21.仲間
この世界はサクヤのもといた世界と同じサイクルで回っていた。1週間は7日だし、1週間に休みは2日ある。一年が三百六十五日という概念まで同じである。そのため時計が作られるようになったのであるが、それはそれは高い。
王都の広場にはひとつ大きな時計が設置してあり皆はそれを目安に行動をする。
1家に1台時計を備えているのは神様か王様やその近臣か大商人といった所に限られてくる。
大半の人々は日時計を自作したり、砂時計型のもので大体の時間を把握できるような簡易版のものを使いながら暮らしていた。
カイトたちが通ってる学園にもひとつの大きな時計が存在した。
それは入学式を迎えてから今日で1週間を刻もうとしていた。
「おはよー!」
「おはよう!」
「おはようございます。」
クラスの扉を開けるとみんなすっかり仲良くなり気軽に挨拶を交わしていた。
最初に口数の少なかったナタリアや、冷たいイメージのあったノアお付のフローラ、悪評高かったサクヤも、田舎者の俺達でも、魔道具バカでも、頭おかしい2人でもみんながみんな仲良くなっていた。
その理由はズバリ、皆が皆この1週間で互いの実力を認め合い、互いを高めあっていける存在だと思えたことが一番だろうか。
最初の1週間。
それは何をするでも疲れるものだ。
非戦闘員が突然戦おうと身体を動かしたら後日、身体中からの悲鳴を聴かなくてはならないように。
新たな環境、新たな仲間、新たなやらなくてはいけないこと。
その全てが彼らに襲いかかった。
皆はそれそれは疲弊し倒れそうにもなったけれどもこの1年を楽しいものにするための下準備が出来たのもこの1週間であった。
もちろん授業は辛い。
この1週間で新たなことをたくさん始めることになった。俺から言わせてもらえば自分の故郷の大人達は俺たちを魔の森に放り込むだけ放り込んで、あとのことについては生活の世話以外特に何はしてもらったことは無い。というか俺たちの方が村のためになっていたらしいことがこの前の手紙で発覚したしな。
このクラスは、すべての授業を先生が入れ替え制ではなくサラ先生が教えてくれている。
まず経済の授業。
そもそも物々交換主流の村から王都に出てきただけでもドキドキの俺たちに突然お金勘定か!って思ってたら基礎からやってくれているようで何よりだが、これからは少し心配だ。
次に国と国との歴史や関係性についての授業。
まだ始まったばかりで、学んだことはまだそんなに多くないから何も言えないが、神様というものについての初歩の知識は得た。
神という存在はどうやらカトレア王国のみに存在し、それが神様のこの世界に来る時の《誓約》らしい。それには自分たちの存在による下界の者達の不要な戦乱を避けるためでもあり、神たちの中で悪さを働こうとするものを取り締まれる距離に置くためでもあるらしい。
と、まあ今のところはこのくらいの知識までだ。
あとは薬学、戦術、言語、担任のお好み授業などもある。
そして一番楽しみにしていた魔法の授業が一番力を入れられて行われている。
他の授業は週に2.3時間なのに対して魔法の授業は8時間分も割かれている。
魔法の授業といってもまだ魔法が使えない人もいる。事実俺だって魔法はまだ発言していない。
なら何故魔法を学ぶかって?
