仕事
ラウラと俺は一緒のベットでゆっくり起き上がる。着替えるとマックスが遊びたがっていたので、フリスビーを投げた。元々運動神経が良いので俺が投げたのはほぼキャッチできる。
「今日も撮影するか。ジョンの奴がいないと何か静かだな。」
「寂しいの?」
「そんなわけないだろ。うるさいのがいなくなってせいせいとする。あいつのことだから俺のこと忘れて自由に生きてるよ。それよりまずはあの女性に声かけるか。」
40代くらいの女性に俺達は声をかける。
「どうも、ドキュメンタリー映画撮ってるものなんですが、良かったらインタビューとか答えてくれますか?」
「良いけど。」
女性はインタビューに答えてくれた。
「皆骨になった世界になってどうですか?何か変化ありましたか?」
「最悪よ。前の世界に戻りたいわ。」
「何故ですか?やはりご自身の顔とかが気に入ってからですか?それでショックを受けたんでしょうか?」
「あー、皆口揃えてそんなこと言うな!私が最悪なのはそう言う自分の外見がとうとかで最悪とか言ってない!」
「それではどう言った理由で前の世界に戻りたいんですか?」
「仕事がなくなったことよ。」
「でも今のご時世皆、骨になったことですし、お腹とか空きませんよ。お金を稼ぐ必要とかありませんよ。」
女性は少し間をおいた。
「確かに言う通りね。お腹も空かなければ、お金を稼ぐ意味なんてないわね。だけど私にはプライドを持ってた仕事があったの。私はウェディングドレスを売るのがとても生きがいだった。常に輝く女性達に良いものを売るのが好きだったの。」
「今はその仕事はしてないんですか?」
「お客さんが来ないから、しても全く意味がないわね。前は注文がもちろん多かったわ。でも今はそんな商売通用しないわ。骨になったら、皆自分の外見に自信を失うもんなの。骨になった姿でドレスなんて着たい人なんて中々いないわね。それにその姿にあったドレスは今はないわ。需要がないから作ってもない。」
「そうですか。では骨だからドレスを着てはいけないと思いますか?」
「それは思わないわ。どんな女性もウェディングドレスを着る権利はあるわ。ただ自分に自信を持てなければそれを着る需要も喜ばせることもできない話。」
「これからはもう販売はされないんですね。」
「そうよ。」
彼女はつまらなそうな顔をした。撮影は終わった。あの女性にとって、ウェディングドレスを売るのが生きがいだった。今は中身が空っぽだ。
「俺、近々彼女と結婚式する予定なので、彼女にウェディングドレス作ってあげてください。」
「ジョー。」
ラウラは突然の発言に驚いていた。
「付き合ってたのね。会場とかは決まったの?」
「まだ決まっていません。これから決めます。日にちすら決めていません。」
「何だか忙しない感じだけど、その依頼引き受けるわ。」
「ありがとうございます!」
俺達は個人情報などを書いて、女性のもとを去った。
車の中で無言の時間が続いた。どっちから話を切り出すべきか分からなかった。このまま何も話さないままになるんだろうか。
「ジョー、私と結婚式上げる話してたけど、本気なの?あの女の人の生活を支えるためにあんなこと言ったの?」
「そうじゃないよ。本気だよ。ちょうどあのインタビューとタイミングが重なっただけさ。」
俺は指輪の入った箱を開けて彼女のもとに差し出した。
「俺と結婚式してくれ。」
突然のプロポーズに彼女は顔を赤らめた。
「変な人ね。もちろん結婚するわ。」
彼女はとっさに俺に抱きついた。
「ありがとう。こんな幸せ二度と来ないわ。」
お互い背中や頭を撫でながら抱き合った。骨でも気持ちという熱を感じる。心地良さを体全体で感じる。
「ありがとう。」
ずっとこのままでいたい気分だった。
俺達は家についた。するとジョンが外出ところだった。
「お前、隣人だったこと忘れてたな。」
「俺もだな。」
再会はあっという間のものだった。
「早すぎる再会だな。」
「そうだな。」
ここ最近、俺の家で皆が集まることがなかったからだ。
「今日は良いの撮れたのか?」
