もう1個の企み(こっちが本命)
そんなこんなで数日後。
ここ200年ほどは争いこそなかったが、交流もほとんどなかった種族同士の同盟。
その大事にレオンたちの表情はやや硬い。
広間には同盟を結ぶレオンにグリオン、トムの姿。
そしてエマたちや四天王たち。
エアリスに遣わされた勇者パーティであるエマたち一同は、立会人として参加することになった。
「では……」
用意された書面を前に、神妙な声音でそれを読み上げようとしたグリオンにストップをかける。
大事な場面での中断に「おい」という視線を数人からもらったエマは苦笑いして謝罪を口にした。
「ごめんなさい。でも特別ゲストを用意してるんです」
「ゲスト?エマ、これは大事な……」
「わかってますって。大事な同盟だからこそ、です」
レオンのたしなめに返しながら、指パッチンしてエマは呼んだ。
「ってことで、エアリス!!カモン!」
その場の誰もの瞳がギョッと見開かれた。
そして……室内に神々しい光が満ち…………。
その場に現れた存在にレオンたちがざっとひざまづいた。
「へ?」
あまりにも素早くひざまづいたレオンやグリオンたちにエマは思わず間抜けな声をあげた。
立っているのはエマとクルトとミレーヌだけ。
反応が遅れたミレーヌたちも慌てたようにレオンたちにならう。
「面をあげて」
柔らかな響きの声に、恐る恐るという感じで神を仰ぎ見る一同。
その様子を見て思った。
エアリスって……本当に神様なんだ……。と。
普段からゆるーい対応しかしていない相手が、王子どころか魔王までこうしてひざまづかせる存在なのだとようやく気付いたエマだった。
え?もしかして私もああするべき??
混乱しながらも膝をつこうとすればエアリスから非常に温い視線をいただいた。
別にいいから、と表情が告げているので腰を降ろしかけた中途半端な体勢でとまる。
き、気まずい。
周囲の残念な子を見る視線が気まずい。
「突然驚かせたね。僕に構わず同盟の続きを。今日は君たちの同盟の立会人として訪れたのだから」
「は……」
ぎこちなく再び書面の前につくグリオンたち。
構わず、といわれても気にせずいられるわけがない。
激しくエアリスを気にしつつも、「どういうことだ?」と雄弁に向けられる視線にエマはあははと乾いた笑いを漏らした。視線の圧がすごい。
「えっと……ですね。立会人として最適ではないかと思いまして。ちょっとお声をかけてみちゃいました」
てへ、と告げる。
実際、これ以上に相応しい存在はいない。
なにせこの世界の“神様”だ。
その“神”の前で誓った同盟をそう簡単に反故にできるわけもないのだから。
レオンが同盟をするにあたり王である父の方が相応しいのでは?と悩んでいたのを見てエマは思った。
いっそ、“王”よりさらに上の“神”を呼んじゃえばいいのでは?と。
もともと神託をくだし、エマたちをこの件に関わらせたのはエアリスだ。
誰よりもこの世界の平和と安定を願っている彼こそこの場に相応しい。
そう考えたエマはこっそりエアリスに呼び掛けた。
「ちょっと地上に降りてくることできない?」と。
過去には何度か降臨していたわけだし、神力だって戻りつつある。
それにある程度の神力を消費したとしても、この同盟により平和が保たれればそれで得られる利益の方が断然大きい。
……ってことで召喚してみた。
黙ってたのはサプライズで驚かせようとしたのと、「畏れ多い」という理由で止められそうだなと思ったから。
なのでもはや止められないだろう署名直前のあのタイミングで呼び出したのだが……あとでめちゃくちゃ問い詰められそうだ。
特に理由の比率が8:2でビックリさせようとしたこと傾いているあたり特に。
当然のようにあとから「心臓が止まるかと思った……」「人生で一番緊張した」「アンタって娘は!本当にトンデモ娘ね」と方々からお小言をもらうエマだった。
ええぇ~、結果オーライなんだし別にいいじゃん……。




