---48--- フジイデ王国 不穏な気配3
気配と生体感知を全開にし、ルルはこの国に居る者達を全て感知していく。
この国の構造を全く理解していないが中央に行くにつれ家屋も豪華になり拘束術の特性上、強度も増していくのを利用している事は理解しているので、恐らく城を中心に各市民階級に住み分けが行われているのだと理解する。
外周に近い所は何事も無かったように、街中を人々は歩き普通に生活をしている。
中央に向かうにつれ、景色が一変していく。
ここは恐らく裕福な層が住んでいる区画だろう、贅の限りを尽くして建てられたと思われる豪華な家屋が立ち並んでいる。
家屋の屋根伝いに飛び、周辺の探知をし鼻歌を歌いながら進んでいる。
この裕福層が住んでいると思われる区画を少し入った辺りから急に家屋の破壊が始まっているのだが、いや敢えてココまで敵は隠密行動しワザと破壊をしたような印象を受ける。
目的となる何処か一点を目指し直線的に大勢で、ただイナゴの大群のように進行し通過したような感じだ。
そして妙な点がある。
家屋は倒壊し瓦礫となっているが、戦闘した痕跡が一切ないのだ。
一見すると派手に戦闘があり家屋が倒壊させれたように見えるのだが、そこに住んでいた住民達の姿やましてや瓦礫と化した建物の残骸に埋もれているであろう、負傷者や戦闘で致命傷を負い死体となっている者の気配を全く感じない。
それだけではない、この区画からは、誰一人として視認も気配や生体を感知する事が出来ないのだ。
フジイデ王国の近衛達がこの区画の住人達を安全な個所に避難させたと考えるのが自然だろう。
特にこの国の民に興味はないので深く考える事なく、今現在自身の各種感知能力で感知出来ている人の様で人でない蠢く集団とその周辺に生体反応が幾つかある個所を目指し、屋根伝いに鼻歌交じりで、飛びながら移動していく。
その行先は敵が集まった戦場だ。
一方、遅れてラフェル、フェンラ、サジュラ達三名は橋を通り普通に街に入った。
まず高い個所に登り敵と遭遇しない安全な順路を検索するとフェンラに言われ、全員で平民街で最も高い建物の時計塔の屋根の上に駆け登り、屋根の上に立つ。
そこで見た光景が実に可笑しな光景だった。
普通、敵に攻入られていれば、今居るこの平民街と呼ばれる国外と繋がる橋と直結している箇所は、盛大に敵に占拠されていたり、民衆が人質になり一箇所に集められていたり、家屋が破壊され火を放たれたりし人々が混乱状態で右往左往し逃げ回っているはずだ。
なのに、敵が攻入った痕跡も、戦闘があった痕跡すら何処にも見受けられず、住人達は普通に談笑しながら普通に行きかい、商店等は普通に営業をし活気があふれている。
ましてや屋台街もちゃんと営業している。
あの衛兵団の隊長が故意に何かしら嘘を付いているに違いないと思われて、疑われてもおかしくない状況だ。
考えられるのは三つだ。
一つ目は、今実際有事だが、極一部の限られた者にしかそれが伝えられていない。
二つ目は、本当は攻めてきている敵は何処にも居らず、有事ではなく、ただシアキを貶める為の何かしらの罠である。
三つ目は、敵は、塀などを壊し関所を無断で派手に通過し侵入者である事を印象付けたが、街に入ると隠密行動に切り替え、目的となる場所に侵入していった。
衛兵団の隊長の、あの慌てぶりは本当に有事なのは間違いないと思われる。
ならどうして、此処はこんなに正常なのかと戦闘経験があるフェンラとラフェルは疑問に思うのであった。
「これは可笑しいですね、本当に敵は攻めて来ているのでしょうか?」
「間違いなく、シアキ殿の見立て通り、我らに対する敵かどうかは、まだこの時点では分からぬが、敵は居るのは間違いないようじゃ。
ほれ、あの城がある個所の左手前をよ~く見てみるのじゃ。
微かじゃが、土埃のような煙のようなものが視認出来るでの」
指で差し示された前方中央に城が見える個所から、少し左手前側辺りに目を向ける。
そこには言われなければ分からない程、薄っすらと煙みたいなものが上がっているのが確認出来る。
