17.入学試験(2)
リリーはヘラクレス相手に手こずっていた。
自分の間合いに入ってくるタイミングに合わせて『ライトニング』の魔法を相手がを放ってくるのだ。
『ライトニング』は頭上から雷を浴びせる魔法である。これはくらってもそこまで大きなダメージを食らう訳では無いのだが体にしびれを残させる。とは言うもののそこそのダメージは食らう。支援魔法使いのリリーと言ってもまだ状態異常回復ができない彼女にとっては十分に脅威となり得た。
ついでにカイトにも撃っていたが反射されたためそれ以来カイトに撃つことはなくなった。
先程から何度もリリーはヘラクレスに近づこうとするのだがその度に雷の壁に阻まれ相手にダメージを与えることが叶わない。
そんなリリーは逆に雷の余波で少しづつダメージをくらったり、雷の壁にひるんでいる隙にヘラクレスの角による先制攻撃を受けてしまっていた。ヘラクレスの角は先が二股に分かれているので何とかその間を使って威力を殺すことには成功したが少なくないダメージを初撃で受けてしまった事実は覆らない。
だが、今回は今までまいてきた布石を生かして本命の一撃を叩き込もうとする。
今まで近づいた時と全く変わらず高い身体能力を生かし間合いを一瞬で詰める。
そして低い唸り声とともに放たれるヘラクレスのライトニングの着弾地点を見極めて急激にストップ共に、リリーの止まろうとする身体とは反対に加速する彼女の愛剣がヘラクレスへ向かって伸びていく。
先程までも何度も見た光景だ。
だが今回は違う。
今回は文字通り剣身が伸びていく。
光属性の付与はしていたが刃の長さを変えることなくこれまで戦ってきてここぞという場面でエンチャントを生かせるようにしていたのだ。
予想外のリリーの行動にヘラクレスも驚きを顕にして何とか逃げようとするがその時にはヘラクレスを捉えていた。
カンッ
完璧に捉えたと思っていたその攻撃はヘラクレスの背中の甲羅に小さな傷を一つ作るに留まった。
正直なところ光の剣では相性が悪そうだ。
光属性の属性エンチャントである少しの攻撃力上昇と剣の長さの変化ではどうしても防御特化の相手には難しいところがある。
多分カイトの水属性エンチャントであればもう少しの深いダメージを与えられたことだろう。
これを見て相手はリリーの攻撃をかなり警戒していたがそこまでの脅威ではないことを理解してしまったのか、先程までとは打って変わって強気で攻めてくるようになった。
ライトニングで相手を牽制しながら今までは使用していなかった羽による機動力が加わった。
ライトニングによる雷の滝を攻撃ではなく目くらましに使いながら風を切ってリリーに接近する。
リリーもリリーでそう簡単に近づけたりはしないのだが、どうしてもライトニングを避けるためにはある一定の方向への誘導もされてしまう。
「うーん。困ったなー。あれを使うしかないかなー。私の記憶が飛ぶから使いたくないんだけどなー。」
相手の鉤爪のようになっている手による攻撃を剣で弾きながら独り言をつぶやく。
カンカンカンッカンッッ
もちろんリリーも反撃するのだが攻撃側通らないリリーには限界があった。
「これじゃあジリ貧だぞ。手伝おうか?」
「これは私の獲物だから任せといてよー!」
リリーはそこで奥の手を使う。
「『アクセス権解放』」
その瞬間リリーの雰囲気が一変する。
ただやることはヘラクレスをいなすことで精一杯と変わりはない。その中でも丁寧に相手の攻撃に剣を当て、うまく対処しているお陰で幾分かの余裕は元のリリーと比べて見られるようにはなっている。
だが先程までとは違いリリーの目には何かしらの意図が見える。
ヘラクレスはリリーの急所に当てようとしていた今までの攻撃では当てられないことを察したのか金土は足や腕といった部位欠損をさせて有利に進めるような作戦に出てきた。
