19.入学試験(4)
爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされてきたエルフの女の子はどうやら気絶しているだけらしい。
「おっおっおっ!これは岩から人が生まれた……」
「「そんなわけないでしょー(だろ)!」」
道中で無駄にツッコミスキルがあがってしまったカイトとリリーは反射でつっこむ。
と、茶番というかおふざけはそこまでにしてそのエルフの娘の容態を見る。気絶しているということだけはわかったが……
「カイトはあっちで大人しくしててねー!私がいいって言うまでそこで待ってるんだよー。わかったよね?」
はい。なぜかそのエルフは衣服がまるでなにかに溶かされてしまったかのようにところどころに穴が空いていて、今にもぽろりんぐしてしまいそうだったのだ。
俺は黙って後ろを向いて待つことにした。逆らっても返り討ちにあう気しかしないし。
こんなやりとりの中しっかりとナギは『回復砲』の準備はしっかりとしていた。
「あっすみません。これで魔力切れそうなので私これからお荷物になりますがどうぞよろしくー!」
正直そこに放置してフェンリルさんに1度死を体験させてもらった方が早くスタート地点まで帰れるんだよなー。
「いえ、なんでもありません。私、精一杯ながらお務めを果たしていく所存であります!」
何かを察したようだ。なかなかにカンだけはいいようだ。
そうしてしっかりと『回復砲』を撃ち込み安静な状態にさせておくと、残念エルフは起き上がってきた。
「あのー。ボクは……はっ!私のお宝は何処へ!?」
どうして俺たちの出会う奴らはこうもくせが強いんだろうか。
「はいはい。まずは名前を押してもらえないか?」
「そんなのもちろん岩から生まれた岩たろ……」
「「お前には聞いてねーよ!」」
ナギさんぱないっす。脈絡なしに突然ぶっ込んでくるのと何度滑ってもめげないのぱないっす。
そろそろカイト火山噴火するかもしれないっす。
「あっ、すみません。あなたのお名前を教えてもらえませんか?」
さすがナギさん。その危機感知能力逆にこっちが利用できて使いやすい!
と、ひとまずナギのことは置いといてこのエルフの子について把握しなければ。
「ボクの名前はアルレイア。お宝探して三千里、とにかくボクにお宝を……ってすごい!凄すぎます!そこの青髪の美人さんのリュックの中からすごいお宝の匂いが!!!」
と、興奮し始めたアルレイアを一旦諫め、こちらも自己紹介をしてから改めて話を聞くことにした。
「おぉーー!ボクのリュックは無事でしたか。良かった。ほんとに良かったでっせ親分。」
「親分?」
「あなた方はボクの命の恩人。そして、その中でもリーダー格のあなたはもう親分と言っても差し支えないでしょう!いや、親分と呼ばなくてはならない!」
またもやめんどくさいやつが増えたみたいだ。
と、徐にアルレイアはリュックを開けた。
なんとそこにはナギの持っているものと同じサイズの魔石が入っているではありませんか。
この辺りではそれほど大きな魔石が手に入ることは無いはずなのに。
そして、さらに驚くことにその奥から一体のスライムが出てきた。
「うわーすごーいー!こんなスライムいるんだね!」
「こんなの見たことないですよ!これは、これは、すごいですーーー!」
誇らしげな顔をしながらアルレイアは嬉しそうに言う。
「ボクが見つけてきた今回のお宝です!ふふふ!」