「撮れたよ。仕事を生きがいにしてる女性だった。ウェディングドレスを作ったり、販売するようなことをする人だった。骨になってから困ってたみたいなんだ。」
「よくそんなのと出会えたな。やるじゃん。」
「あとその女性にお願いして、ラウラのウェディングドレスを作ってもらうことにしたんだ。」
「は?何かの冗談か?」
「こんなしょうもない冗談するわけないだろ。本気だよ。つまり俺達結婚することになったんだ。もう指輪を渡してある。」
つけてる指輪を見せた。
「お前のことあまり見てなかったから、あんまり変化気づかなかった。ちくしょう!俺より先に結婚しやがって。代わりにお前のこと少し殴らせろ。」
「そっちこそ悪い冗談なんてやめろよ。」
お互い笑い合っていた。ジョンは多分しばらくは彼女は出来る雰囲気ではなさそうだ。
「俺にも良い奴紹介しろよ。」
「あまり腕を引っ張るな!骨が折れるだろ。」
「そうか?」
「そうだよ。紹介ね。ジョンがそれほど魅力的になったら考えてあげても良いけどな。」
「お前上からだな。」
「そっちこそ。」
俺はジョンをからかって、笑った。
「ジョー。乗るよ。」
結局またジョンがついて行くことになった。
「何でお前まで車に乗ってんだよ。」
ジョンはくすくすと笑っていた。
「これからカップル揃って旅行か?」
「見事に違うけどな!」
「これから私のハンドメイド作品届けにマリアの所に行ってくるのよ。」
「結婚報告もしないとな!」
「何で知ってるの?これから籍入れるのよ。報告はあとの話よ。」
「ラウラ勝手に話して悪かったな。」
「気にしないで。」
気がつけばラウラの所のカフェについた。
「ラウラ。いつもありがとう。あなたの作品目当てで来てくれる人が出来たのよ!おかげで盛り上がってるわ。」
「そんなに受けるとは思ってなかった。あと今日は新作のカモのぬいぐるみを用意したの。」
「可愛いわ。きっとこれもすぐ売れるかもね。」
「そう願うわ。」
皆でカフェに入った。
「こんな所でいびきかくなよ。」
ジョンは眠りに入って、大きないびきをかいていた。
「起きなさいよ。」
マリアがジョンを起こすよ。
「痛いな。」
「こんな所で寝ないの!」
「分かったから優しくしてくれ。骨が折れるぞ。」
あまり意識してなかったが、この姿になってから骨が折れるというフレーズをたくさん聞くようになった。
「マリア、最近委託でハンドメイド作品置かれる方増えたかしら?」
「増えたよ。最近イヤリングやブレスレットを作る作家さんの作品もおくようになったわ。」
植物や野菜やお花のモチーフのものが多かった。
「可愛いわ。一つ買っていい?」
「もちろんよ。」
ラウラは鳥のイヤリングを購入した。
「似合うかしら?」
「きっと何でも似合うさ。」
「でもよく考えたら、骨になったから耳がないわ。不思議ね。耳がないのに、声が聞こえるなんて。」
「どうする?返品する?」
「大切に取っておくわ。」
「それにしても骨になってイヤリングを使う方法なんてあるのかしら。今度これの出品者に言わないと。」
「その作家さんはどんな人なんだ?」
「20代くらいの女の子よ。ネットでも販売とかしてたみたいだけど、最近はここや他の所でも委託販売を始めたのよ。少し年の離れたお兄ちゃんがいるみたいよ。」
「そうだ、撮影協力してる時にウェディングドレス作ってる人がいたんだけど、その人にハンドメイド初めてみないか言ってみるわ。作品が増えるとマリアの所にもお客さん増えるでしょ?」
「そうなの?お願いするわ。作家さんが増えたほうが賑やかになって良いわね。」
「きっと提案してみたらきっと何か作品作りに没頭すると思うわ。」
車に乗って帰った。ラウラと二人になった。
「ジョンは大丈夫なの?」
「あいつはカフェに寝たままにして良いよ。それなら車内も落ち着くし。」
「そうだね。」
「それより旅行行ってなかったな。どこか行きたい所とかある?」
「ジョーって、日本と韓国にルーツがあるから、どっちかに行きたいわ。」
「分かった。どっちにも行こう。」
「良いの?」
「もちろんだ。」
旅行に行くことが決まった。




