な表情をしながら小首を傾げて見せる。
「ん?・・・何を今更・・あ~エラル殿が魔族になるのに、我がどうして空族のままなのかが気になるのか?。
そんなの答えは簡単じゃ、我のこの邪眼は、ただ邪眼加工された眼を、アイ殿に付与してもらっただけじゃからじゃよ。
エラル殿はアイ殿と共生するが故に種族が変わり魔族になるのであろう?。
あ!そうなるとアイ殿自身が邪眼の役割を果たすはずじゃし、邪眼はもしかすると二種類あるのではないかという訳じゃな、確かにそうなれば使用方法が異なる可能性は十分あるじゃろうな」
更なる疑問が生じる、邪眼加工された眼とは何なのかだ!。
やはり邪眼は生態道具という事なのだろうか?そうであればフェンラのステータスの装備欄に邪眼が有るのは納得できる。
だがそうなると、アイ自身も道具となってしまう。
考えれば考える程、出口の見えない思考の迷路に入っているような感覚に陥る。
「付与されてるだけ・・・生態道具・・・。
このままだと使用方法は間違い・・・魔素焼け起こす・・・。
正しい使用方法、正しい使用方法・・・。
あ~情報が足らなさ過ぎるから、全然考えが纏まらね~。
・・・このままだとフェンラがまた魔素焼けしちまうじゃねか~考えろ考えろ俺・・・ん~」
頭をクシャクシャと掻きながら地団太を踏んで見せ、右手人差し指と親指で顎を抑え、すこし唸りながら考えている。
今まで考える際にこんな動作して見せた事は無いのでこれもきっと無意味な行動だとフェンラは考える。
―― あ~困ってらっしゃるのね。そうでしょうね情報が少なすぎますものね!。
それに何ですの、あの劣等種の邪眼の使い方は!アレでは意味が無いではありませんの!。 全く付与時に、説明を聞いていなかったのですわね、あのトカゲ・・丸焼きにしてやろうかしら。
でもこれは良い機会ですわよ、お義兄様。
さぁ~私を頼って情報を聞き出してくださいまし。
そうすれば対価として、強くするキッカケを与える本当の術をこの身に施して頂けるように交渉が出来ますわ。 完璧ですわ。さぁ~早くお聞きになりなさいな、お義兄様。
思考し終えて、クスクスと笑うレレであった。
その微かな笑い声を聞き逃さなかったシアキは、流石に眼前に邪眼についても有益な情報を幾つも持っていると思われる者が居るのに聞けないもどかしさを感じ苛立ちを覚える。
だがココで、邪眼についての情報を聞き出せば、見返りに何か要求されるのは容易に予想できる。 何を要求されるかは分からない。 今対価として与えられる魔法のストックも左程ないので、ここは何としても自力で答えを見出さなければならない。
真剣に自分の事を心配してくれ、邪眼の正しいを思考してくれているシアキの姿を見て、フェンラの胸の辺りがキューっと締め付けられ切ない気持ちになる。
何か出来ないかと思い至るが、思い付くのは情報を知っているであろう、レレを説得し情報を聞き出せないかという事だ。
修行の開始時にレレについて言われた事を思い返しすと、ここで情報を得れば、対価として何を要求されるか分からないので聞くに聞けないので、ここはシアキを宥める事しか出来ないと判断し行動する。
「シアキ殿、そんなに焦る事は無かろうに、まだ修行を開始したばかりではないか!。
お主が、我の事を心配してくれるのは、凄く嬉しいのじゃ。
それに今は邪眼の使用方法が間違っておった事が分かっただけで十分じゃ。
もしかするとじゃが、邪眼は魔族にしか扱えぬ物なので、他種族が無理やり使用しておる時点で誤使用になるのではないかと、我は思うのじゃ」
その発言を聞き少し苛立ちを覚えたレレは立ち上がり、フェンラの下へ一気に距離を詰め、胸倉を掴みグイっと顔を引き寄せ睨んでくる。
