危機
俺達は車を速く運転した。
「ジョー、運転が荒いぞ!」
「しょうがないだろ。緊急事態なんだから。早くしないともっと事態は悪化するかもしれない。」
車をしばらく運転してると渋滞に巻き込まれてしまった。
「クソ、渋滞に巻き込まれてしまった!」
あちこちでクラクションが鳴りまくる。
「クラクション鳴らしても、全然進まない。」
「相当パニック状態だな。」
すると後の車が勢いよくぶつかった。
「ダニエル、ラウラ、マックスもジョンも大丈夫か?」
「平気、平気。」
「大丈夫よ。」
全員無事だった。しかし車はへこんで動かなくなってしまった。
「クソ、よりによって車が動かなくなるなんて想定外だ!畜生!皆、一回降りるぞ。」
「どうするつもりなの?」
「ジョー、全員で車をへこませた奴にクレーム入れるか?」
「それは後で、先に早く乗れる車に乗らないと不味い。」
俺達は車の上を全速力で走り、前の車までたどり着いた。前の車はブレーキを押しまくっていてかなり遅れをとっていた。窓をノックする。すると扉が開く。
「お兄さん、緊急事態なので車貸してくれませんか?」
「無理だ。」
車の中から彼の荷物を外に出す。
「手がつい滑った。」
荷物は結構遠くに行った。男性は急いで荷物を拾いに行く。皆、急いで乗った。
「後で返すからな!あばよ!」
「ちょっと勝手に動かすな!待て!」
後ろから男が追いかける。
「飛ばすぞ!」
「そんなに飛ばすの?」
「ああ、そうだ。」
「もうこうなったらこれしかないだろ。」
車は猛スピードでどんどん前に進む。ジョンが後ろから俺に話しかける。
「そう言えば、俺達の出会いって渋滞で揉めたのがきっかけだったな。それもこの高速で。」
「そんなこともあったな。最初は自分勝手のうっとうしい奴だと思ったけど、悪いやつではないことだけは分かった。あれから父さんは大丈夫だったのか?」
「骨になっただけで身体には問題なかった。今は精神的ショックも克服してるよ。」
「それは良かった。色々付き合ってくれてありがとうな。」
「こちらこそ。」
俺達は火災現場に着いた。救助隊はまだ来ていなくて、建物の中には人が残っていた。
「ダニエルの両親は?」
「まだ中にいるかもしれない。」
「え?パパとママがあの中にいるの?どうしよう。」
ダニエルは慌てていた。
「僕、パパとママを助けに行く。」
「死にたいのか?骨の体でも呼吸は出来る。つまり火の中にいたら煙で窒息死するぞ。分かってるのか?」
「じゃあどうすれば良いの?このままだったらパパとママが死んじゃうかもしれない。」
ダニエルは泣きそうになっていたが、こらえていた。ダニエルは火の中に入ろうとした。俺達全員でおさえた。
「やめろ!さっきの話聞いてなかったのか?ここは俺達に任せとけ!」
「もしかしてジョーがあの中に飛び込むの?救助隊を待ったほうが良いよ。」
ラウラが心配そうに言う。
「ラウラ、いつも心配かけてごめん。でも俺が動かないと両親は助からないと思うんだ。一人の行動で状況は一変する。だから行かせてくれ。」
「ジョー、カッコいいこと言うじゃん。」
「そんなこと言ってる場合か。」
誰かが俺の肩に手を置く。振り返るとデーヴィッドだった。
「それ、俺にも行かせてくれ。ダチがピンチな時は放っておけないもんだからな。覚悟出来てるな?行くぞ。」
「うん。」
煙はどんどん強くなった。中に入ると煙で前が見えにくくなっていた。外では落下物が多かった。
「どこにいるんだ?ジョー。」
「ここだ。」
「探してる迷子の子の両親はどこなんだ?」
「それがまだ見つからない。」
「本当にいるのか?」
「マリアがそう言ってたんだ。」
話してると二人ほど瓦礫の下敷きになっていた。
「救出するぞ。」
「任せろ。」
