10.この世界はちょろいな
とても遅れてごめんなさい。
更新が不定期になりますがどうぞよろしくお願いします。
サクヤはもう一度謁見の間へと戻ってきた。
そこには先ほどと変わらない光景が並んでおりサクヤのこと否、サクヤの力の詳細を待ちわびていたのだ。
「力を無事にもらうことは出来たかなサクヤ殿。今後のサクヤ殿に対する対応にも関わりがあるためその力を私たちに教えてほしいのだが問題ないか?」
「もちろんです。」
そしてサクヤは女神の部屋(?)にいってもらった力
―『聖なる雨』と『敗者復活』についてのみをそこで王に伝えた。
これには理由があった。
女神ールキアは説明の時に加えてこうも言った。
「スキルや魔法は両方を合わせて上限5個までさ。その中にどれだけ強力かつ相性の良いスキルや魔法が集まるかというところが評価の明暗が分かれるところなんだ。」
「それに照らし合わせて考えてみると君のスキルは規格外なんだ。本来ならば二つを両方持っていることによって最強と呼ばれるようなスキルを君は一つのスキルで持ち合わせているんだ。それも初期段階で。ステータスが低いとはいくら言っても強力すぎるスキルと魔法を3つも持っていてはまだ弱いうちに君の抹殺を目論む者達が現れるだろう。勇者とは言っても過去には強力な力を得たあげく、魔王となり人間に害悪を与える者がいたからね。」
「夜寝てる時になんか天井から落ちてグサッみたいなやつとか?」
「そうだよ。これはギャグ漫画とかフィクションの話ではなく現実なんだよね。そこで僕は君が『女神の福音』を現段階では伝えないことを僕はオススメするよ。このスキルの効果についてはこの世界にとっても新たなスキルのジャンルだからさらに恐れられるだろう。」
「つまりHP自動回復はチートだと?」
「そういう事だね。死にたくなければそのスキルを黙っていてくれ。」
こんな会話をした後で真実を伝える人はいないだろう。
例に漏れずサクヤももちろんそうである。
王様や周りを囲む部下はそのスキルと魔法の説明を聞いてお口はあんぐり。
この間の両端に並んでいた騎士達は驚きすぎて逆にみんな無表情となって固まっていた?。
しばらくするとこんな声がこの間にはヒソヒソと流れていた。
「魔法が一つのスキルで二つ使えるだと?」
「しかも選択自由だろ。ぶっ飛んでるな。」
「いや、それよりも魔法ヤバくないか」
「ただでさえ貴重な魔力操作のスキルが魔法にくっついているとかキチガイだよな。」
「サクヤ様素敵抱いて」
最後のは置いとくとしてとにかくみんなサクヤのスキルと魔法を聞いて好奇心丸出しの者もいるがそれと同時に少しの恐怖心を抱いているのは目に見えて明らかだった。
ただそんなイカれたスキルと魔法を言われたところで信じることは出来ないだろう。
普通ならば。。。
この世界の人たちはそんな人達を過去に何度も見ているのだ。というか現にこの世界にいる人も存在する。
とは言うもののやはり今までの勇者達と比べてもサクヤのスキルは一線を画しているのもまた事実である。
よって国王はサクヤにこんな提案をした。
「サクヤ殿はもう試しうちをしたのか?」
「『敗者復活』については今一つの魔法を習得している状態です。ただ、『聖なる雨』についてはまだほとんど試してない感じですね。」
「では今から試しうちをしてもらおうと思っているのだがよいか?」
「わかりましたと言いたいところですが……」
サクヤはさっきの女神とのいざこざを思い出して魔力が切れていることを伝えようとした。
だがサクヤの体は先ほどの魔力が切れていて風邪をひいている時のようなかすかなだるさが消え去っていて、逆に今ならなんでもできそうな感じがするほどにすこぶる快調であった。
不思議に思いながらステータスを見てみると魔力は全快だった。
実は女神の作り出した空間というのは言わば仮想空間のようなものである。
そのためそこで起こったことは決して現実空間には作用しない。
つまり、あの空間で体験したことは体験したという経験は残るが本人がその空間から出てしまえば入ってきた時の状態となるのだ。
もちろんそんなことを知らないサクヤであったが女神がなにかしたんだろうと適当にあたりをつけて(ほとんど正解)言葉を続ける
「いえ、わかりました。」
「ではサクヤ殿をあそこへお連れしろ」
「はっ。承知しました。」