どうやら魔法というものの発現には三パターンあるらしい。
①完全な天才型
主にナギはこれにあたるらしい。人間性とかをどっかに放り捨ててきたのは、全てをこれに注ぎ込んだ結果だったんだな。うん。何だか今までとは違った意味でかわいそうに見えてきたよ。
②種族的特性型
これにはアルレイアが当てはまる。
基本的にほとんどのエルフは何かしらの魔法が使えると言われており、強力な魔法を使いこなすことで見目麗しい自分たちの身を守るために進化したとも言われている。
③後天的発現型
魔法の英才教育による後天的発言の魔法。ただ、実力があるか、お金持ちでないとこれは実行できないため発現例少ないと言える。
ここでは魔法を使える人はその精度を高めるため、使えないものは将来魔法が発現した場合に自在に操れるように訓練をすることとなった。
実行されるのは自分の手に魔力を付与する練習だった。
これは意外と難しいものだ。
ホントの天才のナギさんはいとも簡単にやっていらしたけどほかの人たちは全くできない。
そもそも魔力とは???私はそんなもの感じたことないんだけど…っていう人が半分ほど。
ナギ、アルレイア、サクヤ、ノア、リリー以外は魔法を持っていない。
俺はどうかって?使えなくもないけどあれは操作じゃなくて経験の反射だから能力を得た訳では無いから、ほかのこととなると全く役に立たないんだ。
この魔法の授業で、ヤバイやつだけどなんか魔法については天才のナギさんは評価が上がった。
今週中に魔力をうまく操れるようになったのはナギと俺だけだった。
リリーやサクヤはおしいところまで言ったもののもう少しといったところ。
ほかのクラスメイトは魔力を感じられるようになったからこれからの上達に期待といったところかな。見えないものを存在するように考えるステップさえ抜ければあとは少しのはずだと思う。
ちなみに俺が使えるようになったのはナギさんの才能をぱくらせてもらいました。
いやー反射って便利。
でもクラスメイトの皆さんにバレてしまって何を言われるかと思ったら、逆に便利すぎて返って感心されてしまった。まだこの手を見せない方が良かったかもしれないな。
魔法理論に関してはほかの授業と同じような方法で教えて貰っている。だが、やはり魔法というだけでワクワクするから不思議だ。いつか現れることを祈っているし、俺の『理想世界』で覚えた魔法の発動はいつまで出来るのか全く分からないためにそこら辺をこれから探っていきたいとは思っている。
前置きみたいなものが長くなったが、皆が仲良くなった理由はズバリ、午後の体を動かした武術、剣術、魔術を使った模擬戦形式の戦いだ。
この学園では毎日午後の授業にひとつも座学が入っていない。体を動かし、少しでも体を鍛えることにより危機回避能力の経験を多く得られればという教義によるものだ。
学園側も最初だからと贅沢に神様に頼み、不死の結界を張って皆が全力をだしてお互いの力を把握して、認めあえる環境を作るための粋なはからいをしてくれていたのだ。
そうして一週間かけて総当たり戦を行った。
1戦1戦を皆で見ながら、そして戦いが終われば講評をした。
頭のおかしい魔法少女はレーザー光線型の魔術をぶっぱなしまくり、相手になかなか攻撃する暇を与えていた。だが、彼女の魔法は利便性に優れている代わりに威力については即死級なダメージを与えるようなタイプのものでは無い。
ただそれだけでは終わらないのが彼女の恐るべき魔法適正であった。
「うーん。光の属性があんまり効かないんだね。ふむふむ。では次行ってみよ!」
彼女の手に集まるレーザーの源となる光の色が先ほどとは180度反転していた。
「エレメンタルダーク!やっほーい!」
漆黒の光線が今度は彼女の手から放たれた。
それは今までのダメージを与える性能を持っていなかった。が、
「う、動けない!?」
対戦相手を絡めとることにより行動を一定時間不能に陥れる恐ろしい効果を持っていた。
「じゃあこっちの手でいこうかな」