全力で瓦礫を持ち上げて片付けた。
「大丈夫ですか?」
「き、君は…」
よく見たらダニエルのお父さんとお母さんだった。すぐに抱っこして外まで連れて行こうとした。辺りはものが散乱したり、ものが落ちたりして危なかった。
「ジョー、よけろ。」
「あぶねー。こんな大きなものが落ちてきたのかよ。」
「急ぐぞ。」
「分かった。」
当たったら骨が骨折してしまうかもしれない。だんだん光が見えていく。外に出ると、火はもっと強くなっていた。無事外に出れたがダニエルの両親は起きなかった。すぐに彼らは救急車で運ばれた。
「パパとママは大丈夫なの?」
「大丈夫だ。」
ダニエルは心配そうに俺に聞く。車にはデーヴィッドも乗って満員状態だった。
「これから病院行くぞ。」
病院に着いたが、まだ結果は出ていなかった。
「パパとママまだ起きない…」
「二人とも少し時間がかかるみたいだ。」
どんなことを言われてもあの両親はダニエルにとってのかけがえのない存在だ。
「おい、ダニエル!今すぐこっち来い。」
俺とダニエルは彼の母親の病室に入ると目を覚ました。
「ママ。」
「ダニエル。どうしてここに?」
ダニエルは母親に抱きつく。
「生きてて良かった。」
「どうして私達を助けてくれたの?あんな酷いことしか言わなかったのに。」
「どんなに嫌われても、僕はママとパパが大好きだから。」
「ダニエル…ありがとう。」
母親は涙を流した。
数日後彼の両親は退院することになった。
「ダニエル、私達あの人に強く言われてすごい考えたの。あの人に言われてどんな姿でも息子を守って、成長を見届けようと思ったの。もちろん私のしたことは許せるようなことじゃない。だからもう一度やり直したい。」
「俺も突き飛ばしたり、自分の息子じゃないとか言って悪かった。でもあの火事にダニエルが巻き込まれてなくて良かった。それに助けてくれてありがとう。」
「もう大丈夫だよ。いつかパパとママが僕のもとに戻ってくれると信じてたから。助けてくれたのはお兄ちゃん達だよ。」
「ダニエル、お前はやっぱり自慢の息子だ。」
両親ともにダニエルに強く抱きついた。
「パパとママ、あまり強くされると骨折れちゃうよ。」
「後で礼を言わないとな。」
「一回皆で家に帰ろう。」
目の前にダニエルの家族がいた。前見た時よりもずっと楽しそうで骨になる前より絆が深まった。
「ジョー、声かけなくて良いのか?」
「ジョン、家族で楽しんでる所を邪魔するわけにはいかないだから後ろから見てるだけさ。」
「そんな考えすぎだろ。」
どんどん彼らが遠ざかる。笑顔で彼らの背中を見る。
「ありがとう。ジョー、またね。」
ダニエルは振り向き、笑顔で手を振った。彼の両親も笑顔だった。そして彼らは車に乗った。
「君達!車借りっぱなしじゃないか。」
「悪かったですよ。ちゃんと直しましたので、これに乗ってください。」
「乗ってくださいって俺の車だぞ。」
持ち主に腕を引っ張られる。
「悪かったので、腕を引っ張らないでください。骨が折れます。」
「良かったら俺達ドキュメンタリー撮ってるんですが、映りませんか?」
「映らないに決まってんだろ。何だ君達は。」
車は去っていく。
「何であんなこと言ったんだ?」
「最後の一仕事さ。」
「何いってんるんだか。ダニエルの件は一件落着だな。」
「俺も一仕事終わったことだし、じゃあな。お世話になったな。」
「お前までいなくなるのか。」
マックスが鳴いて、ジョンに近づく。ゆっくり頭を撫でる。
「また何かあったら連絡しろよ!」
笑顔でその場を去った。彼の姿もどんどん遠くなる。
「また撮影再開しようよ。」
「そうだな。今度はあの人に声かけてみるか。」
大きな仕事が終わり、ジョンも離れて、撮影が再開した。




