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【第330話】思わぬ収穫

「AI研究会でーす! パソコンに詳しくなくても大丈夫ですよー!」


 あれから、何人か1年生が来てくれたけど、夏子ちゃん狙いだったり、陽花狙いだったりの冷やかしが多くて、実際に入ってくれそうな子は居なかった。


 しかし、「部長さん彼氏いるんですか?」とか「後ろのすごい美人の方って、サークルの先輩ですか?」とか、よく本人の目の前で聞けるな……


 夏子ちゃんは、「彼氏? 同じサークルにいるよ!」と、妙にオープンな回答をして逆に引かれたけど……


 そして、陽花は俺の連れで、サークル員じゃないことを伝えたら、そちらも残念そうに去っていった。


 まあ、女の子と仲良くしたいというのは、サークルに入る動機になるだろうから否定はしないが、あまりにもあからさまだったり、それしか考えてないみたいなのはちょっと駄目だな。


 AI研究会なんだから、多少は活動内容とかを見て欲しいと思う。


「なかなか、入ってくれそうな子はいませんね」


「うん、そうだけど、説明も上手くなってきたから、ここからじゃない?」


 夏子ちゃんの説明も、かなり流暢になってきたから、ここからが勝負なんじゃないかな。


 ――そんな話をしていると、こちらを見ている男の子と目が合った。


 新入生っぽくないし、2年生かな?


「AI研究会でーす、2年生も募集してまーす」


 さりげなく、2年生OKの呼び込みをする……一応、周りの人全員に向けた体を装ったけど、本当に聞いてほしいのは彼だ……もし2年生だったら、これで来やすくなるだろう。


 そんな俺の作戦に乗ってくれたのか、恐る恐るこちらにやってくる彼。


 そして……


「あの……情報科学科の忍野先輩ですよね……僕にもAI、作れるでしょうか……」


 まさかの、AI制作希望者だった……


* * *


「僕は、情報科学科2年の(たちばな) (いつき)です……先輩がすごいAIを作ってるって聞いて、どうやったら作れるんだろうって……」


「え、えーっと、まず状況の説明だけど、AIはゼミの研究室で作ってて、このサークルは作る方じゃなくて実際にAIとスマホ越しに会話して、色んなことを学習させる方なんだけど、そこは大丈夫?」


「は、はい、研究室にパソコンがたくさん並んでるのは見たことがありますので、ゼミで作ってるってことは……」


 昼間は放熱のためにドアを開けっ放しにしてたりするからな……同じ学科なら見られてても不思議はない。


「今動いてるAIは”健斗”っていって、サークル員になると、もれなくスマホにアプリを入れられるから、会話できるようになるよ」


 そう言うと、夏子ちゃんが絶妙なタイミングで、スマホの中の健斗を見せてくれる。


『こんにちは、樹さん……私はAIの健斗です。グラフィックはAI研究会3年の彩さんが描いてくれました。よろしくお願いします』


「えっ、すごっ……こ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 いやいや、AIなんだから、そんなに畏まらなくても大丈夫だけど……


 そっか、グラフィックは彩ちゃんが提供してるわけだから、あながち制作に参加できないわけでもないのか……メインのプログラム作ってもらうとかは卒業研究だから難しいかもしれないけど、仕組みを教えたり、サポート的なところを担当してもらうのはできるかもな。


「樹くんはプログラミングとか得意なの?」


「い、いえ、ネットで勉強しながら、作ったりしてますけど、上手く動かなくって……」


「そうなんだ……自分で作ってるなんてすごいね……情報科学科でもサンプルを打ち込んで終わりって人も多いから……」


「そ、そんな、すごくなんか……大きいプログラム作ると、大抵エラーがでちゃって……」


「いやいや、大きいプログラム作ったら、エラー出るの当たり前でしょ、1つもエラーでないプログラムなんて、俺でも作れないよ」


「……そうなんですか、先輩でもエラー出すことあるんですか?」


 悠二は1,000ステップくらいなら、余裕でエラーなしのプラグラム作るけど……あいつはイレギュラーなので、一般人の基準にしてはいけない。


「そうだね、エラーメッセージもプログラム作るときの助けになるから、色んなエラーを出して、その時々の対処法を覚えた方が、勉強になるかな」


「そ、そんなの初めて聞きました……ずっと、エラーは出しちゃいけないんだと思ってて……」


「そんなことないよ、エラーが出てる理由が分かると、コンピュータの仕組みが分かるときがあるからね」


 ――そんな二人の会話を、キラキラした眼差して見つめる人が居た。


「す、すごい! プログラマーの会話だ! 樹くん、是非、新歓ボーリング来てよ! 新入生はレンタルシューズ代だけで参加できるから!」


「えっ、僕、2年生ですけど、良いんですか?」


「もちろん! 1年生でも2年生でも、サークル入ってない人は新入生だから! ボーリングできるでしょ?」


「は、はい、下手ですけど……」


「上手くなくても大丈夫だよ、運動部じゃないから……俺も最低スコア19だし……」


「えっ、19ですか?……それなら大丈夫かもしれません……」


「じゃあ、決まり! 今週の金曜日の夕方からだから、4限まで取ってても参加できるよ」


「はい……じゃあ、よろしくお願いします……」


「こちらこそよろしく! 部長の常磐 夏子だよ、仲良くしてね」


 ――こうして、ようやく、新歓ボーリングに来てくれることになった。


 しかし、夏子ちゃんの逃さないオーラがすごかったな。


 陽花にも「絶妙のコンビネーションですね」と褒めてもらったけど、どちらかというと夏子ちゃんが会話に加わるタイミングが良かったんだと思う。


 これで、樹くんが入ってくれたら嬉しいな。


 何にしても同じ学科の後輩だもんな……


 あわよくば、御子神ゼミに入ってくれないかな?


 高齢のため、1年おきに2〜3人しかゼミ生をとらない御子神教授だけど、来年、募集するはずだから、AIに興味があるなら、健斗を引き継いでも良いし……


 思った以上に大きな収穫のあった、新勧初日だった。

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