「劣等種!いえ、トカゲ娘!。
私が創った邪眼能力を欠陥品ではないかと疑っているのですの?。
そもそも邪眼は「ア」の神族が自身の眼を生態道具として力の増幅と視線拘束や石化付与を特化させる為に創ったのが始まりですのよ。
アレは確かに、他の種族に移植も付与も出来ない欠陥品でしたが、私が、改良した邪眼に関したは、他種族が使用しても完璧に作用する物なのですわよ。
あんな欠陥品の邪眼と同じであると思われるのは心外ですわ。
邪眼付与時、貴女は何を説明されたのですの?何故その様な間違った使用方法で取扱っているのですの?ふざけているのですの?何を説明されたか言ってみなさい」
胸倉を掴まれ少し息苦しくなりながらも、これを好機と捉え、教えを乞うならココだと考え、アイから受けた邪眼使用の説明を話す。
「すまぬ、レレ殿、苦しいのじゃ、ケホケホ・・・使用に関しての説明は勿論受けておるのじゃ。
我が受けた説明は、使用時、必ず邪眼のみを見開き使用せよと、付与後、約束の期日に邪眼と我の両目と魔素核を提供する事の二点説明を受けただけじゃ。
何処か間違いがあるなら教えて欲しいのじゃ」
その説明を聞き掴んでいた手を離し右手を額に押し当て首を横に振り二歩後ろに下がる。
「何ですって・・・はぁ~目眩がしてまいりましたわ。
何ですのその出鱈目な説明は・・・全く製造するのが面倒だから、元有った邪眼を転用し魔眼族を創りましたのに、邪眼使用の説明すら真面に出来ていないとか不愉快ですわ。
その説明をした魔眼族を後で教えなさい、根絶やしにしてくれますわ。
あ~邪眼その物に知恵を付けさせて動けるようにしたのは失敗だったのかも知れませんわね・・。
良いですこと、よく聞きなさい、トカゲ娘!。
私の創った邪眼をそのように粗末に使う事は、今後、許しませんわ。
今回は一つだけ特別に教えて差し上げますわ。
全ての眼を使いなさい」
それだけを言い残すと、少し怒った感じで玄関前の階段に再度腰を降ろしフェンラを睨んで座っている。
これはレレなりのアドバイスの仕方であると思い、シアキは感謝を伝える。
「助かるよ、レレ。その助言ありがとな、お陰で疑問点が解消出来るかもしれないって思えたぞ。
あとフェンラに邪眼を与えたのは、俺の仲間である魔眼族のアイだから根絶やしは勘弁してやってくれ。
恐らくアイツも知らなかったんだと思うから許してやってくれな」
「お礼など不要ですわ・・・今回は特別です。
それにそのトカゲ娘には、私の創った邪眼を使いこなしてもらわなければ、不愉快と思っただけですわ。
お義兄様の仲間・・仕方ありませんわね。ではそんな出鱈目な説明をした、あの眼玉に対しは後でお仕置きをしてくださいましね」
苛立ちを隠せない様子だが、口調が変わってきている事に少し驚く。
仲間個々を劣等種という事をせず、個々の見た目で呼ぶようになった事に少しだけ感動を覚える。
「レレ、お前、仲間の事を劣等種って呼ばず、フェンラの事はトカゲ娘って呼んで、アイの事は眼玉って呼んでくれる様になったんだな。
何か嬉しいぞ、言葉はあれだが、その調子で俺の仲間になった者達だけでもいいから、ちゃんと名前で呼べるようにまで心許してくれな。
よ~し、なんだかやる気出てきた~少し立証したい事があるから、フェンラ、少しだけ待っててくれ」
「分かったのじゃ」
拠点家屋内に居るアイに念話を繋ぐ。
『アイ、邪眼について少し確認した事があるんだ、こっち来てくれるか。
念話で返答はしなくて良いから、取敢えずこっちに来てくれ -念話終了-』
終了後、シアキの眼前に空間接続独特の時空の歪みが生まれる。
その中からほぼ眼球と触手だけのアイが姿を現した。