その方角と煙を確認したサジュラは、嫌な予感が生まれ焦る様に二人の顔を見てこう告げる。
「あの、あの辺りが、私の、りょ、両親が住んでいる辺りです、急いで向かいましょう・・」
凄く焦っているので、周りが見ていないと言った感じだ。
その慌てぶりを見て、ラフェルはこれからどうするかを、この今組んでるパーティーのリーダーに尋ねる。
「少し可笑しな点は有りますが、シアキさんの指示通りサジュラちゃんの家に向かいますか?。
一応此処は敵の姿は無さそうですし、どうします?フェンラちゃん?。
このまま一気に屋根伝いに飛びながら進み抜けちゃいます?」
その問い掛けを聞き、フェンラは掌を向け、ちょっと待ってと言うような仕草を見せ、右手人差し指を唇に当てながら少し悩んだ表情をみせる。
その態度を見て、しばらく待機だと分かった二人は頭脳であるフェンラの思考を邪魔しないように見守る。
このあまりにも有事なのに外周が正常な現状はしっくりこない。
普通城、国攻めをする際は、その国の戦力を何処か一点に集中させたり、住民達が慌てふためき、混乱している隙を狙う方が、目的を達成するのには難易度が下がるというものだ。
また、重要人物を攫うとするなら、攫い終え国外に逃走出来るまでは、隠密行動をするものだ。
前方に煙が上がっているので、恐らく戦闘があの辺りで行われたとみていい、それだと後者の任務は確実に失敗のはず。
逃げる事を考え、住人達が混乱するように派手な爆発や火災等を仕掛け、この国の者達を混乱させ逃げ惑う様を利用し、混乱に紛れ敵が逃げるというのがこの世界では最も一般的で確実に数多くの味方を逃がす撤退方法だ。
なのに派手な爆発も火災、または敵が派手に民衆の前で暴れたりもしていないのだ。
あの関所付近に有った塀の破壊が最近出来た真新しいものであった事は敵が百~五百名と極少規模で派手に侵入を印象付けたとみていいだろう。
シアキの言った言葉の内容で先程から所々引っ掛かる内容もある。
そして今、この目で見ている現状等を全て加味し思考する。
考えが纏まりこれは千年前にやった事のある戦法だと結論付ける。
態々こんな国のそれも中央付近に敵が自身の存在を知らせているのは、誘き寄せたい相手その者が不利になる個所に誘き寄せ交渉するのが敵の狙いで間違いない。
その際、自分達の存在を知らしめる為に家屋を少し破壊はさせるが、人的被害をこの時点では一切出さないと言うのがこの段階の得策だ。
この国の民を一切傷つけない、余計な混乱を起こさない為に態とこの襲いやすい個所を襲わなかったとすれば納得がいく。
敵は確実に交渉が高い確率で決裂に終わる事を初めから分かって行動をしている。
あの位置から撤退するとなると、此処に辿り着く前に、敵はほぼ自分達に殲滅させる事が出来るのだ
だが逃げる際、最も敵自身の生存率を上げ且効率の良い逃げ方がある。
逃げ道を一箇所にし、他を塞ぎ、逃げ惑う人々を一箇所の出口に集めればいいのだ。
その逃げ惑う人々を背にし盾として利用すれば攻撃されず容易に逃げられる。
これは交渉相手がシアキだから有効な手だ。
この国は仮にも同盟国でありその国の民を同盟国のシアキ達が敵の逃走を阻止する為に有事を理由に傷つけ巻き込んでしまった際、後で賠償だの善からぬ問題に発展するからだ。
ここで手を出すにはあまりにも不利に働き、敵がもし殲滅出来たとしても敵が送り込んでいるのは捨て駒の可能性が高く死亡してもが何ら影響の無い者を選んでいるはずだ。
ここが一番厄介だ、敵国が自国の者をシアキまたはフジイデ王国の者が殺したと、色々難癖をつけ自分達の行いを正当化し戦争に持ち込もうとするだろう。
では混乱を意図的に、引き起こすとすれば何が最も有効な方法かだ。
デカい爆発が数回起きるだけで混乱は直ぐにでも作れるが、これでは彼方此方に民衆が逃げてしまい逆に逃げにくくなる。
そこで第一段階として考えられるのは、全検問所を破壊し中から囚人や罪人達を街に放てばいい。
その者達が暴れ、住人達を襲いながら国外に逃走しようとするだろう。
これで確実に自分の手を汚さず勝手に混乱状態を作ってくれるはずだ。
