ただいま企み中
調理や飼育などの細かい作業を担当してくれる共存者を失ったことで肉食生活に拍車がかかり、食糧難に発展したことが発覚した。
盗まれた食糧庫の食材は主に加工品などだったらしい。
本当に食べるものがないならともかく、野菜などはいっぱいあるというのならだせる結論はただひとつ。
好き嫌いしてないで野菜も食え。
無罪放免とはいわないが、根が純朴で、里の子らのためを思って犯罪に走ってしまった大男たちをグリオンは許すようだ。甘いなーと思いつつも、他者を思いやれるその優しさが先代と違い慕われる理由なのだろうと、被害者である魔族の王の決断に納得する。
もっとも……ミレーヌたちに怪我でもさせていればまた別だったが。
「ありがとうございます」「あ゛りがどうごぜぇます」と涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら頭をさげる巨人たちを見て、ふと思い付き手を挙げる。
「提案なんですけど。米作りとかいろいろ、彼らにも手伝ってもらったらどうですか?」
「彼らに?」
米作りの発端はグリオンたちがオムライスにドハマりしたことによる。
お米さまの魅力に取りつかれた彼らはお米作りを画策中。
元々魔族領でも新たな食糧の確保は急務だったので、土地も合いそうということもありお米づくりを推進予定だ。
……が、田んぼを耕したり、水路を整備したり、計画の実行には色々と準備も必要。
「力仕事、得意なんでしょう?罪の償いもかねて色々と協力してもらって……代わりに調理だの飼育だのに人員派遣してあげるとか。なんなら余った野菜もその対価にもらって……」
魔族たちは労働力とお野菜GETでき、巨人たちは大量にあるお野菜をおいしく調理してもらったり、飼育でお肉が増えれば食糧問題が無事解決。
WIN-WINでなかろうか?
「ふむ、一理あるな」
「なんなら同盟に巨人族もいれましょうか」
各トップ陣……グリオンとレオンが検討しはじめたのであとはお任せする。
一般人であるエマに出来るのはあくまで提案までで、それを決めるのは国のお偉いさんである彼らだ。
自分たちの未来が切り開ける提案に、大男たちは顔を輝かせ再び「ありがとうございます」「お願ぇします」と頭を下げた。
その後……。
こどもたちがお腹を空かせたままなのは可哀想だと、ジャガイモなどをゴロゴロ使ったボリュームたっぷりミルクスープを作ったところ、大喜びでおかわりされた。
やっぱりちゃんと味を整えてあげれば食べれる模様。
満面の笑顔でスープをほお張るこどもたちの姿に感涙した大男たちにエマは「「「姐さん」」」と懐かれるハメになった。
会議が終わり、休憩時間になったところでレオンが難しい顔でなにやら考え込んでいた。
「どうしたんです?レオンさま」
今日も今日とてレオンの秘書のように会議の記録をとっていたエマが書類をまとめながら問いかける。眉をさげたレオンは「ああ……いや」と口ごもった。
「どうやらグリオン殿も転移術を使えるらしい」
「へぇーすごいですね。さすが」
会話を聞いていたグリオンが得意そうに喜んでいる。
なんでもなさそうに座っているが、口元が笑みを隠しきれていない。
そんな可愛い魔王さまは、すっかり目の下のクマも薄くなり、先日なんて名前呼びも許してもらった。ソルトもこの頃はよく人化していっしょに遊んでいるのを見かける。
「で、それが?」
「同盟を結ぶ場には父上や兄上の方が良いのではないかと思ってな……」
「失礼ながらレオン様、それは問題ないのではないかと。旅の間の権限に関してはレオン様に一任されております」
ハリソンの言葉にも「だが……」とレオンは表情を曇らす。
他種族間の重要な取り決めだ。
書類上の決め事なれど、上位者同士の方がその効力は高い。
ハリソンの言うように権限は一任されているものの、魔族の王、巨人族の長との同盟なれば自分より王、あるいは次期王の兄の方が相応しいのでは……と考えていたようだ。
「よい」
ひじ掛けに腕を置いたグリオンが澄んだ、だけど落ち着いた声を発する。
「この城に出向き、尽力してくれたのはそなたらだ。いずれそなたらの国の王と会談することもあろうが、此度の件、レオン殿でなんの不足もない」
その言葉にレオンの表情が和らぐのを見つつ、エマは思いついた。
にんまり、と唇の端が持ち上がる。
「エマ、どうした?」
「なんでもないでーす」
企みを胸に秘め、エマはにっこりと笑った。