片方の手から放たれている漆黒のやみエレメンタルダークで相手の足止めをしながら魔法のマルチキャストを巧みに使い、左手から"氷"のレーザーが飛び出す。そしてダメージとともに氷で足を止めると闇属性の魔法を霧散させ、最後は炎属性で両手からの出力を使い、対戦相手を圧倒するのであった。
彼女は全属性魔法の使い手の本物の天才だ。
それに加えて戦闘中にもちょこちょこ見せていたが、自分が攻撃を受けた時にすぐに回復魔法を使用することでダメージの蓄積がほぼなしで戦えた。
ただ、結果からいくと彼女の結果は芳しくないものであり、2勝1分け6敗であった。
やはり今の段階での魔法の威力不足の感は否めなかった。
俺の友達候補のネルくんは飛び抜けて強いというものが特になかった。戦いのスタイルは拳闘士だ。大きな強みがある訳では無いが、弱点という弱点もないいわゆる優等生タイプと言える。
型にハマった動きなどが解れてきたころにはなかなかに強くなりそうだ。
戦績は1勝8敗
サクヤ、リリー、フローラと俺のこの4人は基本的に剣術を主とした戦い方をした。
リリーはエンチャントを使ったがそれ以外は基本的に剣戟となったり、剣のリーチを使うことによりも他の相手を圧倒した。ただ、基礎の身体能力とスキルの有無、剣術の技術者でやはり差はついてしまっていた。
フローラは3勝6敗
サクヤは7勝2敗
リリーは6勝3敗
俺は全勝だ。反射使いまくったけど。
やはり魔の森で戦ってきた俺やリリーのそこら辺の経験値はものすごく高い。サクヤのスキルの補正がかかっても、やはり埋められない部分はあった。フローラはレイピアを利用して剣戟の狭間に鋭い突きで相手の急所を狙うのだが、ほかの四人に比べるとまだ劣って見えてしまった。だが、彼女の表情は負けたこととは裏腹に笑顔が浮かべられており強敵の出現を喜んでいるようだった。
サクヤは魔法を時折はさむことにより効果的に試合を進められているが、一瞬のスピードや的確な技術というものを見せつけられて力負けした部分を認め、リリーをより求めるようになってしまった。
今回の模擬戦のダークホース筆頭のノア。
まず戦績からいくと6勝3敗だ。
その負け相手は俺、サクヤ、フローラだ。
彼女は全く戦闘能力を持っていない。それにもかかわらずこの結果が出せたのは一つの魔法にほかならない。
それはーーー魅了系のスキル。
▪『|淑女の嗜み《マスク·ド·レイディー》』
・魅了効果を付与する。
・己よりレベルの低いもののみ選択可。
それは戦闘系要因にとっては天敵のスキル。
俺がその効果を避けられたのはレベルという概念が存在しないから。
サクヤが避けられたのは精神干渉系に近い能力、サクヤの内部を動かすスキルに対しては異世界神の試練の時に何だかんだで耐性を手に入れていた。
フローラは毎日あやつり人形にされてはかなわないのでそのための魔道具を保持していた。
ほかの人たちはその場で降伏を促されて言われるがままに降伏する以外の方法はなかった。
初見殺しの手だが、大抵の相手は初見であり役に立ちそうなスキルだ。
対策をする暇がなかったからこの結果になったという理由もあるけれど、それでも皆より軽くレベルを超えてくるノアに多少の恐怖を皆は覚えた。
ナタリアは暗殺者だ。
気づいた時には気配が薄くなって相手の背後におり、次に気づいた時にはまた別の場所におり、もといた場所、死角からナイフが相手の急所を向かって襲う。そうして次に相手が急所に飛んでくると予想するナイフが体の節々や腱といった行動不能に陥れるための箇所に狙いを定めて飛んでくるのだ。どれだけの俊敏値を持っているか不思議になるほどに動きが早く、無駄がなく、風を捕まえているような感覚に相手を陥れる。
行動不能へ向けた攻撃を避けたと思えばまた急所を狙ってきて攻撃の飛んでくる場所を絞り着ることも不可能なので彼女の術中にハマり最終的には接近されて一瞬でもってかれている。
まさに暗殺者といった戦い方だった。
結果は5勝4敗と勝ち越した。
魔道具使いのマルセロはとにかくすごかった。
自分の間道具を惜しげなく使い相手を追い詰めていく時には一種のパフォーマンスに近い何かを感じて観戦者は全員興奮していた。