そして第二段階仕上げとして、国外に続く橋を一箇所だけ残し、遠くの橋から次々に爆発させて破壊してしまえば良いのだ。
民衆に黒煙が上がり橋が落ちた事を印象付け認識させれば確実に黒煙が上がっていない一箇所に罪人達に追われながら民衆達が勝手に集まってくる。
もし敵が逃げるのに失敗しても、その民衆から各々人質取り盾として、じりじりと睨み合いながら後退し続ければ国外に逃げる事が出来、逃走が成功率が高くなるだろう。
この方法は、自分も約千年程前にある国とその国の同盟国との間で戦争をするキッカケ作りに使用した戦法だ。
この世界には、古くから爆破用の単純な魔法陣契約魔法がある。
これは対象の任意の位置に魔方陣を密かに仕込み見た目を隠蔽出来、威力も少規模で米粒程の爆破や、大規模になると国一つ丸々吹き飛ぶ程の爆破するように調整出来るという便利な代物だ。
敵地でこう言った古すぎる手法はもう使われていない。
魔法陣を感知する魔法が開発されてからは、危険を冒してまで仕込んだとしても、毎日主要各所を日に何度も見回りで探知魔法で探知検査されているので、すぐに発見され解除されてしまう。
こう言った作戦は今の時代では意味の無い戦術なのだ。
今この手の爆破用の魔法陣を主に現在使用しているのは、金銅山鉱等の鉱物採取現場だけだ。
こんな危険な手を使う者は殆どいないが、今回の敵はこの国の衛兵の足を折る程の強者だ。
橋の袂を占拠し、近づく者を排除し続ければ他愛無くこの作戦は出来るだろう。
想定外の先手を打つ頭の回る人物で、夜通し馬を走らせるような奇策を平気でする人物だとシアキは言っていたので、このような古く誰も使わない手法も平気で使用してくる人物が敵である事は十分あり得ると結論付ける。
一度後ろにある橋の袂に目を向け、敵に占拠はされていない状態で袂には誰の気配もない事を確認する。
「サジュラ殿、検問所と橋は全部で幾つある?」
いきなり的外れな質問をされ小首を傾げながら質問された内容に答える。
「検問所と橋ですか?。
この国では後ろの橋のように検問所は橋と併設して作られていますので、ここを含めて五箇所です。
北一箇所と、東一箇所で、東南に一箇所、西に一箇所、西南に一箇所で、ここは北箇所になります。
それがどうかしましたか?それより急ぎませんか?ここでじっとしていると、その・・・」
割と数が多いと思いながら自分とラフェルの足の速さなら手分けすれば全部回っても数分程度で終わるはずだ。
だが、問題は魔方陣を看破し解除まで自分を除く残りの二人の内一人でも出来るかだ。
「急ぐのは賛成じゃ、では、これからの作戦を伝えるで、二人共よく聞くのじゃ」
真剣な顔を向けられ、今後の行動方針を伝えようとしているので二人は黙って頷き聞く態勢を整える。
「我らは今からシアキ殿の為に少しだけ寄り道をしながらサジュラ殿の家に向かう。
恐らくじゃが、この国に入り込んでおる敵は逃走用に各橋と検問所、いやこの国では二つは併設じゃったな、それらを敵は破壊すると思わるのじゃ。
今現在各橋には、爆破用の魔法陣を仕掛けられており、橋の袂には敵が座し死守して居るはずじゃ。
また橋に近づく者全てを、足を折るなどし行動不能状態にしたり又は気絶させられた状態で、敵と抱き合わせで居ると推測されるのじゃ。
この後ろの橋には幸い誰も居らぬから、恐らくココが敵の逃走用の橋として利用されるに違いないのじゃ。
我らは今から各橋を巡り、その仕掛けられた魔法陣を見つけ解除し、橋を死守している敵を行動不能状態または殲滅しながら巡るとするのじゃが。
そこで二人に確認なのじゃ、魔法陣の発見と解除等は出来たりするかの~?。
あとサジュラ殿、ご両親の安否等が心配じゃろうが、今はこの国の誰一人として敵は殺傷していないと断言する。
もしこの国の国民を殺傷するなら敵がシアキ殿との交渉に失敗し、この国から逃げる時じゃ。
じゃから今から爆破用魔法陣を事前に解除し敵を後悔させてやるのじゃ」
少し不安と言った表情をしていたサジュラは最後の言葉を聞き納得した表情をみせ頷く。
