15.間違いは起こしてもいいぞ(笑)
この国において王城はシンボルだ。
この都市の周りには神様の結界のおかげで大規模な防壁がいらず、正門から入らない人を弾くための人の侵入を拒む程度の石の壁が存在すればよかった。
そうなると都市については活気はあるが大してこここそが目玉だ!と言ったようなものは見られない。
そうなると、この都市の最奥にそびえ立つ王城はその見た目もあいまってこの国の象徴として存在をするようになった。
元々、王城は砦のような形をしていた。
それはここでの戦いを備えてとかそういう訳では無い。
この世界の主流の城とは高さが高すぎず、質実剛健な様が喜ばれた。と言うより立派にしたいとは思われていたが、造形的な城の美まで追求しようとする考えは存在してなかった。
だが、ある時やってきた勇者に言われた。
「この城ちょっと簡素すぎてダサくね?」
そんな不躾なことを直球で言ってきた。
俺の世界の城はもっと美しかったとも言っていた。
そういう事ならその美しい城とやらはどんな見た目なのかとかいう話になりそれを絵でかきおこすと即決的に城改造計画が進み、新たな城が完成した。
それは言うのであればヨーロッパ中世のお城。皆が想像するのはシンデレラ城のような感じだろうか。
全体的に白を基調とし、幾重にも塔のような構造が重ねられ背の高さと特徴的な造形美を生み出しておりその屋根はエメラルドグリーンに染められている。
所々から見えるバルコニーにはアクセントとなる真紅のバラや黄色、オレンジなどの明るい色の花が咲き誇っており城の白色との対比でさらに美しさを増していた。
それに加え、所々に存在する窓は光の反射を計算し尽くされているのか、心なしか城自体が輝いて見える。
これだけだと異世界から持ってきた知恵だけでの城となってしまうためこの国の人々らしさのアレンジで中央部は勇者のデザインに、そして左右には今までの砦のイメージを残し屋敷と砦の組み合わさったような造りとなった。その屋上は城にいる騎士達の練習場ともなった。
中央部は他国や賓客に対しての謁見の間や応接室などを多く含む建物となり、向かって左側は自国用の宿泊施設、向かって右側は自国以外のもののために造られた宿泊施設となっている。
俺たちは今その城の目の前にやってきた。
隣にはリリー、クロト、リーベルがいる。
今から王様への謁見タイムだ。
もちろん王様に謁見するために俺たちはしっかりとドレスコードに引っかからないくらいの服装はしている。
俺は普通に黒とタキシード。
銀の瞳が黒いタキシードと自分の髪色と混ざり異色の存在感を放っており自分としてはそこそこ気にいっている。
クロトが「王子様にはこれ!」と白いタキシードを渡してきたがさすがにそれ着る勇気はなかったよ。
リリーは髪色に合わせて水色のドレスを着ている。このドレスにはこれといった大した特徴はない。だが、それがリリーの体の曲線美、すらっと伸びる少し引き締まっていいるが筋肉質というわけではなく返って美しさを引き立てる美脚などに目を釘付けにさせる。
来ているものがシンプルだからこそ素材の魅力を最大限生かせるのだ。
最初は冒険者だから冒険者らしい服装で行けばいいのでは?という意見が出たが、クロトのゴリ押しにより結局正装をすることとなった。
昨日の報酬の大部分が飛んでいきましたとさ。
そんなクロトとリーベルはいつも通りの服装だ。
いつも通りというのもクロトは少しフリルをあしらった少女趣味的なワンピース、リーベルは少しだぼっとしているグレー系の服を着ている。リーベルに関していえばそのゆったり感がまたリーベルを幼く、また可愛さを増長して見せていたのであるが。
萌え袖になってるのがチャームポイント(リリー談)
ちなみに神様が大して特別な格好をしていないのは国王よりも偉いからという至極真っ当な理由らしい。国王の方がよっぽど威厳がある気がすると思うんだけど。解せぬ。
そもそもこの謁見は自分たちから言わなくても結局招集されたらしい。
それはどうしてかって?