国王は部下に指示を出しサクヤをとっておきの場所へと案内する。
そのとっておきの場所と言うところにつくとそこは四角い正方形の部屋だった。
見た感じ20m×20mくらいの大きさの部屋だ。
ここまでなら普通の部屋と思うかもしれない。
ただこの部屋は全てが金色に光っていた。
簡単に表現するのであれば足利義満もびっくりな金閣なんて比較にならないものであった。
ついでに千利休もびっくり笑
それらは光を反射して光っているという表現では不釣り合いでそれ自体が光源となり光を発しているかのような錯覚を抱かせるほどのものであった。
「この部屋はすべての壁がアダマンタイトで出来ておる。アダマンタイトというのはこの国で最も硬いと言われる鉱山資源だ。今からこの壁に向かってサクヤ殿の魔法の威力を試させてもらおうか。」
そういう国王の傍らには、王妃様、ノア王女、何かあった時のための神様ととてもコンパクトなメンバーでこの部屋に来ていた。
「ちなみにこれまでで初期ステータスでこの壁に傷をつけられたものはおらん。他の勇者殿が言うにはこの壁はダイヤモンドのように硬いとかよくわからないことをいっていたな。」
この時、サクヤは震えた。
別にこの壁の強度の強さに恐れおののいた訳では無い。それについて言えば逆に闘争心を掻き立てられる思いだった。
だが、アダマンタイトはこの国で一番硬いと考えられる鉱物だと王は言った。
そんな最も硬い鉱物はもちろん希少なはずである。
希少ということはそれに比例して価値はとても高まるはずである。
それを勇者の練習スペースのために使うということは恐らく国家財政に組み込む程のお金を動かし、勇者の優遇のために使っているという事実にサクヤは震えた。
ほんとに自分の理想へ向けた、あの劣等感を覆すほどの自分中心の世界の構築へのピースがこうやってこの世界に来てからは所々でひしひしとその身で感じることができるようになってきていた。
「ではやってみてもいいですか?」
サクヤは自分の力を過信していたといえば嘘にはならない。だが、サクヤの力は女神ルキアが隠すように指示するほどのものだ。
結局、過信してもしょうがない程度の力を持っていたことはこれから証明されてしまう。
サクヤはゆっくりとした歩みでその部屋に入り、ちょうど中心あたりで立ち止まりイメージを始める。
その瞬間サクヤより向こう半分の部分は何も見えなくなった。
いや、この表現は適切ではないのかもしれない。
サクヤよりも向こうの部分は大量の光の雨が降り注ぎアダマンタイトの壁や床へと降り注いでいた。
ただ、この聖白色の光の一滴一滴がとてつもない威力を秘めているとともに、その内包するエネルギー量を示唆しているかのようにとてつもない光を発しているのだ。
まるでそこに光の壁ができたかのようである。
サクヤの向こう側半分が見えなくなったと言ったが、スグに目潰しの要領で 観戦者は何も見えなくなった。
サクヤは自分自身がそんなことになっては敵わないのでもちろんもう一つの魔法で目をカバーしていたわけであったが。
しばらくして王様達の観戦者の視力が戻る頃には光はおさまりアダマンタイトの床は無傷の金属特有の光沢をいまだに保ち続けていた。
「あれほどの攻撃魔法でもまだ傷つかぬのか。」
国王は少し呆れ気味だった。
今までの勇者達に関する知識の文献はできる限り読んできたつもりだった。
それでも初期段階でこれ程の威力を発揮する魔法は聞いたことも見たこともなかった。
そしてサクヤの次の言葉にまた驚愕する。
「今のは広域殲滅魔法の類かな。
じゃあ次は単騎戦で役に立ちそうなサイズの魔法にカスタマイズするか。では2発目いきまーす」
「サクヤ様はまだ全力を出していなかったのですか?」
国王の隣で見ていたノアはただただ疑問に思ったので聞いてみた。
「うーん。さっきの魔法はたくさんの敵を一度に沢山倒すための魔法ですね。先ほど話したようにこの魔法は威力の調整が出来るんです。なので一人の相手にあの魔法を打つと魔力のロスが大きくなるのでこうするんです。」
サクヤはまたさっきとは異なるイメージをする
自分の手の中に小さな太陽があるかのような。
表面を覆うフレアを一方向に向け放つような。
その小さな太陽のエネルギーを一つの雨とするそんなイメージ。
その雨は1滴だった。
ただそれはもはや雨とは呼べない代物。
天から地上へと降りた一筋の光の柱。