「何でしょう聞きたい事とは?」
先程の怒りを忘れ、シアキがあの少ない情報だけでどう立証し答えを導き出すのか興味津々と言った感じでレレはこちらを見ている。
「時間が勿体ないから、すまんが、幾つか質問するから答えてくれ。
まず最初に魔眼族の魔眼人は皆単眼で、その目自体が邪眼で間違いないか?」
「はい?・・容姿は私のような物ばかりなので、他者の体を保有しようとも単眼種になるでしょうね。 その魔眼人の目はそれ自体が邪眼で間違いないです」
「次、邪眼の製造方法を教えてくれるか?」
この質問内容を聞き製造方法を話せばシアキはきっと激怒し、自分をこのパーティーから除名するのではないかと悟り、言葉に詰まる。
「それは・・その・・・邪眼は・・その・・」
「シアキ殿!アイ殿を責めないでやってくれなのじゃ。
我はこの眼が同胞の者の眼を加工している事は納得しておるのじゃ」
「責める?イヤイヤそんな事しないって。どんな製造方法でも仲間じゃない奴が犠牲になってても俺はそもそもそう言う感情が欠如してるから何とも思わないって。
ただ確認したかっただけだ。そっか!それはフェンラの同胞の眼を加工して作られたんだな。
その加工した邪眼は、アイ達魔眼族の眼と性能は同じか?」
「魔眼族の眼と、他種族の眼を加工した邪眼に関しては性能は同じです」
差は無いと確証が得られたので後は、考えが正しければアイの邪眼に関するステータス内容に変化が有りフェンラと差がある筈なので確認する事にする。
「よし何となく分かった気がする確かめたい事があるアイの強さを確認させてもらうな。
ちょっと俺の眼を見てくれるか・・」
無意味にアイと視線を合しながらステータスを開く。
両者の邪眼に関する取得項目を見比べていると、アイには「邪眼使用」「邪眼魔法強制指揮剥奪」「邪眼魔法強制暴走」の項目があるがフェンラには無いと言う事が分かった。
恐らく邪眼使用と言う項目が正しい邪眼を使った際にしか習得出来ない項目なのだろうと推測する。
まだ掌にある球体を邪眼を通し確認出来るかをアイに試す。
「アイ、お前も魔素等が見れるだろ。
俺の掌に今魔素の球体を作っているんだが、その魔素は可視化し見てくれるか?。
それが出来たら、魔素だけを透明化、つまり魔素だけ色が抜けて透明になるって念じながら見てくれ。
球体の中身に何が作られているかを言い当てて欲しいんだ。
何も中身を作って無い物をもあるから、可視化出来た通りに教えてくれ」
差し出されている掌に意識を集中する。確かに掌と手の甲に魔素で作られてた球体があった。
「魔素の球体が掌と手の甲に有りますね。ここから魔素のみを透明化出来ると念じればいいんですね、やってみます」
念じると手の甲の物は中身が無いも無い為透明で見えなくなる。
掌にある魔素の球体が透明化するとその中身が七色の球体が見え中央付近に球体状の空間が見えてくる。
「掌の魔素で作った球体の中身だけ七色の球体が見え、その中央付近に円形の空間がありますね。 七色の物は少し流体しているように見えます」
濁声の副音声のような声で状況を伝えてくる。その間一度も瞬きをしていない。
中身に作った魔素の球体まで透明化した事を知り少し厄介だと思う。
「すまんが、その見てる状態で数回瞬きしてみてくれ」
言われるがまま眼球部分の内側にある瞼を閉じたり開いたりして瞬きをする。
その間アイのステータスを開いた状態で内容を確認しているが、体力、精神力共に使用前と変わらず何も減る気配は見受けられない。
「どうだ?瞬きしても、その七色の球体は今も見えてるのか?」
「はい」
「眼精疲労的な違和感とか何処か不自然に体に負荷が掛かってるって個所とかはないか?。