答えは簡単で国王にはすべての民の力の情報が入ってくるからだ。
この国の民は力を王にのみ報告する義務がある。
カトレア王国内で力を利用した犯罪や悪巧みの発生は少なくない。
そのような事件の早期解決を図るためには誰かがその情報を知っていなければいけない。
そういう理由で王様はカイトとリリーのスキル・魔法スロットを知ったのだ。
正確に言えば彼を補佐する記憶の神様が国内の全ての情報を記憶し、そのなかから特に強力な力を探しているのだ。
「·そろそろ入ろうよー」
「そうだな。でもリリー、一つだけ言わせてくれ。。今回だけは変なフラグを立てないでくれよ。」
「さあカイト様行きましょう。私をエスコートしていただけますか?」
「…………さあ早く入るのだ。」
なんでかわからないけどリーベルが一番大人に見えたのは多分錯覚なのだろう。
俺たちはお城の門番さんに声をかけ、俺たちの約束の確認が取れ次第中へ中へと招待されていく。
そうして何か待ち時間とかあるのかななんだかなと考えているとそのまま直通で謁見の間に連れていかれた。
「カイトー。こんなにスグに連れてこられるものなの?私まだ心の準備できてないんだけどー!」
「心配するなリリー。俺もできてるはずがないだろうが!」
「自然体でいいんですよカイト様とリリーちゃんも。」
「アホか、神はそれでもいいかもしれないがこいつらがやったら下手すると罰されるのだぞ。」
またもやリーベルが真面目に見えてくる。
それに対応してさらにクロトはポンコツに見える。
謁見の間に入ってからというもの周りの視線や正面からの王座からの視線に気後れを覚えながらも少しずつ前へと進んでゆく。
そしてある一定の位置まで行くと俺たちはそこで跪く。俺たち二人の横にいる神様ふたりは自然体だけどね。
正直言ってずっと視線を床で心の安寧をはかっていたため、この間のことでわかることと言えばとても広いこと、奥に数段ありその上に王がいること、壁際にズラーッと騎士が並んでいること、俺たちの歩いてる床には赤いカーペットが全面に敷かれていることくらいだ。
「まず顔を上げてくれ。」
最初の言葉は国王からだった。
「私はそんなにかしこまった態度とられて益の無い話をすることが一番嫌いだ。だからできるだけ丁寧な言葉遣いをしてもらえればそれでよい。」
巷で良王と言われているが今の一幕で確かにその一端が垣間見えたような見えなかったような。
「という事だからカイトとリリーちゃんはそんなに縮こまらないでね。」
「というかそちらの方が私がお酒を飲んでいる時と同じくらい迷惑なのだ。」
リーベルの言葉になるほどと心の中で納得して顔を上げる。
そこには王にしてはやはり若い印象を受けるものが玉座に座っている。
「それで今日来てもらったのは君たちの力について話したいからだが今ここで話してしまうとここにいる大勢のものに個人の秘密とも呼べるものをばらまいてしまうことになる。だからこの後に他の部屋でそれについては話をさせてもらおう。」
「分かりました。」
そこで初めて王はカイトとリリーをしっかりと見た。今までに来た力をもらったばかりの冒険者は実力があっても正装できるほどのお金を最初から稼いでくるものは皆無だった。
なのにの2人はしっかりと服装まで整えていることに少し驚く。その事に気づいている周りの者達もだ。
「そなたたちは今日のためにそのような格好を準備してくれたのか?」
「依頼を達成したお金でなんとかですが失礼のないようにと思いまして……。」
カイトは恐る恐るながら王との会話を始める。
「それは素晴らしいな。これからの活躍にも期待しておるぞ。と、前置きはここまでにしておき、力の話をする前に私から提案がある。」
「提案ですかー?」
「うむ。今回そなたたちの力を見せてもらって思ったことなのであるがもちろんとても強力だ。だがそれゆえに周りとの隔絶とした力のあまりに同年代の友達など皆無になってしまうかもしれないと私は考える。」
真面目な顔をしながら話していた王はここで少しお茶目な顔に変わる。
「実は最近勇者が現れた。」
周りにいるものは知っていた。最近来たリリーとカイトにはあまり耳に入る機会がなかったが此度の勇者は能力が飛び抜けているのと対照的に段々と人間としての評価は力と反比例して下がっていっていることを。
「勇者とは異世界から唐突に飛ばされてきたもののことを指す。その皆はこの世界より上位世界からやって来るためより強い力が備わっているのだ。正直言って誰も太刀打ちできないからタチが悪い。そこで、そなたたちにも私は王立学園に行って欲しいのだ。そなたたちはあの勇者よりも強くなれると私は今感じておる。」
そこで横からクロトとリーベルが口を挟む。
「それは異世界の勇者を当てにするのではなく自国の勇者を育てたいという認識で良いのですか?」
「もちろんバックアップはしてくれるのだろうな?」
「それは我々が全力でさせてもらう。今の勇者では魔王は倒せてもその後にろくなことが起こらないだろう。君たちのことは彼には伏せておくが、学園の入学試験は3日後だ。」
そう言って応は玉座から立ち上がる。
「今から少し込み入った話をさせてもらいたい。ここで話せることには今の時点で限界を感じている。ノア、彼らをあそこへ。」
「わかりました国王様。」
ノアと呼ばれる女の子は玉座の横にいた。
そして冷静沈着な態度で案内を始める。
謁見の間より奥に入っていくとともに立派な部屋が増えていき、その一室に案内されると机を挟んで向かい側に国王は座っていた。
先程は遠目に見ただけだったためかそこまでの権力者や強者のみが持っているような″雰囲気″というものをそこまで意識することは無かったが、これだけ近くにいると雰囲気に当てられてしまいそうになる。
もちろんクロトとリーベルは通常運転。
リーベルはどう見ても顔に酒が飲みたいとかいてあることが誰にでも読み取れるだろうし、クロトの目線はカイトonly。
「名前を名乗るのをを忘れていたな。私の名はリスト·カトレア·ローウェルだ。」
声もさっきは意識することは無かったが腹の底に響いてくるかのような力強さとその奥からの優しさが感じとれる、そんな雰囲気に引けを取らない程のものだ。
「カイトシルバーです」
「リリーゴールドです」
ちょっと声が震えそうで危なかったーーー。
隣のリリーを見ると……!