燃え尽きることのない星
そんなものを錯覚させるものだった。
光がおさまる頃に一同は見た。
アダマンタイトの床が凹となっているのを。
その時王は恐れた。
これほどの逸材は過去にいなかったと。
しかも彼はまだレベル1
今から成長していく段階である。
取り扱いを誤れば間違いなく人類は滅びるほどのものであると。
その時サクヤは歓喜した。
自分の力は常軌を逸していることは聞いていた。
ただどれほどのものかは分かっていなかった。
周りの反応を見て彼は思った。
これからは自分のターンだなと
その時ノアは我を忘れた。
ノアはこの光景を見たことがない。
だが何故かこの美しい光景を知っていた。
聖白色の光をどうしてか懐かしく思った。
その光に心を奪われた。
もはや何も言うこともなく、みんなは無言で謁見の間へ戻った。
王はこれからのことを考えため息をつき、サクヤは自分に酔いしれだし、ノアはサクヤに憂いを帯びた熱い眼差しを投げかけながら。
改めてサクヤのこれからについてを話すこととなった。
「サクヤ殿を他国の国王をもてなすのと同じレベルでの待遇ということで決定でよいかな。それに加えて望むものは先程も言ったようできる限り与えるつもりだ。」
「ほんとに自分はそんな待遇なのか……。」
「王として言うとサクヤ殿が他国に流出してしまった場合の時の方が危険だと判断するのだ。サクヤ殿はそれほどの力を持っておる。」
サクヤはにやりと笑う。
それに応えるかのように王も口角をあげる。
そうして、
「自分はこの国にいる代わりにすき放題できるということで間違いないですね?」
サクヤはこれが魔法と同じように想像でないことを確認する意味も込めてもう一度だけ質問した。
「そうである。」
国王はハッキリと断言する。
今が現実であることを強調するかのように。
そして最後にこの世界についての付け加えの説明。
というかこの部分が力の次に大事な部分だった。
「勇者が現れる頃、この世界には魔王が現れる。これは昔からの文献を調べ尽くした結果である。よってそれまでにこの国にある王立学園に入学してほしい。そこで、この世界の常識と有能なパーティーメンバーを見つけて魔王に対して備えといてほしいのだ。」
「わかりました。」
サクヤの答えに満足そうに国王は頷く。
そして少し申し訳なさそうな顔をして言葉を続けた。
「ただ学園は一年周期でまわっている。学年は一つのみ。そのため次の入学までは3ヵ月かかるのだ。申し訳ないがその間は好きなことをしててもらいたい。」
サクヤは考える。
このまま王城にいれば、なんだかんだで自分はいい待遇が受けられると確信している。
毎日ご馳走が振る舞われ、女に困ることはないくらいだろう。
逆に言えばそれはすなわち自分はほぼ管理されるに等しいことだろう。
それほど強大な力を得たということは必ず監視がつくき、自分の行動は制限される。
最終的にはこの地に縫い付けられる可能性が高いだろう。
そんな時に自分にこの世界の知恵があれば。
ここだけでなくほかの土地についても知っていたのなら。
サクヤは最悪のケースを考え、それでも脱せるようにとの準備をすることにした。
「その条件を呑みましょう。ただそれには私にも対価をもらう権利がありますよね?ここに留まることについての。」
「あぁ、もちろんだ。」
「では言いますね?ノアさんを自分のモノにします。」
…………
…………
…………
「私の耳が遠かったのかな。もう一度だけ応えてみてくれないか?」
多分そういったのであろうという確信を持っていたが、彼は信じたくなかった。そのため普段ならしないであろう愚問をしてしまった。
「何でもくれると言うのなら最初に王様の覚悟が見たいんです。ノアさんをくれますか?さあどうしますか?」
国王は自分の中で最悪の状況を考えてきたつもりだったがそれがまだ甘く、いかに自分の想像力は乏しくダダあまなのかを思い知らされた気分であった。
ここで国王自身が断ればたぶんサクヤはこの国に見切りをつけて他の国まで行くかもしれない。
だがそう簡単に王女であるしかも王族のマスコット的存在として際立った人気を誇るノアを捧げるのも忍びない。
というか個人的に嫌であった。
そこで何とか急造で考えた苦し紛れの案でサクヤの質問を避けようとした。
「私はサクヤ殿にならノアを渡してもいいと思っている。ただ、それを決めるのは私ではなくノア本人ということでどうだろうか。」
