お腹いっぱいです
ひととおり全員に行き渡ったところで、エマも1/4サイズにきったものを2枚、つまりは半分ほどお好み焼きを味わったところでお皿を置いた。
お腹がいっぱいになったわけではない。1枚を小さめに焼いていることもありまだまだ食べれる。
だけどせっかくなら色々なのを食べたいじゃないですか!
ってことで、生地を追加で混ぜる。
どんどん焼いていきましょう!
手順がなんとなくわかった料理人さんや、料理上手な魔族さんたちもそれぞれ鉄板で好き好きに焼き始めている。
巨人族の人たちはカイジンさん作の巨大な鉄板に巨大お好み焼きを作成していた。おっきな手では扱えないので、ヘラも巨人さん仕様の特注品です。
混ぜ終えた生地のボウルを手に、ふとエマはエアリスを見た。
お皿の最後の一口を口に運んだエアリスの顔には小さな笑み。
お好み焼きはお口にあったようだ。
こどもの姿ということもあって、笑顔の姿はものすごく可愛い。
わいわいと食べるみんなの姿を眺める様は楽しそうで……だけど少しだけ寂しそうにも見えた。
エマたちの周囲にいるのはグリオンやレオンたち。ゆえに周囲の一般人は近づきがたく……逆に正体を知るレオンたちは畏れ多さがまさって気軽に話しかけられないのだろう。
「エアくん、エアくん」
こいこい、と手でエアリスを招いた。
なに?と不思議そうに近寄ってきた彼へとボウルを差し出す。
「エアくんも焼いてみる?」
「え?」
真ん丸に開かれた瞳。
「お好み焼き、焼いてみない?」
「…………いいの?」
「もちろん。ひっくり返すのは手伝ってあげる。具材はなにがいい?」
窺うように見上げてきた顔に笑顔を向け、具材を指せば幼い顔が輝いた。
「えっと……いか天とお肉と…………エマ、これはなに?」
不思議そうに、おっかなびっくりとエアリスが覗きこんだボウルの中身は白くドロッとした物体。
「とろろ。長いもをすりおろしたものだよ」
その物体の正体は長いも。
せっかく用意したのに、誰もが「なにこれ?」と気にしつつもスルーし、まだ誰も使ってくれてないとろろさん。
「せっかくだから入れてみれば?」
ここぞとばかりに勧めてみた。
「え……おいしい、……の……?」
「私が美味しくないものをわざわざ用意するとでも?」
青ざめた顔で恐々と聞いてくるエアリスに腰に手を当て断言すれば、一応納得してくれたようだ。
「食感がね、ふわふわのもちもちになるの。おススメ」
「じゃ、じゃあ……」
……ってことでとろろ生地に追加でーす。
周囲が「だ、大丈夫なのか?」って表情で見てるけど、大丈夫だって美味しいから。
生地を鉄板に流して整形。
いか天やお肉をトッピングして……。
「もうちょい前いって」
鉄板に触れない程度にエアリスを前に行かせ、背後から手を重ねる。
「いい?せーの!でいっしょにひっくり返すからね」
「う、うん」
こくりと喉をならし、真剣な顔のエアリスに手を重ね「せーの!」でひっくり返す。
「やったね!成功」
軽く手を合わせてハイタッチ。
ソースにマヨネーズ、カツオ節に青のりもたっぷりかけて出来上がり。
「どう、手作りのお味は?」
一口、ゆっくりと口に運んだエアリスの顔に笑みが広がった。
その表情だけでお味は予想できたけど、あえてエマは問いかける。
「すごい……。本当に生地がふわふわもっちりしてる!お肉のカリカリと食感が違って美味しい」
「だから言ったでしょ?」
エマはドヤ顔だ。
「ね、私も一切れもらっていい?」
「うん」
さっきと食感の違うお好み焼きをエマも楽しむ。
大丈夫なの?って顔をしていたみんなも美味しそうに食べる様子に興味を示したようで、小さめの一口サイズに切って差し出せば「おいしい」と食べだした。
「エマ、エマ!ぼくも作りたい!!」
「我も!」
「ぼくお肉いっぱい。いっぱい山盛り」
「我は魚介をいれたい。エビにイカにいか天もいれるぞ」
「わたしも宜しいですか……?ひっくり返すのは自信がないので、エマさんいっしょにやっていただけます?」
「了解、任せて」
ソルトやグリオン、ミレーヌたちも焼いてみたいと挑戦し、わいわい作ってはみんなでシェアしあう。
「すごいですだ!姐さん!!キャベツがこんなおいしいなんて……!」
「キャベツ畑は宝の山だっただ……!」
トムたちが感激に涙を潤ませるのを見て、エマは不敵に胸を張る。
「キャベツにたまご、お肉や魚介類……それらをまとめあげるソースとマヨ!異なる食材が生み出す予想外のハーモニー、これぞ調和よ!!多種族による同盟のお祝いにはピッタリな料理だと思わない?」
おおっ……!とどよめきが広がり、誰の口からか「同盟万歳!」の呟きがもれ、やがてそれはひとつの大きな叫びへと広がった。




