勘違い
待って緊急事態だ。足攣りそうこの体勢。屈んでいるからか?体勢変えようか。ゆっくりゆっくり……後ろの置物に背中をぶつけてしまい音が鳴った。
「あっ……」
メリエムは物音に気付き、目が合ってしまった。もしかしたらバレないかもしれない。うん。バレない。
「……セネアさん?」
「いえっ!別に覗き見しようとしていたわけでは……」
気付きますよねー。焦り過ぎて変な回答しか答えられなかった。これじゃあ変態だ。変態だからこの軍追放エンドかもしれない。全然助けれていないのに?!
「いえ。気付かなかった私が悪かったので気にしないでください。」
とメリエムは涙を拭いて答えた。なんて眩しい笑顔なんだ!……私はメリエムに家族が死んでいないなんて言えない。けれど……
「メリエム王女。私、思うんですよ。スアエ王国って凄いなって。最近……国民の皆さんはダークエーの支配に抵抗していると思うんです。だからこうやってダークエーが私たちとも戦うんです。」
「……」
そう言うと、メリエムは驚いている。そりゃあそうかもしれない。言い方下手だな。上手く言葉にまとめられない。
「……世間ではこれを勘違いと言う人もいるかもしれませんが、もし勘違いだとしても……こんな勘違いは素敵だと思いません?人の気持ちなんて分かるはずないんです。だからどうやっても感情を読み取るには勘違いが必要なんですよ。でもっ私は、これは……勘違いではなく事実だと思います。だからっ……一緒に頑張りましょう。」
勘違いって何言ってんだ?私。口突っ張りすぎる。何言っているのか覚えていない。
「そうかもしれませんね。そう考えると……先程まで真実を見せている月の光に見えましたが……励ましているんかもしれませんね。」
「!!そうですね!」
メリエムが笑って答えたので、釣られてしまった。でも……聞いてくれた……理解してくれたのは嬉しいな。少しでもいい方にメリエムを導きたかった。本当にできたなんか本人の心しか真実は分からない。けれど、私は少しでも理解してもらえたと信じよう。
「私、部屋戻りますね。セネアさんと話したら落ち着きました。ありがとうございます。」
「あっ、いえっそんな……邪魔してしまったし……」
本当にそうだ。あそこで物音立てずに空気になっていれば……
「いえ。セネアさんの考え方前向きで好きですし、心に刺さりました。ありがとうございます。セネアって本当に良い人ですね。」
とメリエムはこちらを真っ直ぐ見て言った。
「……そうなんでしょうか……」
盗賊の私は良い人なのかなんてわからない。私は……セネアじゃない。だからだろう、素直にこの言葉を受け取ることができなかった。
「では、良い夜を」
「あっはい!良い夜を!」
アルゼルトと同じ言葉だ。これどう返すか分かんなくて同じ言葉言ったけれど良いのかな?まぁ良いよね。よくないと許さない。メリエムはお辞儀をし、バルコニーから出ていった。
「……」
静かだ。風の音が微かに聞こえる。もう一度月を見た。私は月が好きだ。月は自ら光っていない。太陽の光で輝いて見える。けれどその太陽の力だけでここまで綺麗に見えるなんて凄い。太陽、その一つの力で美しく輝いて見える月が、前世から好きだった。柵のギリギリまで歩み手を月に差し伸べた。
「やっぱ届かないか……」
と改めて実感している時、手を差し伸べている手と反対側の手が、誰かの手によって強く引かれた。




