キラス視点8
多分……このことを忘れていたのは、守護神になった時の後遺症なんだろう。確か……その後後遺症とかうんたら言われて色々検査されたはず。けれど……数分前のことは覚えていたためその可能性はないとされていただけ。
「さーってと」
思い出して、セネアを見てゾワゾワした理由は分かった。セネアの部屋に戻ろうと、瞬間移動した。
「……いない?」
部屋に戻ったらセネアはいなかった。心臓が止まったみたいだ。記憶のせいだ。記憶の……そう自分に言い聞かせた。もしも……なんて考えると体が勝手に動き出した。僕ができる瞬間移動は、見たことがある場所のみ。セネアがどこにいるかわからない。体が勝手に……足が勝手に……走った。
「いない」
ここじゃない。どこにいるんだ?もう宿の部屋は見たとは思うが……
「ここにもいない。」
と、壁に呟いた時、よく見るとドアが目の前にあった。ここかなと思い、開けた。
「!!」
「やっぱ届かないか……」
セネアがいた。……セネアの後ろ姿は……アイツがくそ料理担当を探しに行った時の背中に似ている気がした。だからだろう。焦って瞬間移動し、セネアの真後ろに行き……腕を強く引いてしまった。
「!!」
何故か僕はいつも、別にする必要がなかった……いや、ないと思っていた実体を持つことをしていた。……暖かい。生きているんだ。
「……きっキラス?」
セネアは、焦っているそりゃあそうだよね。
「……?えっ?」
何故か……掴んだ腕を離したくなかった。無意識に強く握っていた。セネアなんか言わないと……
「戻って来たら部屋にいないし……瞬間移動でセネアのところ来たと思ったら……居なくなっちゃう気がして……」
居なくなっちゃう。アイツみたいに、あっけなく。そんな風に感じた。瞬間移動のことは言わないでおく。走って探していたなんていう真実は。セネアが俺の表情を見て何か感じたのか
「大丈夫。私は……今は死なないよ。絶対。でも…… 死ぬことは誰でも可能性はある。絶対なんて今しか約束できないよ。でもっ……心配しないでよ。」
そう言った。……でも、僕は知っている。セネアは死ぬ可能性についてほんの少し……生きることについて諦めを持っていること。……セネアは無意識かもしれないけれど。
「キラスはそれよりさ、何でキラスの体温を感じるの?包帯を巻き直してくれた時は感じなかったけれど……」
「……あっああ……。えっと……実体を持ったんだ今。なんか……消えちゃいそうに見えて……」
セネアは話をすぐ変えた。セネアはいつもそう。自分語りはあまりしない。まるで……セネアは、消えることが前提の生き方をしている。だからだろう。前セネアに対して気色悪さを感じたのは。そうだと信じる。
「何言ってるの?私はそんなに、か弱くないよ。消えるなら……もっと豪快に消えたいなぁーねっ!キラスもそう思うでしょう。」
そう言って笑ったセネアの目や、それまでに仕草……やっぱりアイツに似ていて……憎たらしい。そんな感情とともにその全てが何故か……綺麗。だと思った。
「まぁ……セネアはそうだよね。何でもない。いつも通りにする!セネアの間抜けな面見たらなんかどーでもいいやっ!」
なんて自分らしくない感情を誤魔化して、いつも通りにキラスになった。
「じゃ、寝ようかなぁー。キラス!恥ずかしいお願いなんだけれど……私が寝付けるまで一緒にいてくれない?」
……初めてお願い事だ。と思ったら意味がわからないお願いをされた。まぁいいけど……
「んー何で?」
「まぁまぁ……キラス。私が消えないか心配なんでしょ。だったら見といてよ。消えないから」
そうやって……しれっと優しさを入れてくる。何でもない風に。アイツみたいだ。けれど……
「……分かったよ。」
セネア自身、アイツとは似ているが、違うセネアをもっと知りたくなった。今は、いなくなって欲しくなかった。だからその提案に乗った。面倒なので瞬間移動をし、セネアをベッドに送り込み眠ってもらった。
「……」
座っている僕の隣で寝息が聞こえる。今日は不思議な思い出を思い出した。まだ子供で純粋だった時の話。だけれど思い出したことでそれは、いらない思い出。今の僕が変わることや、殺しを止めることはない。だけれど……セネアと一緒にいることで自分の生活が面白くなっていることは確かだ。まぁ、面白くなくなったら前の主人みたいに殺すかもしれない。でも、それじゃあつまんない。だから……
「もう少し死なないでよ」
と間抜けな顔に投げかけた。
これにて長かったキラス視点は、終了です。ここまで読んでいただき感謝で胸がいっぱいです。リアクションとかを見ていると、キラスよりもアルゼルトの方が好きなんかなーって思ったりしています(笑)ですが、この視点でキラス好きが出てくることを願っています。次回からは、第一章四部となります。お楽しみに。