正面からぶつかるのではなく、加速したまま地面スレスレを飛び回り足を持っていこうと狙ったり、突然の上昇によりリリーに行動を読ませないようにうごく。ついでに腕を持っていこうとも画策していたり。
その矢先に突然の上昇をなんとか止めたリリーだったが、その瞬間には飛べることによるメリットを最大限に活かされ、流れるような動きで後ろを取られ反対側からの攻撃がリリーをかすめた。なんとか反射で避けたのだが、スピードによる威力の加算も相まってほんの擦り傷のはずだった腕からは血が流れ始める。そこそこの深さの傷になってしまっているようだ。
コレはまずいことになったと思われたその時。
リリーの眼から光が溢れだし、閃光を放つ。
硬かったリリーの表情も元のリリーとは比べられないが、この人格のリリーの今までの一番優しい表情が現れていた。
「アクセスにより楽園より魔法を確認。『解析』の獲得しました。この魔法は進化可能により自動で進化をします。」
「『真理の魔眼』開眼」
リリーの眼で輝く光がおさまる頃。
リリーの眼には新たな特徴が宿っていた。
元からオッドアイという特徴を持つ金色の眼の方にさらなる変化が見られた。そこには先ほどと異なりなにか魔法陣のようなものが刻まれている。
よく見るとその中には全く見慣れない文字の数々が踊っている。
『真理の魔眼』開眼後のリリーは別人のようだった。
アクセス権解放による別人格リリーの登場はリリーを常に冷静な状態で効率的かつ合理的な動きを重ねられるようにした。
「もう少しで片付けますのでしばしお待ちをカイトさん。」
こちらに声をかける余裕まで生まれ始めているようだ。
魔眼が開眼してからというものリリーは相手の攻撃よりも動きだしが早くなったように思える。頭上からのライトニングは最初からそこに落ちることがわかっているかのような動きで自分の不利に進まないような地点へと避け、先程から開始を始めた飛行によるヒットアンドアウェイのヘラクレスの攻撃については鉤爪による攻撃も無駄な動きを減らし、数本の髪の毛が空にまうのと引き換えにスレスレのところを風の切る音をさせながら反撃を始める。
狙うべき部位を変える。
ただそれだけの事だがそれが目を見張るような効果を出し始めていた。
今までの攻撃から察することとして、甲羅部分にどれだけ刃を立ててもかなわないことは自明であるとともに、リリーも甲羅だけに攻撃をして自分を不利な状況に追い込むほど馬鹿ではないのでその他の部位も試していた。
だが、ダメージは一度も与えられなかったのが現実だ。
それに対して今のリリーはただただヘラクレスの″顔面部分″を狙って攻撃を繰り出し続ける。
体自体は硬いので今のところ攻撃が通る様子はないのだが、顔部分はそこまで危険がないと知っていても庇ってしまうのは人も魔物も一緒であった。
そしてそんな一瞬の隙を見逃すリリーではない。
気づいた時には相手よりもさらに低い所を進み、気づいた時には背後に立ち、ヘラクレスの羽を切り落とした。
それに加えて、喉にある突起のような部分を回りこんで一突き。都合上相手の周りを文字通り一回転して的確に相手の力を減らしていく。
そう。今の攻撃にはしっかりと意味がある。
『真理の魔眼』開眼による効果の実践と言ってもいいだろう。
その効果はこちらだ。
▪真理の魔眼
・鑑定効果・弱点表示
・アクセス権解放時のみ開眼
・真理追求
何も言わなくてもわかると思うが、今は相手のスキル、弱点を理解した上で詰み将棋さながらの様子で相手を追い詰めている。
羽を奪えば自分に不利な土俵から自分の戦場へ引きずり込め、喉の突起には魔法の発動司令の根幹をになっている部分を損壊させた。
いつものリリーでなく、この冷静沈着な様子がさらに凄みを増している。
そうしてそんな次にリリーがすることと言えば
「チェックメイト」
