数日は怖がられた
「…………で?」
出迎えてくれたバルバトスが、腕を組んで顎をしゃくる。
整った片眉を上げながら、腑に落ちないという表情で問うた。
「あの子らが無事だったのは良かったわ。事件解決したのも。…………それはいいけど、なんでグリオン様らがそんな怯えてんのよ。なにやったの、小娘?」
「な、なんで犯人を私に特定するんですか?」
「どう見てもアンタに怯えてんじゃない。ラウムなんて尻尾挟んでるし」
鋭いオネエの追及にうっと肩をすくます。
「えっ……と、魔王さまの魔法でも、勇者の一撃でも壊れなかった結界を破壊した私の攻撃力の高さ、とか?」
えへ?とごまかせば、少しだけ目を見開いて「アンタそんな強いの?」と驚かれた。強くはないです。
あと現場にいた面々がそろって首をフリフリしたので、原因がそれだけでないことがバレた。
なおもじっと視線を注いでくるバルバトスと「なにがあったのぉ?」と問いかけてくるソアラに視線をそらす。
あんま言いたくない。
気を失っていたミレーヌたちが運ばれてこの場にいないのは幸いだが、これ以上怖がられたくもない。
だけど追及の手を緩めてくれなそうな気配に小さくためいきをひとつ。
「その、ですね。巨人さんたちがミレーヌちゃんを「食べる」とか抜かしやがったんです。それでちょっとキレてしまいまして……『だったらお前らの足でも料理してやらぁ、おいしくスープに煮込んじゃうぞ☆』的発言したら怖がられました。以上」
「……こわっ」
あえて軽めのテンションで伝えたのに思いっきり引かれた。ドン引きだ。
「……実際はこんなもんじゃなかったから。100倍怖かった……」
「夢に見そうだ……」
「そこまで怯えることないじゃない!ソルトたちもいい加減距離とるのやめて?!ガチで怯えないで……!」
「……エマ、こわい…………」
「こ、怖くないよー。ほら、怖くなーい」
「こわい」
大きな体を縮こませ、正座した巨人さんたち。
「オ、オラたちが悪かっただ……。けど、どうかみんなには手を出さないでくれ!どうか、どうかっ……里のみんなは……」
「食べねぇでくださいっ……子どもらの手足切り落とすのはご勘弁を……」
額を地面にすりつけての必死の謝罪。
ジャパニーズ、土下座スターイル!
「…………なんかこっちが悪者みたい」
リアルに食人鬼扱いしてくるのやめてほしい。
ただの脅しだし。
なんなら先にその脅ししてきたのはそっち。
腑に落ちない扱いに納得がいかないまま理由を聞いたところによると……。
「年々獲れる獣の量が減ってぎて……けどオラたちはこのとおり体がデッケェから。子どもらまで飢えさすわけにはいかなかっただ」
「だからって盗みはダメだろ。しかも責任を他に押し付けて」
「「「すみません、すみません」」」
泣きそうな顔でぺこぺこ頭をさげる大男たち。
食料不足で魔がさしたらしい。
食料が手に入って味を占めて1度が2度になり、2度が3度になり……。
さすがに騒ぎになったところで「もしや人間の仕業じゃ……」という魔族の呟きを耳にし、積極的にその噂を利用した、と。
「けど巨人族は昔より数も減っているだろう?」
不思議そうにアストが首をひねった。
それなら獣が減ってもそう食料が足りなくなることもないのではないだろうか……。
「昔は……肉以外も食ってだらしく……」
「昔は……?」
「いまは……子どもら、野菜食わねぇだ」
「「「食えよ」」」
食糧難のときに食わず嫌いしてんじゃねぇと声が揃った。
しかもあとで発覚したことだが、巨人族の里である山々は水が上質で実りが豊富、食糧難どころかおっきなキャベツ畑にジャガイモ、サツマイモなど大量のお野菜がとれることが発覚。
お肉は食べる一方で飼育もなにもしてないことも発覚。
「そういえば……巨人族って昔は他種族と共存してたのよ。たしか」
「そうなのか?」
「ええ、見てのとおり大きいでしょ。力仕事は得意だけど細かいことは苦手なのよ。だから何百年前かまでは役割分担してたはず」
四天王のなかでも結構な長命種であるらしいバルバトスが思い出したように告げた。
「それで生活スタイルが変化して……?もしかして調理技術とかも?」
もしや……と思い聞いてみれば、案の定、肉は焼くだけ。
野菜も生かふかすか、スープも薄い塩味とシンプルだった。
それじゃ野菜嫌いのお子さま嫌がるわ、と全力で「それだ!」と納得したエマたちだった。