「私はある程度なら発見は出来ると思いますが、解除はした事が無いです。
ごめんなさい、私は敵を殲滅等なら出来ますが、解除の方は全く出来ないので役に立たないと思ってください」
「フェンラ様、私も申し訳ありません。
魔方陣の発見も解除もする事は出来ませんので、橋のある個所の案内役でしか役には立てません」
二人は役に立てなくて申し訳ないと言う表情を向ける。
その返答はかえって好都合だ、何故ならある方法を使えば、敵や橋の位置が分かるし、一人でなら数分程度有れば全てを終わらせる事が出来からだ。
その為にも二人には先に行ってもらう必要が出てくるのだ。
「そうか、それは好都合じゃ。
では、ラフェル殿はサジュラ殿を連れて先にシアキ殿の所へ行ってくれなのじゃ。
恐らくサジュラ殿の家の前に敵に囲まれ、交渉をしておると思うでの、我が到着するまで交渉を長引かせるように伝えてくれなのじゃ。
そこにルル殿も居るはずじゃ。
あの二人は敵を挑発するかもしれぬでの、挑発せず交渉を長引かせるように伝えてくれなのじゃ。
これは心配し過ぎじゃろうが、万が一という事もあるからの、頼めるかの~。
我一人で橋を正常化して来るでの、ココからは別々に行動とするのじゃ、では行くのじゃ」
少し嘘を付き、二人で先に行き易くなる様な状況説明をし、先行するよう指示をだしたつもりなのだが、二人は動こうとしない。
「ラフェル殿・・・?。 サジュラ殿・・・?。
どうしたのじゃ?早う二人で先に行って、この事を伝えてくれのじゃ」
行動を開始したいサジュラではあるが、ラフェルに手を握られているので動くに動けない。
ましてやこんな高い屋根の上ではラフェルが動かない限り行動出来ない。
発言内容を聞き、ラフェルは自身が単独行動した時の事を思い出す。
今回、自分がこのパーティー内でするべき事が分かった。
そして一つため息をつき、フェンラに向かい語りだす。
「駄目です、その作戦は受理出来ません。
確かに私達二人は解除が出来ない役立たずで、今回リーダーであるフェンラちゃんの指示通り私達はシアキさんの下に向かうべきだと思います。
でも私達は今三人でパーティーを組んでいるんです。
魔方陣の解除は二人共、出来ませんが、露払い位は私がします。
私の経験上ですが、単独行動をして、もし掠り傷や怪我とかすれば、物凄くシアキさんは怒って凄くフェンラちゃんの身の心配をしますよ。
今回このパーティーに私が何故居るのかは、きっと単独行動をさせない為だって、今分かりました。
私は昨日フェンラちゃんと出会う前に単独で動き、シアキさんに凄く迷惑を掛けた経験があるんです。
その私がみすみすフェンラちゃんの単独行動を許したら、シアキさん怒って私達と数日口を聞いてくれなくなるか、下手すると怒ってパーティー解消とか言っちゃうかもしれません。
そんな事になったら私は嫌ですし、ルルちゃんはきっとシアキさんと離れ離れになったら、それこそ怒って世界破壊しちゃいますよ。
(ラフェルの心の声、(ちょっと大げさに嘘ついちゃったけど、此処で単独行動させる訳にはいかないのよね~ゴメンね、フェンラちゃん、許してね))。
なので、私達も一緒に何と言われようと着いて行きますよ。
それに、シアキさんは私達が来るまで交渉を終わらせる事は無いですよきっと、私はそう信じてますので」
二人に着いて来られるのは実に不味いっと言う表情を一瞬見せる。
そして、このパーティーがなくなると、自分の命にも関係してくる事であり、何より惚れた殿方と離れるのは実に嫌で困ると思うのであった。
「な!・二・・着いて・困るのじゃ・・・。
うぅ~でも・・シアキ殿と・・・それはもっと困るのじゃ!」
その二人の掛け合いを見て仲間として自分に何が出来るのかをサジュラなりに考える。
二人のように足が早い訳でもない、打撃力がある訳でもないが、唯一あるのは、防御力だけはあると思われるので、それを武器にリムが盾になっていた事を思いだし盾になる提案をする。
「フェンラ様、私は殆ど戦闘等で何も役には立てませんが、私は、ルル様より防御力を高めて頂いておりますので、皆様の盾位にはなれると思います」