小さくそう呟きながらヘラクレスの胴に″火を纏った″斬撃を入れる。
追い詰めた獲物はしっかりと狩ってこそだ。
ヘラクレスは上半身と下半身がズレて全体が火に包まれる。完全に地に落ち、そうして魔石とドロップアイテムを残して消えていく。
魔石に関しては今まで見た中で一番大きいものだった。
アサシンバットの拳大のものとは比べ物にならず、半径50センチ弱の球に近い形をしてそこに存在していた。
リリーは無事ヘラクレスに勝利した。
見たことのある魔石の中の過去最大を更新して。
「おめでとうリリー」
「ありがとうございますカイトさん。」
「まだアクセス権解放状態か。まだ時間は大丈夫そうか?」
「早めにカタをつけたのであと2、3分程度なら大丈夫かと」
カイトとリリー(裏)は前回の時よりも親しげになっている。
それはこの試験までの3日間もリリーがこの状態を自分の奥義として使えるように時間の許す限り、とても短い時間だが訓練してきた賜物であった。
「途中で魔眼が開眼したのか?」
「はいそうですね。私の時だけの制約がかかったものですけど。ちなみにこれはスキル・魔法とは別枠扱いです。」
そうして真理の魔眼についてカイトに説明をする。
だがどうしてもわからない部分というものは存在する。それを楽しむものだから。
「この真理追求って何かわかるか?」
「すみません。それは今までの検索結果に当てはまることがなかったので私のオリジナルな効果です。ただ、文字通りに真理を追求し、自分の限界を超えたオーバースペックな力を手にするということらしいです。」
その言葉に当てはめて考えると、リリーが最後に剣に炎を纏って攻撃したのは真理追求による効果。
リリーの魔眼が属性という真理を究明し、その理解したことを自分の光属性のみという制約を超え、火属性というオーバースペックな力を出したという認識で間違いないのだろう。
「多分あなたの予想通りの事が最後の攻撃では起こりましたよ。ちなみにヘラクレスの弱点が火属性だったので使いました。おっとすいません。私はそろそろ限界のようです。ではまたカイトさんまたいつかの機会に。」
最後の挨拶には、冷静な彼女とは対照的な元のリリーに似た笑みが浮かんでいた。
そう言って彼女の目が閉じられていく。
そして次に目を開ける時にはいつも通りのリリーだ。金眼の中に刻まれているように見えた幾何学的な紋様も消えていた。
何かリリー(裏)からの好感度が上がってる気がするのは気のせいだよね?
「わあ、でっかい魔石と立派なドロップアイテムだ!これは私がやったの?」
「もちろんそうに決まってるだろ。」
「やったね!これで私は合格だー!」
リリーにここまでのことをダイジェストにして伝えていく。
そして一つだけ思った。
リリーって支援魔法使いというくくりに入れるべきではないだろうと。別に俺と組む意味も特段無かったのではないかと。
言わないけど。
そして怪我をしているリリーの腕の手当をしてからは新たなステージを求めて歩き始める。
「たぶんそのドロップアイテムはライトニングが撃てるようになるぞ。」
「え、私風属性の適正ないから打てないんだけど……」
「さっき話しただろ、リリーのその魔眼があれば使用可能になるぞ。」
「でも″私″には使えないんだよーーーー!!!」
そんなリリーをなだめつつカイトたちはステージ5をあとにしてステージ6、通称ワイバーンアイスバーンに突入した。
太陽の高さもだいぶ上がってきている。ざっと目算で半分位がすぎただろうか。
ステージ6はあたり1面氷の世界という訳では無い。流石にそれでは森を維持できたものではない。
とは言っても葉が離れていない木は見るからに少ないし、その木に関しては根っこから葉の先まで氷の彫刻と化していた。
寒さは遅れて風に乗ってやってくる。
「「さむっ。。。」」