見た目だけはほんとに完璧なのに雰囲気だけですべてが崩れ去っていくのは本当に残念だ。
そのスライムは普通のものと比べて明らかに異質だった。
まず第1に大きさ。
普通のものはせいぜい2、30cmと言ったところなのだが、こいつは50cmオーバーの大きさをしている。
次に名前をいえばわかると思うが、こいつの名前はゴールデンスライム。
体全体がまっ金金なのだ。
そこらじゅうの何よりも光っており存在感がピカイチだ。
最後に魔石の大きさだ。
普通のスライムも体の中心部に魔石を保持しており、それを壊すか魔法を使うことにより倒すことが可能だ。
ただその場合、物理攻撃は通りにくいという性質があり、万一物理攻撃で魔石を貫けてもその時には魔石が粉々となり価値がほぼ無くなってしまう。なので魔石は魔法で倒さないと取り出せないのだ。
普通のスライムの魔石はは10cm弱のあたりのものが多数なのだが、このゴールデンスライムの魔石は20センチ近くの大きさを誇る。
ついでにこいつはユニーク個体となっている。
「さっきと同じような展開だな。」
「そうだねー、でも何で岩から飛び出してきたのか私知りたいなー。」
「私も岩から飛び出したい!!!」
最後のアホは放っておくとしてアルレイアの説明が始まった。
ではその話を物語として聞いて頂こう。
『ゴルスラ洞窟物語』
ある日そこには調子に乗ったエルフの女の子が1人おりました。その名をアルレイアと言いました。
「おったからおったから!ボクにお宝をよこせー」
アルレイアはお宝を探して適当に奥へ奥へと森を進んでいきます。
すると、そのエリアに足を踏み入れた結果空気が変わる場所に出会いました。
「むっ、お宝の匂いがする……。」
そこはたくさんのスライムが存在しているエリアでございました。
「くんくん。くんくん。こっちから匂いがするなー。よし行ってみよう!」
アルレイアは自分の鼻を頼りにどんどんどんどん進んでいきます。そしてたどり着いた場所は、平原ステージのなかにまばらに存在している岩の中の一つでした。
「うーん。何だかここからお宝の匂いがしてるんだけどなー。うーん。」
そこからは明らかに彼女だけにはわかる何かが感じられたのです。ですが、見た感じは普通の岩なのです。
「えーい、こうなったらもうヤケクソだー!開けーごま!」
開くわけなんかないと思いながらもそんなことをしているなんとも痛い子になってしまいました。
ですが、そう思われたその時、なんと岩の間に人がなんとか一人通れるかというような隙間が出来たではありませんか!
「ふふふ、ボクってやっぱり天才?」
いいえ、ある意味で天才ですよ。
そうしてアルレイアはその隙間をのぞき込むとなかに何やら道のようなものが続いているのが見えたために入ってみることにしました。
それがあるにとっての想像を絶する地獄への近道だとも知らず。
その隙間から入ったところは一本道の隠し洞窟となっていました。
思わずアルレイアはテンションが上がります。
そうしてその洞窟を探検し始めます。
その洞窟にはたくさんのスライムがおりました。
最初の方に出会うものは、ノーマルのスライム、レッドスライムにブルースライムと言った有名だが、大して脅威にならないものばかりでした。
基本、攻撃さえしなければスライムは別に何もしてこないのです。
そこで出会ったスライムたちも例には漏れませんでした。
「お宝の匂いは強くなって来たんだけどなー。あんまり強いスライムもいそうにないしたいしたことないのかな。」
ナイスフラグ!
