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【第295話】お花見の差し入れ

「お料理を作ってきましたのでどうぞ」


 陽花がタッパに入れた料理を配る。


 洋食系の料理だな、エビフライ、唐揚げ、ポテトフライ、クリームコロッケ、チョリソー、ポテトサラダ、サラミソーセージ、ローストビーフもあるけど、ヘビーなのばっかりだな。


「材料費は麗香さんが出してくださいましたので、リクエスト通りに作らさせていただきました」


 なるほど、麗香さんのおつまみチョイスなのか、まあ、お花見には良いかもな。


 外部参加者はこうやって何らかの差し入れを持って来てくれているようだ。

 さすがに、手ぶらで来て飲み食いしようとは思わないもんな。


 とはいえ、全員が料理を作れるかと言うとそうでもないので、麗香さんは食材提供、岬さんはアルコール提供など、財力でカバーすることも可能だ。


「夕花も、作ってきたよ」


 といって、開けたタッパにはエビチリ、シュウマイ、チンジャオロース、バンバンジー、甘酢あんかけ肉団子、酢豚、麻婆豆腐など、定番の中華料理が並んでいる。


「えっ、陽花さんの妹さん? 小学生だよね? こんなに色々作れるの!?」


 夏子ちゃんが驚いてる……そりゃそうだ、夕花が中華鍋を振り回して作ってるのを見ると違和感しかない。まあ、作り終わった後、さすがにもう一回充電したけど……


「すごーい、麻婆豆腐とかおいしそう!」


 美紀ちゃんが、麻婆豆腐に目を留めるが、それは辛いやつだ……気をつけないと、花椒とか豆板醤とかラー油とかが四川料理並みに入ってる。

 そっちのシュウマイとかが良いんじゃないかな……いや、その隣にある黄色いカラシはめちゃくちゃ辛そうだ。


「私はこれ、ローストポークとアランチーニ、ポルペッティ、フリッタータ、カルツォーネ、ピンチョス、ゼッポリーニ、ラザニア……」


 いや、ちょっと待て、ローストポークとラザニアぐらいしか聞き取れなかった。


 早耶ちゃん、イタリア料理のレストランでバイトしてるから分かるんだろうけど、名前と料理が一致しないんだよね……でも、美味しそうだ、さすがに俺の好きそうなの分かってる。


「えっ、早耶さんすごっ、もしかしてイタリア系の血が入ってるとか?」


 牧くんがそんなこと言ってるけど、お父さんもお母さんも、純日本人だから……どうして、あの二人から早耶ちゃんのような美人が生まれるのか永遠の謎だが、まあ、パーツを見ると、目元はお母さん、髪の毛はお父さんとかだな……いいとこ取りで生まれてきたのか……人類の神秘だな。


「私は……これ……悠二さんのリクエストで……」


 うわー、茜ちゃん久しぶりだなー、しかも保温バッグみたいなのから取り出したのは、お好み焼き、やきそば、たこ焼き……って、粉もんばっかり!?

 保温バッグからケーブルが伸びてるってことは、ただ保温するだけじゃなくて、温める仕様の魔改造が施されてるみたいだ。おそらく……という、絶対、悠二が制作したやつだよね。


「すごいですね、お好み焼きは大阪風と広島風がありますし、このソースの香りが屋台より美味しそうです」


 宿直くんが、感心してるけど、確かに甘いようなそれでいてどことなく酸味の聞いたような香ばしい匂い……これって……


「うん……ソースはオリジナル……」


 やっぱり……っていうか、ソースって普通に作れるもんなんだな。

 これ、めちゃくちゃ食欲そそるけど……悠二、グッジョブだ。


「ごめんなさい、茜のあとだとちょっと出しづらいけど……私は普通の料理を持ってきました」


 天音ちゃんは、お弁当に定番のハンバーグ、卵焼き、アスパラベーコン、タコさんウインナー、ブロッコリー、ミニトマト、はんぺんチーズなんかが彩り豊かに並んでる。

 これって、手作りのお弁当みたいだな……これは、ある意味、別の価値があるんじゃないかな。


「えーっ、かわいー! やっぱり天音ちゃん天使だよ、うちのサークルに天使が入ってくれたよ!」


 夏子ちゃん浮かれているけど、もう、サークルに入った前提なんだな……

 やっぱり、天使なのか……女の子から見ても天使に見えるんだね。


「私は、お母さん特製の春巻きを作ってきました。お姉ちゃんにだいぶ手伝ってもらっちゃったけど……」


 穂乃花ちゃんは、桜さん特製の春巻きだ……やっぱり、桜といえば春、春といえば春巻きなんだな。

 この春巻き、タケノコ、しいたけ、生姜、春雨、ひき肉、長ネギと具だくさんで、皮もパリッとしてて、めちゃくちゃビールに合うんだよな。

 具を炒める匂いからして、食欲をそそられるけど、さらにそれを皮に包んできつね色になるまで揚げるとか、もう、待ち切れないくらい美味しい。

 これが、東京でも食べられるとか、最高だな。


「えーっと、最後に私は料理じゃなくてお酒を持ってきました。ウイスキーと、ジンと、白ワインと……あとは……」


 そう言って、岬さんが、リュックから取り出したのは、


「コーラで割る用のラム酒と、ミルクで割ると美味しいカルーア、そのままでも美味しい梅酒と、杏露酒……」


 リュックから甘い系のお酒がどんどん出てきた。


 しまった、岬さんがリュック背負ってるなんて、お酒が入ってるに決まってるのに、トートバッグに気を取られて気付かなかった。


「うわーすごーい美味しそう」とか「白ワインクーラーボックスで冷やしましょう」とか、二年生(もうすぐ三年生)には大人気だ。


 しかし、この甘いお酒のオンパレードはなんなんだ? マッコリとかも入ってるけど……


 めちゃくちゃ大学生に人気ありそうなの集めてきたな、しかも、飲みやすくて危険なやつばっかりだ。大丈夫かな?


「お酒飲めない人は、おにぎりとかサンドイッチ作ってきたから食べてね」


 といって、三千花がバッグからバスケットを取り出す。


 そうだよね、穂乃花ちゃんも天音ちゃんも茜ちゃんもお酒飲めないから、主食欲しいよね。


「えーっ、三千花先輩、サークル員は文化祭の売上でビールとかサワーとか氷とか買ってきたから、大丈夫だったのにー……でも、すごく美味しそうですね。ありがとうございます!」


 夏子ちゃんが、サークルを代表してお礼を言ってくれる……もはや、俺よりちゃんと部長してるな。

 

 そうそう、サークル員は、買い出しとか場所取りとかクーラーボックス持ってきたりとかのセッティング係だったから良かったんだけど、それでも作りたいって言うからパンの耳を切るのとか手伝ったんだよね。


 彩ちゃんが始まる前からぐったりしてるのは、結構働いてくれたんだな。


 こうして、過去に類をみない、豪華なお花見が始まったのだった。

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