突拍子もないし申出に、そんな事を許して、怪我をさせた場合の事を、ラフェルの発言を加味し瞬時に考える結論を出す。
「だ、駄目じゃ、駄目じゃ、何を言っておるのじゃ。
盾にはならないでくれなのじゃ。
いくらリム殿と同じ防御にたけているとしてもじゃ、人族なのじゃぞ。
我は、シアキ殿のように相手の強さを正確に図れないのじゃ。
もし敵の強さが防御力を上回ってしまったら大変じゃ。
それこそシアキ殿に二度と顔向け出来なくなってしまうのじゃ。
もし敵と遭遇したら無理せず、極力安全な個所に身を置き隠れてくれなのじゃ」
目を見開き真剣に盾になる事を否定される。
「あはは、やはりそうですよね、分かりましたそうします」
「でもフェンラちゃんは、魔法陣の解除が出来るとは驚きです」
凄く嫌そうな表情になり二人を見つめながら話す。
「今のままでは、その・・我も解除は出来ぬのじゃ・・。
いや解除は簡単に出来る方法があるのじゃが・・。
じゃから、その為にも皆には先に行ってもらう必要が・・・・」
オドオドしながら解除が出来るが等と言いながら、どうしたのかと言う表情を見せる二人と目線を一切合わせず下を向いている。
二人の視線を感じ、何か意を決したような表情をし顔をあげ二人を真剣な目で見ながら話しだす。
「あ~二人共、理由は聞かず、今から見るものをルル殿と特にシアキ殿には口外せぬと約束して欲しいのじゃ」
二人はお互いの顔を合わせ一つ頷き約束すると誓う。
「本当に済まぬ、二人共、我の我儘を聞いてくれて・・、では、解除するのが簡単な理由を見せるのじゃ。
本当に驚かないで欲しいのじゃ、そして見ても・・欲しいのじゃ・・・」
最後口ごもらせながら恥ずかしそうに腕まくりをし、一呼吸し気合を入れる様に目を見開く。
すると、全身頭の先から尻尾の先まで皮膚であった部分が全て赤黒い鱗に覆われる。
角がより肥大化しトナカイ感が強調される角になる。
手と足の爪も肥大化し少しいつもより鷲の様な猛禽類独特の鋭利なものになる。
肘辺りの角も少し肥大化し鋭利な突起がさらに鋭利になる。
尻尾の付け根、仙骨辺りから爬虫類独特の羽根らしいものがバサ~っと現れた。
これがフェンラの竜人武装形態四段階目の姿だ。
武装形態は全部で一から六段階あり一段階上がる事に強さが倍、さらに倍となる。
一段階目は、力を極限まで制御した状態で、角も髪の毛で隠れる程小さくなり尻尾も衣類で隠れる程小さくなり、見た目が、ほぼ人族と見分けが付かなくなる。
二段階目から三段階目は、角と尻尾があり鱗が段階によって覆われる鱗の量が変わる程度だ。
力が通常の二倍~八倍に成るが、邪眼の力でさらに倍の四倍~十六倍になる。
四段階目から、ガラリと変わる。全身鱗に覆われ、羽根が生え、通常の竜人にとってはこれで、ほぼ完全形態となる。
力が通常の十六倍に成るが、邪眼の力でさらに倍の三十二倍に成る。
五段階目になると、さらに顔が変化し、鰐のような顔になり、牙が剥き出しになり、少し理性を失い戦闘狂になる。
力が通常の三十二倍に成るが、邪眼の力でさらに倍の六十四倍に成る。
六段階目は、五段階目の状態のまま、体自体が肥大化し体長が約三メートル前後位になり、それと同時に完全に理性を失い、戦闘本能だけで破壊行動をし続けるただの化け物になってしまう。
力が通常の六十四倍に成るが、邪眼の力でさらに倍の百二十八倍に成る。
今は副職を邪眼使いにしてもらっているので、力の制御が出来るので、六段階目に成っても理性は保たれ冷静に行動が出来るが、まだこの事は本人は知らない。
そして、ほぼ見た目が人に近くなる第一段階に形態になれる事も、全く今は気づいていないのだ。
仲間の前で、ほぼ完全な武装形態状態とも言える姿になり、その姿をじっと見る二人と目線を合わせようとせず、キョロキョロ辺りを見渡している。
「はぁ~・・・シアキ殿はまだ関所辺りじゃな、良かったのじゃ。
・・この姿なら、この国位の広さなら我は殆どの感知系が使え看破し解除も出来るのじゃ。