と、そこからさらに進んで行くと明らかに異質なスライムが現れ始めることになりました。
ケース1. スライムキャタピラー
そいつはスライムでもあり、昆虫型の魔物であります。体はスライムなのに能力に関してはキャタピラーと同じような力が使えるのです。
ベチャ。
スライムキャタピラーが吐いた糸がアルの足元に直撃します。
アルは行動不能。
スライムキャタピラーは這いよります。
昆虫系が苦手なアルはパニックに。
そんな中、なんとか腰から取り出したナイフで糸を切り取り一目散に奥へ逃げ出しました。
ケース2. メルトスライム
あるの目の前には先ほどの見たことないようなスライムではなく、アルレイアのよく知っている普通のスライムがおりました。(アルレイア目線)
スライムに物理攻撃を通すほど強くないアルは素通りすることを決めました。
が、
ピュッピュッ
ベチャッ
普通のスライムに見えたそのスライムはなにか液体を作り出してアルにかけ始めました。
毒や麻痺効果でもあるかと思いましたがいつまで経ってもそのような効果はあらわれないためその液体は別に受けたとしても問題ないと思い、ちょっと液体の追撃受けたけれどもなんとか逃げおおせました。
と、そこで明らかに先程までとは違う自分の様子に気づくのです。
履いていたスカートはかろうじて見せてはいけない中身を守って残っているが、それに必要ない半分ほどは溶かされて超ミニスカート状態となっていました。
上半身は纏っていた妖精のローブが効果を薄めてくれたのですが、やっぱり効果は浸透しており不用意に動くと白い柔肌が晒され、その下にそびえたつ黄金比を思わせるような、神様による芸術品とも呼べそうなほどの双胸が主張を繰り広げ、今にもこぼれだしそうな状態になっていました。
「キャァァァーー」
今更どうするわけにも行きませんが、スライムをたかがスライムと侮った結果ですね。
そこに男どもがいれば歓喜だったでしょうに。
仕方が無いのでスカートはそのままで、上半身に関しては胸だけでも守っていられるようにボロボロになってしまった服をカスタマイズして、なんとか動ける格好となっておりました。
妖精のローブに関しては無事なのだがそれ自体はスケスケなので使えないというかかえってエロさが強調されてしまうため腰にまいておきましょう。
ケース3. クリアスライム
なんとかメルとスライムの魔の手から抜け出すことに成功したアルレイアだったが、また新たに目の前にスライムが現れました。
今度のスライムは言うのであれば岩の隙間から沁み出してきた湧き水のごとく綺麗で透き通ったスライムでした。
アルレイアは今のところ2連続で遠距離攻撃でロクでもないダメージを食らってしまっていたので(精神的に)知らず知らずのうちに過剰の警戒心をむき出しとしていた。
だが、そのスライムは何もしかけてくる様子はなかった。
その様子に少しアルレイアは安心したのかもしれません。特に何か吐き出す様子はありません。
過剰の警戒心は逆に言えば警戒対象が特に何も警戒する必要が無いとわかればそれは帰って過度の安心をもたらしてしまう。
それが錯覚だと気づかずに。
その安心感にあぐらをかいたアルレイアは油断しました。
そんなことを考えている間に少しずつ近づいてくるクリアスライムに気づきません。
アルレイアに害をなすような行動を使用とするそぶりは見られないためそこまで危機感を高めていなかったのだが、その瞬間あるものがアルレイアに向けて飛んできました。
それは決して糸でもなく、溶解液という訳でもない。
───────クリアスライム自体でした。
「ふぇ?」
少し驚きはしたものの特にアルレイアはその行動を問題視はしませんでした。
クリアスライムのアルレイアに向けての身投げは決して攻撃の意図はありません。
そしてその個体は彼女の腕の中へとすっぽりとはまって存在していました。
「なんかこの子可愛いかも……!」
さすがアルレイア!警戒心がおさまり、ほだされてしまった結果がこちらであります。
「あぁん。んっ、んっっ、ちょっまって!くすぐったいよー。あぁぁぁん」
クリアスライムは彼女の体をすみずみまで撫で回しています。
アルレイアは抵抗しようとはするのですが体に力が入らずクリアスライムのなすがままでありました。