えっ?
ちょーリラックスモード?
いつも通りの笑顔だ。緊張感などどこかに置き忘れてきたかのようないつも通りだ。
えっ。ほんとに緊張してたのって俺だけ?
なんか馬鹿らしくなってきたんだけど。
あっ。なんかとっても冷静になってきたわ。
よしこれなら行けそうだな。
カイトがそんなことを自分との対話で話していたとは周りはつゆ知らず話は進んでいく。
ちなみにリリーも最初は緊張していたがリーベルを見たら緊張?ナニソレオイシイノ?ってなっていたらしい。やっぱりかわいいは正義!これはいつでもどこでも何度でもだそうです。
「そなたたちの力を最初に聞いた時にはびっくりしたが今でもわからないことが多いのだが聞いても良いか?」
「「もちろんです。」」
そこからは簡易的に自分たちの能力について明かした。その間、国王はずっと唸っていた。というかちょっと規格外すぎて反応できていなかった。
記憶の神にもそんなスキルの確認は今までされていなかった。
サクヤの時は全然驚かなかったのではという疑問が出るかもしれないが、カイトとリリーはこの国で生まれこの国で育ってきたものだ。この世界ではこれだけの強さを得られないことは多分確実である。なのに出てきたのだ。あのイカれたスキルたちが。
特に『追憶楽園』がゆくゆくは一番ヤバイスキルになることは間違いなさそうに見える。
カイトのスキルに至っては底が見えない。
「単刀直入にいうと学校を出た後に勇者と一緒にパーティーを組んで魔王を倒す度に出てほしいと考えている。そなたたちがその条件を飲んでくれると嬉しいのだが。」
「そう言えばカイト様とリリーちゃんはいつまで王都にいられるの?」
なんとも言えないタイミングでやっぱり空気を読めないのかクロトが声をかけてくる。言ってることは正しいんだけど……
隣でリーベルは目でクロトを制していたが無駄に終わってしまったようだ。
「「あっ。」」
滞在期間残り数日で一度帰らなければいけない。
「それなら問題ない。おい、エリザベス!」
「お呼びでしょうか王様。」
「今から手紙を届けてもらいたい。」
カイトとリリーは話についていけない。
だが、リーベルとクロトは事情がわかっているのか後ろですました顔をしている。
「わかりました。ではどこに行けばいいのでしょうか。」
「そなたらの故郷はゼロであってるか?」
「私達の故郷はゼロの町?村?ですが……」
「ではエリザベスよろしく頼んだ。」
その瞬間エリザベスは消えた。
なんてことは無かったが、
きっかり三秒後に今度は本当に姿が消えた。
「「えっ?」」
国王リストもクロトもリーベルも皆温かい目でカイトとリリーを見ている。
まあ初見で驚くなという方が無理なのだが。
そしてそんな反応を見ながら楽しんでいたのであるが。
「これは転移魔法ですね。」
「「転移!?」」
何それ絶対最強魔法じゃん。
需要高すぎでしょ。あれ?でも何で有名になっていないんだ?