・・・う・・やはりシアキ殿の仲間の前で、この姿はまだ晒しとうなかったの~。
もしシアキ殿が遠目で我のこの姿を何処からか見ておったらと思うと恥ずかしいの~。
・・あ~駄目じゃ、じっとして居るとむず痒くなるのじゃ。
敵は、この橋を除く全ての橋に数人単位で居るようじゃ・・これは人かの~?・・。
まぁ~良いわ、単独行動は極力するなとシアキ殿は言っておったので、我はちょっとだけ皆より早く移動した。それだけじゃぞ。
ラフェル殿は我の後を追うか、先回りするのじゃ。
これで単独行動じゃないとしてくれなのじゃ、では先に行くのじゃ~御免なのじゃ」
これ以上この姿を一定箇所で留まり晒していると、シアキに観られる可能性が高くなると考え、恥ずかしさがピークになったようだ。
次の橋を目指し羽根をバサっと一掻きし上空に飛びあがり凄い勢いで飛んで行ってしまった。
「ちょ!フェンラちゃん、だからそれ単独行動で・・駄目だってば~・・あぁ~もぉ~サジュラちゃん追うよ」
凄い速度で先に行ってしまったので、サジュラを慌てて軽い荷物を片肩に担ぐ感じで抱え、屋根伝いに走り、フェンラの後を追う。
地面を走る者と上空を飛行する者とでは、そもそも速度が違い過ぎるので、みるみる離されて追いつけない。
「はぁ~もぉ~フェンラちゃん早すぎ~。
仕方ないな~・・サジュラちゃん、ちょっとだけ降りて、私も少し本気出すから」
そっと屋根の上にサジュラを降ろし瞼を閉じ一気に気合を入れる様に目を見開く。
するとラフェル服の下からモソモソっと腰部分から、蝙蝠の様な羽根が生え、爬虫類の様な尻尾が仙骨辺りから生える。
その姿を観たサジュラは慌てて、ラフェルの前に立ち辺りをキョロキョロ見渡す。
幸い屋根の上なので、誰もこの姿を見る者はいない。
「ラフェル様、羽根で服がそのスカート部分が全て捲れ上がり、下着が、その・・丸見え状態です」
その言葉を聞き一瞬固まり、自分の状態を確認する。
「え!・・・イヤ~」
これでもかと身を屈がませ隠すようにし、尻尾とは羽根がみるみる無くなっていく。
「流石に、この衣装では駄目ですね。
サジュラちゃん・・。
私の前に立って目隠しになってくれてありがとう。
あうぅ~これ絶対誰にも言わないで・・恥ずかしすぎる」
本当なら人族である自分が羽根や尻尾が生えた魔族や空族の姿を観れば恐怖し腰を抜かすのだが。
何故か前にしているはずの魔族が、卑猥耐性の無い一人の同族の女子みたいに見て仕方ないと、この状況で思うのであった。
そしてバサっと空を割くような音が東の橋の方から聞こえてくるので、目をその方角に向ける。
「ラフェル様、フェンラ様が東一箇所の橋からまた飛び上がって次の東南の橋に向かわれたみたいです。
下着姿は幸い屋根の上で誰も見てませんし私は同性ですし、取敢えずフェンラ様を追いませんか?」
身を縮め項垂れる様に屈んで凹んでいるラフェルは指摘された方角に目を向ける。
「え!うそ、もう東の橋の解除と敵の無力化が終わったの?。
はぁ~きっと、この速さだと私達は追いつかないか・・・う~ん。
よし引き返して先に最後の西の橋に向かいましょう、これでも同時か終わった後って所かも・・。
・・・はぁ~私も今朝貰った服のズボンを穿いてくればよかったな~。
今度から穿いてこないとだな~危うく大衆の面前で下着姿を晒す変態さんに成るとこだよ~」
そう言いながら立ち上がりパンパンっとスカートを叩き、サジュラをまた軽い荷物を片肩に担ぐ感じで抱え、来た道を戻り西の橋に向かう。
向かうとフェンラが橋の袂からいつもの姿に戻り現れる。
「二人共、先回りご苦労様なのじゃ。
全て終わったのじゃ、では皆既に一箇所に集まっておるみたいじゃで向かうとするのじゃ。
それとラフェル殿!、サジュラ殿!、さっきの約束は守ってくれなのじゃ。
あの姿だけは、まだシアキ殿には観られるたくないのじゃ。
心の準備と言うか、その恥ずかしすぎるのでの~、じゃから、本当にお願いじゃぞ、絶対話さぬでくれなのじゃ、頼むのじゃ」
真剣に手を合わせ拝むようにし、恥ずかしそうな表情を向けたあと、頭を下げて訴えている。