そんな時間は意外とすぐに、体を一周ほどするとクリアスライムはアルレイアから離れていきました。
「うぅぅっ。ボクはもうお嫁に行けないかもしれない…………。」
あのスライムを追いかけて、この無念を晴らしたいという気持ちが彼女の思考の殆どを占めているのだが、クリアスライムによるマッサージ(?)で骨抜きにされている今の状態では泣く泣く諦めるしかなかったのでありました。
「はっ!これが噂に聞く完全犯罪!!!」
違います。
だがそこでアルレイアは気づきます。
自分の体が先ほどとは違うことに。
ここまでの害悪スライムたちとの壮絶な戦いの中で彼女の体は汚れまみれになってしまっていたのだがそれがさっぱり消えて綺麗になっていました。
戦闘中についた泥、スライムキャタピラーに掛けられた糸の端くれ、メルトスライムにかけられた溶解液による腐食やそれ自体などなど全てがきれいさっぱりしているのに加えて、彼女自体の体自体まで掃除されていたのである。
「痴漢をされたのに綺麗になるっていう不思議な体験……。」
それでもアルレイアはめげずに進んでいきました。
彼女の残念な感性は『索敵』系のスキルを持っているにも関わらず、それを前方にしか張っていなかったために後ろからやってくるやり過ごしたはずのスライムの集団がやってきていることには気がつきません。
そうして沢山のスライムとの交戦の末彼女は最終地点と思わしき鉱山の目の前へとたどり着きました。
そこからはとんでもなく強烈なお宝の匂いがしてきます。そのため彼女は祭り屋台の香ばしい匂いにつられて誘われてしまうような人々と同様な動きをしながら宝の山(確定)へと吸い寄せられていきました。
掘ると出てくる金に銀に銅にミスリル、アダマンタイトなどなど。
少し掘るだけですぐに表面近くから鉱物が次から次へとあらわれてくれます。それも希少なものばかりです。
「ヤッホー!私の追い求めてきた楽園はここに存在したのか……!」
掘れば掘るだけ出てくる鉱石はそのうちにリュックを埋め立ててしまいました。
ホクホク顔のアルレイアの笑顔が眩しい!
その時
彼女のお宝感知レーダーに今までとは明らかに異なる2つの反応が引っかかります。
その方向をそのまま向くと……、
「ゴールデンスライムにシルバースライム!」
ここは楽園などではなかった。天国だったのか!
アルレイアがそう思ったことなど想像に難くないであろう。
だが、さすがアルレイアといった感じで衝撃的な別の計画を進行しようとしていました。
″ゴールデンスライムをお持ち帰りしよう″と。
(ボクが合格するのにはシルバースライムの魔石があれば足りるし、それだけでも多分上位に入ることも難しくない。あーでもこれまでとった鉱石を全部捨てないとボクのリュックにゴールデンスライムとシルバースライムの魔石が入らないかー。うーん。しょうがないかー。)
そんな考えと並列しながら『隠密』系の効果を使いながら走り出しています。
その高い脚力を生かして彼女はすぐに相手に気づかせることなくゴールデンスライムの後ろに陣取っていました。
そして気づいた時にはゴールデンスライムはリュックの中でした。
一応逃げることはないと思われるかのだが、暴れられたりしても困るので贅沢に持っていた痺れ薬をリュックに1瓶分を豪快に振りかけたのです。
ゴールデンスライムはこの洞窟をアルレイアが出る頃まで身じろぎさえもできなかったようであった。
*痺れ薬1瓶2万レイ
と、第一段階をクリアしたアルレイアは今度はシルバースライムと対峙します。
アルレイアは一つだけ魔法を持っていました。
けれどもそれは使うと自分の安全さえも保証しかねるようなものであったので安全マージンをとるために使用は極力避けたいものです。
という訳でスカートのポケットから秘密兵器を……
「じゃじゃじゃじゃーん!うん?えっ、うそっ。」
もう一度しっかりと確かめる。
「うぅぅぅ。やばい。」
取り出したのは薄い木の板のような魔道具。大きさは手のひらサイズとお手軽だけれどもそれは、エルフのみが貴重な世界樹からドロップするアイテムを使用することで作成できるアイテムである
名を『世界樹の教え』という。