「どうしてこんな希少な能力がこんなところで燻っているのかという顔だな。なら説明しようか。」
話をまとめると結論、
1.自分のみしか転移はできない。
2.1日に3回までしか使えない。
3.実行に移す前に3秒間のタイムラグが発生する
ということらしい。
戦闘で使えないとなれば確かに少し価値は落ちそうだ。
まあ、王様の近くにいるような人ってことがその有用性を証明しているが。
そしてしばらくすると
「ただいま帰りました。」
目の前にまたエリザベスさんがいた。
「こちらがあなた達の村の方達からもらった手紙になります。」
そう言って一通の手紙を差し出してくる。
─────────────
カイトとリリーへ
まず始めに強い力もらったんだってな。良かったじゃないか。王都の学校に行きたいなら行ってこい。村は俺達がいれば守れ…………るはずだから。
いや、家が半壊したとかそんなことは無いぞ。
最近はカイトとリリーばっかりに魔物を倒させすぎていて俺たちよりもお前らの方が強くなっていたなんてことは無いからな。
さらに俺たちが弱体化していたなんてこともないからな。
今日はカイトとリリーの出世のお祝いも兼ねて倒したモンスター達の石でも売って宴でも開くさ。
それじゃ、王都で頑張ってくれよ。
追伸:そろそろ間違いは起こしてもいいぞ(笑)
─────────────
あいつらめ。
やたらと俺たちばっか森へ放り込んでいたと思ってたら俺たちを魔物の間引きに使ってやがったのか。
まあ俺たちの故郷はなんだかんだ大丈夫だろう。
「カイトー。この追伸ってどうゆうことー?」
うん?
なんだこれ?
─村のヤツらは絶対帰ったら一度絞めないと気がすまなくなってきたぜ。
「間違ってもいいんだってよー」
リリーやめてくれ。その私わかってますよ的な目で見るのも、俺に期待するような目線もやめてくれ。
今のリリーは天然なんかじゃなくあざといぞ!
それも可愛くて憎めないから最悪だー!
「今は国王と話し合う時だぞリリー、後でにしような。」
よしこれで上手くそらせたんじゃないか?
「後でだって、汚らわしい。」
隣でリーベルが誤解を増長させるような物言いをする。
やめてくれ。一旦この話は終わってくれー!
王様の目の前なんだよー。
「後でね!分かったよカイトー」
もう俺は諦めた。
これは何を言っても泥沼へとハマっていくパターンだ。
しょうがないので畏れ多いが国王様に目線で話を勧めてもらえるように全力でお願いしてみる。
クロトの目線もすごい痛いんだよ。
「保護者の方からも許可が出たわけだが王立学園に行ってもらうということで良いか?」
俺たちはお互いに目を合わせ頷く
「「はい!」」
国王リストも満足そうに頷く。
これで俺たちが入学試験に受かりさえすれば王立学園行きは決定だ。
「忘れておったが私の隣にいる娘のノアも一緒に王立学園に行くことになるであろうからよろしく頼むぞ。」
国王の隣にいたノアは綺麗なお辞儀をして、軽く挨拶をするとこの部屋を退出していった。
「すまんな。ノアは今勇者に肩入れしているためにあんなそっけない態度になっているが、仲良くなってくれると私も嬉しいぞ。」
最後に入学試験は3日後にあることを再確認で聞かされ話は終了した。
「私たちが学校かー。周りはみんな裕福な家の出の人たちがやっぱり多いのかなー」
リリーはさっきの王様の前での堂々とした態度等って代わりとっても心配そうな顔をしている。
さっきするべきだった顔をいましているとも言うが。
「まあ何とかなるだろ。それにしても俺たちが勇者パーティーねー」
なんだかとても遠いところで起きたことのように聞こえる。間違っても今はまだ自分のこととは思えないくらいだ。
「それだけ才能があるんだから素直に喜んどけばいいのだ!」
後ろからリーベルは不器用ながらも俺たちのことを心配して彼女なりのエールを送ってくれているようだ。
「カイト様はどこにいてもカイト様です!かっこいいからOKなんです!」
クロトはクロトだ。
まあこんな感じで王様への謁見への無事終わり、次は学園での生活が決まった。まだ何があるかわからないがリリーと一緒にいれば多分大丈夫だろう。
そうして俺たちは帰途につくのだった。
その時、後ろでは凄まじい光が点に向かい伸びていることに誰も気づかなかった。ダイヤモンドダストのような光の粒が散りばめられたその光景は見たものを魅了した。が、サクヤとカイトたちの出会う運命はまだここでは無かったのであろう。
とは言うものの否が応でも学園では彼らは出会うことになるのだが…………
これで第1章は終わりです。
次からは学園編でサクヤとカイトたちの絡みが始まりますのでこれからもよろしくお願いします!