「約束します絶対口外しません。
私も目の色が変わった状態でシアキさんと目が合った時のあの恥ずかしさ、あれはもう二度と体験したくないですので、その気持ち分かります」
「私も約束します。
ですが二人は何故そんなに恥ずかしいのですか?。
私には、あのお姿は凄く強そうに映り、人族なら見るだけで恐怖し腰を抜かす位凛々しいお姿だと思うのですが?」
「う~んそうだよね。
でもねサジュラちゃん、私が、シアキさんに観られるのを、何かに置き換えて表現するなら、シアキさんの前で下着姿を晒した位に恥ずかしい事なんです。
あ!でも他の者やサジュラちゃんに観られるても全然何とも思いませんよ。
ただその好きになった人に、いつもと違う姿を晒すのは、心の準備というものをしていない時に観られるのは、ちょっと恥ずかしいと言うだけで・・・」
「我もそうじゃな~あの形態を今シアキ殿に観られるのは、何かに置き換えるとするなら裸を見られる事よりも恥ずかしい事じゃな。
別にお主らに観られても我も平気なのじゃが、お主らがシアキ殿に知らせた時の事を考えただけで、顔から火が出てしまう程に恥ずかしさが襲ってくるのじゃ。
惚れた殿方に、この容姿を揶揄われたら凹んで、しばらく立ち直れなくなるでの、じゃから、二人共約束は守ってくれなのじゃ」
「?私も下着姿や裸をもし見られたらと想像するとそれは流石に恥ずかしいですね。
でも、マムラ様なら・・・まぁ~いいです。 それより、急ぎませんか?」
「そうじゃな、寄り道はこれ位にしないとじゃな、シアキ殿が心配してしまうでの、では急ごう」
三名は屋根伝いに、サジュラの案内で家のある方角を目指す。
「ところでラフェル殿、先程羽根を出してのに何故直ぐ戻したのじゃ?。
お主も、飛んでくるつもりじゃったのじゃろ?」
あの時フェンラは既に東橋の袂に降りていたので、視認出来ていない無いはずとサジュラは思い不思議そうな表情を向ける。
「何故それを?って表情をしておるの~サジュラ殿。
先程言ったであろう。この国位の広さなら我はあの姿であれば、殆どの感知系が使える程になると。
じゃから移動中の我が目視出来ない位置に居ようとも目を瞑っておっても情景が頭の中で作られ認識出来るのじゃ。
引き返す選択をしておったのも感知し知ったのでな、各橋も急いで全部回ったのじゃよ」
「その感知能力は、私には想像出来ない能力なのでイマイチ分かりませんが、凄いんですね」
本当に軽い荷物を片肩に担ぐ感じで抱えられているサジュラは改めて凄いパーティーに自分が身を置いているのだと実感する。
「フェンラちゃんごめんなさい。
私服の構造を想定してなかったんで、その凄い事になっちゃって・・だから今回の事は忘れてください。
あと私が羽根が生えるのとかは、まだシアキさんには内緒にしてくださいね。
また今朝の模擬戦のようにシアキさんを少し驚かせたいので、黙っててくれると嬉しいのですが?」
「なんとなく予想出来るのじゃ。
羽根は腰辺りからじゃったものな!他言はしないのじゃ。安心してくれていいのじゃ。
まだシアキ殿にはその形態は見せておらぬのじゃな、相当驚くじゃろうな。
・・まぁ~そんな事より少し遠回りし時間をとってしもうさし、ラフェル殿少し速度を上げて急ごうなのじゃ。
ルル殿に美味しい所を持っていかれ、シアキ殿の好感度を取られてしまうでの~」
お互い顔を合わせ屋根の上で結構早い速度で移動しているにも拘わらず日常会話をするように話している事がサジュラの目には可笑しな光景に映り笑いそうになる。
「そうですね、急ぎましょう。
私今日まだ何も活躍出来てませんし、少しは役に立たないと心折れそうですよ」
そう言いながらサジュラの家に向かうのであった。
--- 48話目のみの後書き----------------------------------------
48話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
では、次49話目で、お会いしましょう。