アルレイアが里を出る時に記念としてもらったものであった。
表面に魔法の呪文が書かれていて、魔力を流すだけで自動で魔法が発動する仕組みとなっている。
これにより発動できるものは弱めのアロー系とボール系の魔法しか発動はできないのだが、魔法に対する知識がなかったとしても発動できる点が強みである。
このアイテムはエルフの間でしか伝わっておらず、他の種族との交易でこのアイテムを売買することは禁止されているのだ。
そんな、そんな大事なものが……。
「溶けてる。文字が溶けてるよ〜。」
このアイテムの一番のキモは呪文が刻まれることによりその術に必要な魔力回路となり発動をになってくれている点である。
それが壊れた今、それはもう使い物にならなくなってしまいました。
「まさかあのスライムの攻撃はこんな二次被害まで及ぼすとは思いもしてなかったよ。うーーっ!あっ、!もう1枚だけあるんだった。」
なんとか落ち込んだテンションを持ち直しながらもアルレイアはもう1枚に望みを託します。
どうか溶けていませんように。
それは生きていました。
妖精のローブに守られることでなんとか命を繋いでくれていました。
そこに描かれている魔法はファイヤーアロー。
彼女自身の使える魔法は魔力の消費量がアホみたいに高いので、それを使える状態で残しておくには3回までにこのファイヤーアローのしようを抑えなければなりません。
と、ちょっとシリアス目なナレーションをしてみましたが、、、
「ファイヤーアロー!!!どりゃぁぁぁーー!」
はい。1発で即死です。おみごとさん。
シルバースライムは自分を鉱物に変えることで防御力を極限まで高めることを出来るのだが、相性悪く高温の炎には耐えることが出来なかったようである。
そうしてシルバースライムの魔石をリュックに詰め込んで帰る準備を始めます。
とその時。
彼女はこの洞窟に来て初めてと言っていいかもしれないが自分の後ろに向かってお宝感知のためのレーダーを使用をしたのです。
その結果。
「えぇぇぇぇぇぇーーー何で100匹以上もスライムがいるのさーーーー!」
スライムの集団がもうすぐそこまで迫ってきていました。
アルレイアは何故か一つの危機を去ることに前にあったことはすっぽりと頭の中から抜け落ちていたためか、自分がまだ一体もスライムを倒していなかったことに気づいていませんでした。
そして、それらはアルレイアを諦めたわけではなく数の暴力という作戦に出たのでありました。
「くっ、これは私もやるしかないのか。」
流石にファイヤーアローでは相手を倒しきる前にアルレイアの魔力がきれてしまいます。
うーん。
すっごくアレやりたくないよ。
だって怖いし。
痛いし。
熱いし。
何より過剰火力だし。
でもあれやるしかないのか。
もういいや!どうにでもなれー!
アルレイアの心の中の会話も終了し、決意が決まったようである。
スライムたちは鉱山の目の前にいるアルレイアへあと10メートルと言ったところまで近づいてきていた。
そこで彼女は自分の手のひらに魔力をため始める。瞬間的にたまったのだが、そのエネルギーの収縮によりここ一帯の空間まで圧縮される、そんなことを思わせてしまうような凄まじいエネルギーが彼女の手のひらに集まっていた。
「いくよー!『太陽爆弾』」
眩い輝きがその場をつつむ。
誰ひとりとしてそこに立っていることなんて不可能。
爆風にあたればそこらの風魔法とは比べ物にならない速度で吹き飛ばされ、爆発自体に触れたものは生きて帰ってこられれば奇跡と言っても過言ではないだろう。
そのエネルギー量は3つ離れたステージにいる古龍さえにも少しの警戒心を与え、彼らも受ければ部位欠損くらいの深手をおったかもしれない。
もちろんの事だがスライムたちがいた所は穴が開き、煙があがり、後には何も残っていなかった。
魔石さえも残っていなかった。
アルレイアがどうしてこの魔法を使いたくなかったのかに理由は3つあった。
まず一つ目
火力調整ができないこの攻撃はオーバーキル以外の何者でもないこと。
次に二つ目
これを使った後は魔力がスッカラカンになるため彼女の動きの精彩が著しく下がること。
最後に三つ目
この魔法は自分の半径10メートルの範囲にしか発動できない。つまり…………
