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【第331話】微かな違和感

「あのー、説明聞いても良いですか?」


 夏子ちゃんの呼び込みで、女の子が一人来てくれた。ショートボブで落ち着いた服装。派手さはないけれど、どこか真面目で丁寧な印象を受ける子だ。


 テニスサークルとか、英会話同好会、ダンスサークルなど、女子に人気のサークルが多数ある中で、うちの説明を聞きに来てくれる女の子は貴重だ……手芸同好会も苦戦してるみたいだな、頑張れ。


「はーい、どうぞー、何年生ですかー?」


 夏子ちゃんの説明も手慣れてき感がある……やっぱり、場数を踏んだのと、実際に勧誘して入ってくれそうな子がいるっていうのが自信につながったみたいだ。


「2年生ですけど、大丈夫なんですよね?」


「うん、うちのサークルは去年できたばっかりで2年生がいなくって……だから、大歓迎だよ!」


 この辺の説明も淀み無くできるようになったな。


 その一言で、女の子もほっとしたようで、肩の力が抜けたのが分かる。


「そうなんですね……他に2年生で入りそうな人っていますか?」


「さっき一人男の子が来てくれたけど……新歓ボーリングに来てくれれば会えると思うよ」


「あっ、えーっと、会いたいとかそういうわけじゃ……新歓ボーリングっていうのがあるんですね?」


「そうそう、シューズ代だけ出してもらえれば、1年生と2年生は無料だから、気軽に参加してね」


「なるほど……私、パソコンとか詳しくないんですけど、大丈夫なんですか?」


「大丈夫だよ、AIって言ってもスマホでしゃべれるから、ほら、こんな感じ」


 スマホで健斗を見せてあげると……


「えっ、すごい、いつでも話せるんですか?」


『はい、スマホに向けて話しかけて頂ければ……私がAIの健斗です、よろしくお願いします』


「は、はい、教育学科2年の大野(おおの) 絵実(えみ)です。こ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 なんか、既視感のある反応だけど、みんなAIと初対面だとこんな感じなんだな。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよー、ぐち言ったりしても聞いてくれるし……」


『そうですね、困りごとから晩ごはんのレシピまで、なんでも聞いてください』


「そんなこと聞いても良いんですか……えっーと、おさなな……じゃなくて、お魚を煮付けにするときに何を注意すれば良いですか?」


 結構、緊張してるみたいだけど……まあ、健斗はある程度良い間違えても補正して答えてくれるから、大丈夫なんだけどね。


『煮付けにするときは、最初にウロコを取ったりした後、煮はじめたら魚は動かさないことですね、煮崩れしてしまいますので……なるべく少なめの煮汁で落し蓋をして火が通るようにしてください』


「な、なるほど……勉強になります……」


 料理勉強中なのかな?……この辺の情報は陽花経由で健斗に送り込んで学習してもらってるから、得意分野だな。


『それから、最後に蓋を取って少し強火で煮詰めますが、そのときに煮汁を魚にかけてあげると照りが出て美味しそうな見た目になりますよ』


 これ、三千花が陽花に教えてたやつだな……皮に味が染みて美味しいんだよな……


「そ、そんなことまで……分かりました。やってみます!」


「煮付け作るなんてすごいね……お料理好きなのかな?」


「は、はい、勉強中なんですけど……せっかくなら美味しく作りたいので……」


「誰かお料理を作ってあげたい方がいらっしゃるんですか?」


 突然、陽花が絵実ちゃんに話しかけた。


 ……何か感情に影響を与える話があったか?


「い、いえ、今のところは……き、綺麗な方……せ、先輩ですよね?」


「ごめんなさい、私は聴講生で正式なサークル員ではないんですが、いとこと一緒に行事に参加させて頂いていて……忍野 陽花です。よろしくお願いします」


「あっ、俺が陽花のいとこで情報科学科4年の忍野 涼也です。よろしくね」


 まさか、無感情の陽花が会話に入ると思わなかったから、ちょっと慌てちゃったけど、自然に自己紹介できたよね?


「えっ、情報科学科ですか!?……ああ、それで……いえ、なんでもありません……」


 ん? 情報科学科が気になるのか?……いや、AIをどうやって作ってるかとかが気になっただけかな?


「ごめんね、遅くなっちゃったけど、私がサークルの部長をやっている常磐 夏子です。どう? 新歓ボーリング来てみる?」


「は、はい、是非お願いします!」


 これは、良い手応えだな……


 二人目の2年生として入ってくれるといいな。


 でも、陽花はどうして急に話に加わったんだろう?……後で聞いてみるか……


* * *


「夏子ちゃんお疲れ、良かったね、来てくれそうで」


「はいっ! 緊張しましたけど、ボーリングに来てくれることになって良かったです! 陽花先輩もフォローありがとうございました!」


「いえ、ちょっと聞いてみたかっただけで……急に話に入ってしまってごめんなさい」


「そんな……お料理の話とか、どう広げたら良いか分からなくて……助かりました」


 ふむ、夏子ちゃんはそんなに料理には詳しく無いってことか、健斗がそっち系の話に振っちゃったか困ったんだな。


「そういえば、陽花はどうしてあんなこと聞いたんだ?」


「絵実さんの雰囲気が早耶さんに似ていたからですね……誰かのためにお料理を勉強しているのかと思いました」


 そんな雰囲気あったか? 全然早耶ちゃんとは似てないと思うけど……


 まあ、もしかすると、AIにしか分からない共通点があるのかもしれないから、陽花がそう思うなら、そうなのかもしれないな。


「そっか、俺は全然気が付かなかったけど」


「先輩はそういうの疎いですからね……まあ、私も分からなかったんで、人のこといえませんね」


 陽花だけに分かった何かがあるのか……


 しかも、無感情の陽花に行動させる何か……


 この何かが分かれば、感情を取り戻す鍵になるのかもしれない。

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