キラス視点5
「アイツが……いなくなった」
……と。
食事係は、この重苦しい空気の中口を開いた。
「アイツが……厨房に来たんだ。俺は……こっちの戻れって言う指示かと思って……少し待ってろって指示を出して、火を消して、準備をするため少しの間だけアイツ離れたんだ。……戻って来たらいなかった……。」
そう口にした奴に対して腹が立った。何故離れたんだと。考えるうちに嫌気が差してくる。何故だと。そんな中だ。
______微かな綺麗な歌声が聞こえた気がした。綺麗で人を絶望に落とす歌声。……その歌声にみんな気付いたみたいで、ざわついている。_____まだ確定なんかしていない。殺人鬼なんか来ていない。気がしただけだ。……だけれど嫌な予感しかなかった。そのことで頭がいっぱいだった。
「おい!式典の準備が終わった奴、探しにいけ!」
と偉いやつが言った。僕も行こうとした。無心で。その時肩を誰かしらに掴まれた。
「お前は行くな。まだ準備が終わっていない。」
止められた。準備が終わった人たちが一所懸命に探している。その背中を見る……従うしかなかった。……無理矢理でも、式典だけは行った。何もありませんでしたと言うように。新聞に待っていたんだ。盛り上がりもない。見ている人もいない。意味のわからない行事だ。……その後の記憶はない。
後から聞いた話だが、祈りを捧げる所。礼拝堂で、首から下が見つかった……と僕は一度もアイツの姿を見ることが出来なかった。僕が聞いたのは全て終わった後、大人たちからだ。死体。普通ならこの場所で埋葬できるのだが……首がない=「魂が抜けた化け物」として、聖なる墓地への埋葬を拒否。夜陰に乗じて、修道院の敷地外にあるゴミ捨て場へ遺体を投げ捨てに行ったそうだ。
「は?……」
その時、今までにないくらいに激しい怒りを覚えた。何故勝手に行動する?死体を廃棄?まず、何故そんな状況であんな意味のない式典を行った?なんて…………僕が探すことができたのであれば……一年でも早くここに入れたら……と言う後悔も湧き出て来た。
「死体……どこにあるんですか?」
そう聞いても誰も教えてくれなかった。……アイツは良い行いをしようとしただけなのに、神は見捨てた!……僕がお祈りしたのにっ……聞いてくれなかったのだ。怒りなど色々な感情が脳を支配した。……ああ。もう。どうでもいい。全て。何もかも。周りの音も何も聞こえない。
「アホくさっ」
そう言い捨てた後……今までの僕の生活が大きく変わった。何かを失った。大切なものを。そんな感情だけが残った。