ここにはほぼ誰も来たことがないかのように全くと言っていいほどに道がなかった。
そのため、氷った大地を踏みしめながら自分たちで道を創りながら進んでいく。
「カイト、寒いよー。わたしをあっためて。」
そんなリリーの手をさり気なくとりながら歩き続けると、上空に影が見えてくる。
グァァギャァァーーーーグァァァアーーーー
今までのモンスターと違い一際大きく、威圧が込められたワイバーンの咆哮が聞こえてくる。
もちろん威圧に屈したりはしないがそこそこの圧は感じる。
周りの木々の葉が無くなってきたことにより視界が開けたことでこちらが四方八方を見渡せることはいいのだが、すなわちそれは相手からもこちらに気づくことを容易としてしまっていた。
「俺はこのあたりで一体倒そうと思うけどいいか?」
「うん。もちろんエンチャント無しがいいよねー?」
「それでお願いするよ」
と、そんな話をしていざワイバーンを倒しに向かおうとしたその時。
前方にいるはずがないと思っていた人影が見えた。ここの相手の強さ的に。
見るとそこには直径30センチといったところの魔石を手にするサクヤとノアが立っていた。
「え、君らはそんなに強かったの?ちょっとそれは嬉しい誤算だな。……これで権力使う手間が省けたよ」
最後の部分は小声だったためサクヤとリリーには聞こえていなかった。だが、その顔に薄っぺらい笑顔を貼り付けながらこちらへ近づいてくる。
「お前がワイバーンを倒したのか?」
「ああそうだ。自分がこれを手に入れたんだよ。まあ君には無理だろうけどね。ここまで来ただけでも良かったんじゃないか?過去最高記録タイらしいよ。」
挑発をし気味にカイトとリリーに言葉を投げかけるサクヤ。
「カイトが弱い?笑笑笑そんな訳ないじゃん。」
「ふーん。そこまで言うなら少しぐらい俺の力を見せてやるよ。びびっても遅いぞ。」
わざわざここで相手に手の内を見せるのはハイリスクノーリターンだが、別にリスクを背負わなければいい。俺がなんの手の内を見せなければいい。ただそれだけの事だ。
「出来るものなら見てみたいね。そんなことが出来るのならね。ちなみに自分は魔法で一撃だから戦闘とも呼べなかったかな。せいぜい頑張ってくれ。」
とにかく傲慢で不遜な態度のサクヤに若干キレ気味のカイトは早くその腐った目にものを見せてやるとワイバーンを探す。
そうしてしばらくするとそこそこの大きさ、とは言うものの体長10メートルといった所の一体が近づいてくる。
もちろんカイトは臨戦態勢。そしてさらにキレている。
リリーに対しての態度に加えて自分へのあの見下した視線に実力には実力をもってやり返してやらないと気が済まない。
リリーの持っているさらに大きな魔石はめんどくさいことになりそうなので隠している。これは結果発表後ならどうとでもなるだろう。
そんなこんなでカイトの感情は高ぶっていく。
ワイバーンは古龍種ではないのでブレスを打つことは出来ない代わりにウルフたちと同様なボール系の魔法を使う。
今回の相手は……
ギィァーーーグャーー
咆哮とともにその口の中からはアイスウルフが出したものとは比べ物にならないほどの大きさのアイスボールが出来上がっていた。
直径1mにもなろうかという大きさだ。
流石のカイトもそんなものははね返せないので着弾する前に避ける。
そうして着弾すると……
アイスボールが爆散した結晶があたりに舞散り視界を奪われる結果となった。
と、そこでチャンスと思ったのかその巨体を生かして数うちゃ当たる戦法でではないが、広い面積カバーしとけば何処かでは当たるだろうというような大雑把な攻撃がカイトを危険に晒す。
ワイバーンは翼を広げているため奪われた視界の全域に攻撃は届くこととなる。
だがカイトは、
(ラッキー!これなら反射使ってもあのいけ好かない勇者にバレることもないだろうし。ありがとうワイバーン!)