あと出来る限りその邪眼で本来見えない物を見ている時の使用感を教えてくれないか?」
何度も瞬きを繰り返したり、触手を一本一本動かして見たりするが何ら違和感はない。
自然に魔素を透過させた状態で、魔聖素である七色の球体が見れている。
「特に違和感も不自然に負担の掛かる個所等は一切ありませんね。
使用感は、自然に魔素を透過されて中の七色の球体を見ていると言った感じです」
「それは、俺達が物を見るように、自然に目視で確認しているみたいな感じか?」
「はい、そうですね。それに近いと思います」
得られた情報はこれだけあればもう十分だった。
邪眼は魔眼人本人の眼と、他種族の眼を加工して作った邪眼と二種類あるが性能は同じであるという事。
魔眼人であるアイが邪眼を使用しても眼精疲労等は一切起こさず自然体で目視出来ているという事。
邪眼自体が生態道具である事。
邪眼は「ア」の神族が自身の眼を生態道具として力の増幅と視線拘束や石化付与を特化させる為に創ったのが始まりであるという事。
今、出回っている邪眼は他種族に使っても何ら影響が無い事。
邪眼使用時、フェンラのみ、瞬きするだけで使用が出来なくなり眼精疲労を起こす事。
邪眼使用時に、フェンラ自身の両目を瞑り邪眼だけを使用する事。
これらを元にレレの最後の言葉である全ての眼を使えを加味し思考する。
単眼種である魔眼族は、自然に単眼で物を見る能力に長けているので、邪眼を使用しても眼精疲労等肉体的ダメージを負はないと考えられる。
両目を使う事が一般的な種族が、無理に単眼だけで物を見て処理すると情報負荷が邪眼のみに集中する為、眼精疲労として肉体的ダメージを負うのではないかと考えられる。
全部の目とは邪眼の影響下にしろという事ではないかと考えるが、それが可能なのかと少しだけ疑問だが一つだけ解消しておきたい疑問をアイに確認する。
「アイ、すまんがもう一点だけ確認させてくれ。
エラルと体を共生する際、邪眼を行使する時、エラルの両目は瞑るか?瞑らないか?どっちだ?」
「死体であれば体を持った事はありますが、その際頭部は私自身にし単眼でしたので分かりませんね。
ですがエラル様と共生する際、エラル様の視覚情報を遮る必要は無い気もしますので・・恐らく瞑らないでしょうね」
「ありがとう、これで一本に繋がった。
フェンラ、もう一回だけ邪眼を使用してもらうぞ。
ただ今回は、両目も邪眼の影響下にあり、魔素等が可視化出来るって思って使用してみてくれ」
「無理じゃぞ、この両目は我の変哲もない竜人の眼じゃぞ、その視覚情報も入った状態で邪眼を使用するなど制御するだけでも難しいにも程があるのじゃ」
考えが凝り固まっているのでそう反応するのは当然だ。
「う~ん、良いかフェンラ、お前は邪眼使い、そしてその眼は生態道具で能力を引き出す為のキッカケであり制御用とでも思え。
武器を使い体を動かすのと一緒だ。
剣を装備して剣に命令して剣だけ宙に浮かせて、それだけで戦って来いって事は普通しないだろ。
剣を持って戦う為には、己の手に剣を握り、腰を落とし構え、力を入れる所に力を入れて、相手に斬りかかるだろ。
邪眼もそうだと思え。普段の生活でも邪眼を通して物を見てるだろ。それと同じだ。
邪眼を使用する時だけ単眼にして、使用するのは、剣を装備して己は動かず、剣だけに戦えって言っているのと同じだ。
きっと邪眼単体でも制御等は出来るが、負担が大きくて体力と精神力が減るんだと思うんだ。
だから今回は両目に邪眼の能力を装備するんだ。
それにアイも共生後エラルの眼は開いたままだって自然に言っているんだ。
取敢えずこれは考え方を変える修行だと思って騙されたと思い一回やってみろ。