目の前にかざした魔法陣の刻まれた紙から魔法が飛び出したり、道具を使用することで空中浮遊を可能にし攻撃のの受けるリスクを減らしたりして戦っていた。身体能力をあげる機器も身体中に取り付けられていた。だが、彼はどうしても戦闘には向いていなかった。その理由はセンスと元の能力値が決定的に低いことが見ているだけでわかってしまうからである。その中で魔道具を最大限利用し華麗に宙を舞いながらも高火力の間道具による攻撃は賞賛に値するものであった。結果は2勝7敗だ。
最後に大問題のアルレイア。
最初はまともに戦っていた。
なんと職業は盗賊らしく、気配を消したりすることで相手に接近を気づかせないように近づきながら攻撃を重ねていく戦い方だった。
なのだがアルレイア自体の戦闘能力はあまり高くなく、どちらかと言うとサポートのための性能をふんだんに詰め込んだスキルなのだ。
そのため負け続けていらいらを溜め込んだ。
それ故にあの魔法を使いやがった。
「『太陽爆弾』」
凄まじい光とともに目の前が光で覆い尽くされて、返って真っ暗になったかと錯覚してしまうほどの威力を持った頭のおかしな超強力魔法が行使される。
自爆攻撃なのだが、必ず相手を持っていく強さがある。アルレイアは一応だが致死級のダメージまではいかないから負けることは無い。
だが俺だけはそれを反射してどうにか逃げることに成功した。かなりのダメージをおってしまったが。ある程度のダメージを超えると反射限界が着て、ダメージが本人へと透過してくることが今回のことでわかった。
最後の5戦で魔法を使用して俺以外の4人は一瞬で戦闘不能へと追いやられた。
リリーでさえも。
そうしてアルレイアの戦績は3勝1分け5敗となった
ちなみに1分けとなった試合はアルレイアとナギという頭おかしいコンビに起こった珍プレー。
アルレイアが『太陽爆弾』を使うのと同時にエレメンタルダークで自分のところまでナギがアルレイアを寄せたために二人で吹っ飛ぶという悲劇というかほぼネタと言ってもいいような光景が出来上がっていた。
こうして1週間の総当たり戦を経て皆は自己紹介延長線をお互いに行っていたのである。
やはり拳と拳で語り合えば分かり合える単純な世界であった。
「ねえねぇ、今日の授業終わったらみんなでマルセロくん家の魔道具店見に行ってみないー?」
「うん。……いいね。」
「俺魔道具見たことないから見てみたかったんだよ!マルセロの以外。」
「僕にお金があれば買いたいんだけどね」
「私という生物自体が生物兵器の魔道具だー!」
リリーの提案に順にナタリア、俺、ネル、ナギと続いて答え、その後みんなから了承を得てマルセロの家の魔道具店へと行くこととなった。
そうして今日の授業もゆっくりとだけど体感時間としてはとても早く過ぎていった。
~サクヤ~
1週間が過ぎたが自分の悪評は限りなく今のところクラス内で薄れてきた。
元の世界にいた頃と比べてしまえば、全然相手がこちらを疑うって来る素振りがないことで、とてもやりやすい。
良く言えば素直で純粋、悪くいえば単純バカ、騙されやすいという事だ。
もし自分の世界にいたならばメディアに吹き込まれてたことをすべて信じてしまうようなタイプだろう。メディアリテラシーと呼ばれるような能力が欠如していると言えるのかな。
まあ、自分のプラスになるのであれば願ったりかなったりなのだが。
これで本格的にリリーちゃんを狙えるようになったと考えれば良いだろう。
だが、どうしてなのか。
自分の方が勇者という立場の強力な力を持っているはずなのにあいつらには今の状態では負けてしまう。かなう気もしない。
そこに関してはこれから実力を付けていき、カイトとかいう気に食わない野郎を叩きのめして最終的にはリリーちゃんをパーティーメンバー、いや、自分のハーレームに加えることが出来ればいいかな。
そのためにはどんな手を使ってでも強くなっとかないとな。
どんな手を使ってでも。
おもしろい思っていただけたならば評価をして貰えると嬉しいです