そんなことを思っていた。
敵にに感謝さえ述べていた。
そんなことを考えながらもしっかりとワイバーンの攻撃を反射でずらしながら間を縫ってその微小な氷の多々漂う空間から抜け出し真っ直ぐと相手を見つめる。
「いいか勇者とやら。これが俺の実力だから見とけよ。ちびるんじゃねえぞ。」
いつにも無くガラの悪さを発揮しながらカイトは空中を飛んでるワイバーンの真下へと駆け抜けていく。
それと共にカイトの体の周りに光の微粒子が集まり始めて、カイト自身が光の発光源であるかのように(実際そうなるのだが)彼の体を覆い尽くし、彼の体の中へと消えていく。
その瞬間にそこにいるのはカイトとわかっているのに、ワイバーンの威圧など子供だましに思えるほどのとても本能的に脅威を感じるレベルの存在へと至っていた。
「あぁ、凄くむかつくんだよなー。言っとくけどこれは俺の本気じゃないけど喰らえコノヤロー」
カイトの感情が抑えきれていないのはその感情を力に変えている副作用と考えてもらえればいいだろうか。力に成り代わらない感情が外へと漏れ始めているのだ。
カイトのワイバーンの下へと達する速さは時間をかけて彼の体内にその美しい光が取り込まれていくたびにまた一段一段とギアが上がっていき、ワイバーンの下へ到達する。
もちろんワイバーンは5mほどの宙を飛んでいるため普通ならば届くはずがない。
普通ならば。
カイトは何を思ったのか、それが一番合理的だと判断したのか今までの前に進む原動力にしてきた力を自分の″反射″ですべてを上に向かって変化させる。
そのカイトの体は一種の弾丸となりワイバーンめがけて一直線に飛んでいく。
そのスピードにカイトは臆することなく、空中で出来るだけ腰の回転を加えて予備動作を完了させておく。
そうして激突の時。
ワイバーンは何とかしようと悪あがきながらも口内であらたなアイスボールを作り出し発車する準備をする。
だがやはり遅すぎた。
その動作を始めた瞬間もうカイトはすぐ目の前にいたのだ。
そして………………
バキッッボキッメキョメキョ……バーーーン
作りかけのアイスボールの中央を貫通し、ワイバーンの顔面部分を蹴り飛ばし、ほぼ戦闘不能状態に追い込んだカイト。
貫通したアイスボールはこの一瞬で起こった出来事が全くわかってないと言った様子で止まった後に大きな爆発を引き起こした。
それがワイバーンの運命だというかのように。
ズシャーーーーン
地に落ちるワイバーン。
その上でガッツポーズするカイトを乗せていた。
「どうだ、見たか。これが俺の力だ。ワイバーンなんて一撃だぞ。お前と同じようにな。」
ワイバーンから降りながら、先程言われた挑発を実力という名の返事付きで返したカイトである。
だがここでしっかりと働く者がいることをお忘れなきよう。
「あれっ?まだワイバーン生きてるみたいだよー!早くカイトとどめ刺さなきゃー!」
ブルータスお前もか!
こうしてしっかりと「二撃」でワイバーンを沈めたカイトはそこに残ったサクヤのものとほぼ変わらないであろう魔石を回収し観戦していたもののところへと戻る。
「キミは二撃だったんだな。ふっ。どう思うノア?」
ずっとサクヤの隣にいるノアは答える。
「これが有言不実行と言うダメ人間の典型パターンなんですね。反面教師としてのお手本になりました。ありがとうございます。」
ニコニコした笑顔とは対照的に毒を吐くその様子は狂気を宿しているかのようだ。
「さっきまではうまく感情がコントロール出来ていなかったようだが今は言えるから言うぞ。
学園生活でこれからもよろしくな勇者さん」
もちろん俺にボコされるという意味でだが。
「私もよろしくね。ただ私のカンは鋭いからとだけ伝えておくねー」
一筋縄ではいかないような挨拶をリリーも重ねる
「あぁ。君たちがいると学園が楽しくなりそうだ。この世界に来てよかったと今改めて感じているよ。『これからずっと』よろしくな。」
サクヤは愉快そうにいっときの別れの挨拶をし踵を返していく。
ノアは黙ってそれに従い後ろについていった。
サクヤは自身がだんだんあの薄ら寒い笑を浮かべる、この世界に彼を連れてきた女神のようになっていることに気づくことは無い……。
カイトとリリーはそんなサクヤがさらなるトラブルメーカーになる予感を胸に抱きながらも、この場では最後まで試験を続けることに意識を集中させるのだった。