ほら、深呼吸して、精神を落ち着かせ、実践、実践、もし失敗しても魔素焼けしたらレレに治してもらえるから安心しろ。
もし全ての眼を見開いた状態で確認出来たら、これは自然な事だと思いながら数回瞬きして集中が途切れないか確認してみろ」
確かに邪眼を普段の生活でも使用している。何より邪眼については何も分かっていない上、数千年間、邪眼を間違った考えで使用してきたのだ。
そして昨日お風呂場で神降ろし中のリムの助言を聞き考えを変えて試し使用していなければ、この邪眼の魔素を見ると言う特性には気づかなかっただろう。
今更一つの考えに固執するのはおかしな事であると思い、言われた通り出来るか試してみる。
「うむ、やってみるかの~。
・・えっと、両目も邪眼の影響を受けていると思えばよいじゃな・・」
深呼吸をし精神を落ち着かせ、己の眼が全て邪眼の影響下で見えぬ物を見れるとイメージし凝視してみる。
すると先程までの黒の球体とは違い、より鮮明な漆黒の球体状の塊がシアキの掌に有るのが確認出来た。
瞬きを数回してみるが、その漆黒の球体は消える事なくそこにごく自然に元よりあったと言わんばかりに存在しているのを目視確認出来ている。
「シアキ殿成功じゃ!先程より色が鮮明になっておるし、瞬きをしても維持出来ておる」
ステータスを開いて、フェンラの体力、精神力を監視しているが、どれも減る気配はない。
そしてアイ同様、邪眼使いの習熟度が上がり、取得能力欄に「邪眼使用」が追加された。
恐らく魔眼族のアイ等は、単眼であるからただ使用しただけで、この項目が追加されたのだろう。
邪眼性能は同じだが、微妙に同じ土俵に立つまでの流れが異なるのだと心に留めておく。
「よし、じゃ~魔素の透明化を試みてくれ」
魔素は透けてしまう物と思いシアキの掌にと手の甲にある魔素の球体を見る。
掌の球体の魔素の色が徐々に薄くなり透明化していく。 その中身は七色の魔聖素の球体が隠されているのを確認する事が出来た。
合わせて手の甲にある魔素の球体の半透明になるが、その中身は何も入っていない事が分かった。
「おぉ~掌のは、中に魔聖素で作った球体が入っておるが見えるのじゃ。
コレは凄いのじゃ!本当に魔素だけが透明化しおったのじゃ!」
この状態ならきっと魔素焼けは起きないと判断し、聞いていた邪眼でエラルを浮かせ移動させたのをやらせてみる。
勿論何かあっては困るので、ステータスを開いたままでだ。
「よし、これで、物体を構成する物をイメージし、それだけを見えない物にと思えば、ある程度の透視は出来るって事だな、後は物体構成を把握する勉強等をすればいいだけだな!。
もう一つ邪眼について分かった事を二人に教えておくな。
魔素等を可視化や透明化するだけなら、体力、精神力共に何も減らないようだから、見る分は使い放題だぞ。
よしフェンラ、邪眼でエラルにした時みたいに俺を浮かせてみてくれ」
「分かったのじゃ」
目視しているシアキを掴むイメージをし、少しだけ目線を上げる。
ふわりとシアキが地面から離れ浮き上がる。
浮いたと同時に、フェンラのステータス値に「邪眼物体拘束」「邪眼物体拘束移動」という新たな取得能力が追加された。
そしてこれもまた邪眼を使用しているのに、全く体力、精神力共に一切減っていない事が判明した。
--- 74話目のみの後書き----------------------------------------
74話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
---余談---
少しこの話は分割して75話目の前半に持ち越しです。
では、次75話目で、お会いしましょう。