自分から直接断ることはできないのでノアに振ることにより、遠回しに断りの意を加えようと考えた結果の答えであった。
ただここで国王にとって誤算が生じる。
「私は勇者様のことはそんなに嫌いじゃないですよ。ただ、その……いきなりと言うのはやめて欲しいです。一緒に愛を育んでいただけるのなら……ポッ」
ノアはさっきの光景を見た状態からまた正気に戻っていた。
なのにこんなことを言うのはどうしてか。
それは極めて単純であった。
サクヤはイケメンなのである。
そこに加えて、義務と言えばいいのか事故といえばいいのかわからないが、さっき人口呼吸という名のキスまでしてしまった。
これまであまり外を知らない、言わば城という名の鳥かごの中で育った彼女は真っ白だった。
そんな彼女がキスという書物でしか読んだことのないような事象が起きてしまえばそれは当然気になってしまうのは仕方が無い。それも悪くない、むしろ周辺国にいる王子達よりも優良物件であるとすれば尚更である。
「国王様、これで交渉成立ということで宜しいでしょうか?」
「あ…あぁ…………。」
ノアがそんなことになっているとは夢にも思っていなかった国王の見立ては見事に外れ、サクヤの思い通りになる現実にため息をつかざるを得なかった。
でもよくよく考えてみればサクヤをこの地に縫い付けるための良い手段となるかもしれないとポジティブに考えることで、なんとか自分の中で折り合いをつけた。
こうしてこの場は閉ざされた。
1ヶ月後にはノアは陥落していた。
「サクヤ、初めてだったけど私、今とっても幸せです。」
「俺もノアみたいな美人と一緒になれて嬉しいよ。」
サクヤは王城に住み、訓練をしたりしながらレベルアップ、それと共にノアとの仲を深めていっていた。
2ヶ月後・・・
サクヤはすっかり変貌していた。
最初の頃は王様の手前丁寧な態度を心がけていたし、まだ自分の実力では王様付きの騎士ほどの力にかなうとは思っていなかった。
だがこれくらいの時からサクヤのレベルは伸びていき実力が伯仲し始めた。
もちろん秘密にしている『女神の福音』のおかげであるが。
ノアとはその後も何度も、いや、ほぼ毎日楽しんでいた。
しかし彼はもっと新たな刺激を欲した。
この時から
ある時は街中に出て気に入った女の子をナンパし連れこんだりした。
双方の合意が得られた時であればその彼女はノアに加えてのハーレムの一員となることになった。
これだけならまだよかった。
この時のサクヤは権力に酔っていた。
嫌がる女の子を無理やり連れてこさせて相手をさせることもあれば、夫のいる人妻にまで手を出すこともあった。
権力は力であった。
だが人間の道を踏み外したものの使用する権力とはタダの脅しであり暴力であった。
この頃、街では勇者の悪評がもう立ち始めていた。
街に住む女性、特に美人と周りから称されるような女性は家から出ることが出来なくなった。
この時のノアはというと
「サクヤは私のものですけど、私ひとりでは支えられるような器ではなかったのですね。。。」
サクヤの胸の中で静かに泣きそうな顔でつぶやく
「でもノア、自分が一番愛してるのはノアだからね。」
その一言だけでノアの表情は180度変化する。
「私はこれからもサクヤを支えていけるように励んでまいります。」
満面の笑みで答えるノアがそこにいた。
その様子は、どこにでもいそうな浮気性の男か詐欺師かが使いそうな言葉に純真なノアが騙されている様子その者だった。
だが、ノアは疑わない。ある種の洗脳とも言えるかもしれないくらいにサクヤにベッタリだった。
そうしてサクヤを囲む人数は日に日に増えていき5人まで増えた。
サクヤは思っていた。
この世界はチョロいなと。
いくら異世界とはいえこうも簡単に自分中心の世界がつくれるとは。
ルキアという女神に感謝しなければならないなと。
ただ、美少女に囲まれていると周りの女の子たちは揃いも揃って美女だ。
だが傾国の美女と呼ばれるほどのものにはまだであった事がないと。
これからはそんな女を自分のものにしようという密かな目標を立てる。
そして、3ヶ月が経ちサクヤは王立学園入学することとなる。
そこでカイトと絶世の美女ならぬリリーと出会ってしまうことになる。
次回からカイトとリリーの話に戻ります。