「ぎゃぁぁーーーボクの体が焼けるーー!」
爆風と一緒に弾け飛び、その爆発の勢いで壊れた天上部分岩の割れ目から元いた草原ステージへと吹き飛ばされたのである。
そうしてアルレイアとスライムたちの勝負はアルレイアの勝ちで終わり、洞窟探索の結果もゴールデンスライムにシルバースライムの魔石の獲得という素晴らしい結果で終わりましたとさ。
「とまあこんな感じですかね?」
「「「思ってたよりもやばかった!アルレイアが!」」」
「いやぁそれほどでも。そんなに褒められるとボクも照れますよ!」
「「褒めてねーよ!」」
「まあ及第点と言ったところでしょうかね。」
ナギのコメントにももう苦笑することしか出来ないし、何よりもツッコミするのに疲れたのでだんまりを決め込むカイトとリリーであった。
「ではほんとに時間もやばくなってきましたしスタート地点に戻りましょう!でもあのシルバースライムの魔石でも負けそうになったらいっその事そこのゴルちゃんを…………。」
アルレイアはヤバイやつ。ナギもやばいやつ。サクヤもやばいやつ。みんなやばいやつ。
入学試験しか受けていないので本日は大いに学ぶことが出来ました。
「リリー、王都の一般家庭はこんなのかな?」
「だったらわたしはもう村に帰りたいかもー」
太陽が一番高い位置から受験者たちを見下ろしている。
結果発表の時間がやってきた。
ここの試験結果は
「えー。集計できたらそこに結果を張り出しますので夕刻まで待っていてください。」
なんてめんどくさいことはしない。
「えっと、ケビンくんは暫定16位です」
「よしっ!」
リアルタイム開示型結果発表なのだ。
われこそは先にと持ち寄った魔石は上位60位までが入学試験受験者の目の前に順番に並べられ、現実を突きつけていく素晴らしいスタイルであった。
今のケビン君の発表時にだって60位にいたものはあそこで肩を落とし、瞳にはうっすらと涙だって浮かべてるいる。
真実とは残酷なのだ。
そして大半の人々が終わり、最後に残ったのは頭のおかしい仲間達であった。
周りからの目線から考えると、見えてるだけでもほかの人とは一線を画する大きさの魔石を持っていたとわかるためかメインディッシュとして最後まで取っておいたと考えるのが自然かもしれない。
頭のおかしい仲間達の詳細はカイト、リリー、ナギ、アルレイア、サクヤ、ノアの6人であった。
「では私からいかせてもらいますね」
そう言ってノアはゆったりとだが優雅な雰囲気を纏いながら前へとすすみ魔石を取り出す。
直径13、4センチといったところだ。
周りからは完成が巻き起こる。
うぉぉー!
「ノア様は暫定4位となっております!」
次はアルレイアの番だった。
「お宝の数々。ごくっ。」
彼女は平常運転だ。
そうして魔石を取り出す。
それは直径19、20センチといったところだった。
うぉぉぉぉーー!
もちろん暫定1位だった。
「優勝してここにあるお宝を頂いちゃうぞ!」
当たり前だけど貰えるはずもありません。
次はナギの番だ
「ふっふっふっ。私が一番になることは前世から決まっていたのです。とりゃぁー!」
彼女のコマンドウルフの魔石を取り出す。
直径は19、20センチとアルレイアとほぼ変わらない様子だ。
そこはもちろん鑑定のスキルを持つものがスタンバイして、どこまでの誤差でも大きさの勝敗を白黒をつけることが出来る。
「おっと、大接戦になっているようですが結果が出たようです。えっと、ナギさんは暫定2位となりました!」
うぇぇぇぇぇーーーーーい!
謎のノリが始まってしまった。
これもナギがなせる技なのだろうか?
「·ジーザス!!!!!!!!!!!」
盛大にひっくり返ってるやばい子はみんな、見ちゃダメよ。
「勇者、俺が今回は先に行かせてもらうぞ。」
「あぁ、勝負といったところだね。」
二人は目線で火花を散らせながらまずはカイトが先に鑑定場へ足を向ける。後ろではサクヤがニヤニヤとした顔をしながらサクヤを見ていた。
ここでサクヤに勝てば少なくともリリーに少しでもいいところを見せられるだろうという打算を働かせながら。
そして彼の荷物の中から今までのものとは比較にならない、一回り大きな魔石が出される!
ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえーーー
もはや歓声よりも驚きしか出てこなかった。
それもそのはず、それらの魔石の大きさは年で多くて数10回程度しか出回らないサイズだからだ。
「えーっと、ゼロの村出身のカイト君はブッチギリの暫定一位となりました!!!これからの活躍が楽しみですね!」
みんな好奇心丸出しの目をカイトに一斉に向けるのだがカイトはまるで気にしない様子でその場を去ってく。
次はサクヤがゆっくりと前に歩き始める。
「おっと、ここで異世界から来た勇者が登場だ。直前に出してきた衝撃的なカイトくんの記録を超えることが出来るのでしょうか!!!」
今更思ったけどどうして解説がいるのでしょうか
それはスルーでお願いしましょう。
サクヤは自分の魔石を置く。
「おっとこれはカイトくんと同じくらいのものに見えます。私から言わせてもらえば勇者サクヤくんの方が少しだけ大きく見えます!」
他の受験者はその想像を絶するレベルの高さの争いについては行けないものの、もはや観客感覚で楽しんでいた。
言い方を変えれば現実逃避ともいう。
みんな期待に満ち、興奮したような目で結果発表の時を皆は待っていた。
「出ました!暫定1位は…………」
おぉぉぉぉぉぉぉぉ
「サクヤくんです!!!!!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!
この日一番の盛り上がりをこの時見せた。
試験に落ちてしまったものでさえこの雰囲気に飲まれ、今という時を楽しみ、落ち込むという行為を忘れてしまっていた。
「さあ、これでサクヤくんが入試トップで終わりででしょうか?まだ鑑定してもらっていない人はいますか?」
もしまだ魔石を出していない人がいたら悲惨なことになっていたことだろう。
ここまでハイレベルの戦いにはさまれて自分の粗品を出さなくてはならないのだから。
だが幸運なことにもそんなことになる人はいなかった。
みんな胸をなでおろしていたその時。
「はーい!」
リリーが手を挙げた。
そこにその場にいた一同の視線が浴びせられる。
なんともデジャブな光景だ。
最初の説明の時もリリーが手を上げてみんなの注目が集まったものだ。
「私が今から持ってきまーす!」
その場にいたみんなは思った。
(((最初に支援や回復魔法のことについて聞いてた娘だろ?ここで出たら辛い運命を背負う運命になってしまうぞ!)))
と。
「では魔石を出してもらえますか?さてさてこの青髪美人の少女は、どれほどの魔石を持ってきてくれるのでしょうか?」
解説の若干の煽りと少し私的な彼女への嫉妬が皮肉的な言葉へと成り代わっていた。
(((それ以上追い込まないであげてくれー)))
会場にいる全員がそう思ったことは言うまでもない。
「えっとここにのせればいいんですよね?」
「はいそうですよー。ここにお願いします。」
リリーはリュックを地面に置く。
そのリリーの一挙一頭足に視線が集まる。
「うんしょー!」
どんっ。
あの、ヘラクレスの直径は50センチにも迫る特大の魔石を置く。それはもはやSランクを超える領分の魔物の魔石であった。
「えっっっっ???」
えええええええええぇぇぇぇーーー
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー
何じゃそりゃあーーーーーーーー
ふぁぁぁぁぁぁーーーーーーー
とにかく皆からの驚きの声、歓声、ただ言葉にもなってない奇声と色々な声が飛び交い入り交じっていた。
「これで私が一番だねー!」
満面のドヤ顔でリリーがそう締めて入学試験は終結した。
「ふっ。俺たちの勝ちみたいだな。」
悔しそうなサクヤの顔となんとも微妙な締まらないない顔をしたカイトがそこには残っていた。
「じゃっそういう事でこれからもよろしくね勇者くん。」




