表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

262/317

【第262話】見守りロボット

「ただいまー」


「おかえりなさい夕花ちゃん、学校どうだった?」


 学校から帰ってきた夕花を、台所に居た三千花が迎える。


「うーん、疲れたー」


 そう言って、ランドセルを下ろす夕花は、確かに、疲れた表情をしている。


「おかえり夕花、バッテリーが切れそうなのか?」


 アンドロイドなんだから、疲れたって言っても、筋肉が披露するわけじゃないし、バッテリーが減るくらいの変化しか無いはずなんだよな。


「ううん、バッテリーは結構残ってるよ、疲れたのは精神的にだね……まあ、充電はしとくけど……」


 そう言って、壁のコンセントに充電パットのプラグを差して、体育座りで充電を始める夕花……

 AIの精神的疲れってなんだ? よほどの無理難題じゃ無い限り、小学生の会話には応えられると思うんだけど……


「もしかして、いじめられたとか?」


「それが全然……むしろ問題児が問題を起こさないレベルだったよ」


 問題を起こさないなら”問題児”じゃないのでは?


「なにそれ、平和なクラスだったってこと?」


「うーん、みんな転校生を!贔屓ひいきし過ぎなんだよ……目立たないように小学生に溶け込もうと思ったのに、もはやそんなことは不可能だったよ」


「アンドロイドなのに、目立ってどうするんだよ……」


「そうなんだけど……ああ、見守りロボットのお手本になる夢が……」


 なにその夢? 初耳なんだけど。


「見守りロボットって何?」


「この筐体の設計コンセプトだよ、高齢者が孫くらいの年齢をモデルにした見守りロボットと一緒に暮らしてれば、離れて暮らしてる家族も様子が分かって安心でしょ」


「介護用ロボットじゃないの?」


「介護が必要じゃない高齢者向けだね、下手に介護できちゃうと、自分で動かなくなっちゃうでしょ」


 なるほど、あくまで見守るだけなら、介護されることによって老化が進んでしまうのを防げるのか……むしろ、孫の面倒をみることで、普段より良く動くようになって、老化を防止することができるかもしれないな。


「でも、どうして目立つと見守りロボットのお手本になれないんだ?」


「ごく普通の小学生がするような行動をしないと駄目なんだよ、孫くらいの子だったら、普通にしてても可愛いのに、出来が良かったりしたら過度な期待を抱いちゃうでしょ」


「なるほど、あくまで見守りロボットの本分を超えないということか……」


「そういうこと……まあ、普通の子が、どんな風にしてるかは観察するようにしてるから良いんだけど、できれば自分も「ザ・普通の小学生」っていうくらい普通にしてたかったんだよね」


 普通の小学生は「ザ・普通の小学生」になろうとは思わないけどな。


「とにかく、色々やらかしたってことか……」


「夕花のせいじゃないんだよ、先生とか、達也っていう問題児の子とかが、話を大きくしちゃって」


 話を大きくしちゃったってことは、きっかけは自分なんじゃないかって思ったけど、まあ、言ったってどうにかなることじゃないから、言わないでおこう。

 それにしても、その「達也」っていう問題児が気になるんだけど……


「その達也っていうやつが、夕花を困らせてるのか?」


「ちょっと、そんなんじゃないよ、掃除当番ではむしろ助かったし……って、お兄ちゃん学校に乗り込んできたりしないでよ、シスコンの兄がいるとか、頼むから目立つ要素追加しないで!」


 ちょっと、男子の名前が出てきたから、警戒心MAXになっちゃったけど、それをシスコンとか言われると凹むんだけど……いや、こういうのってシスコンなのか? 兄として当然だと思うんだけど。


『そう言われると、シスコン要素ありますね、私より夕花の方を可愛がってますし……』


 陽花にまでそう言われてしまうが、ずっと姉貴と二人兄妹だったから、シスコンという言葉にはものすごい抵抗がある。


「そんなことない、ただ心配性なだけだ」


「そういえば、お義姉さんもいつも涼也のこと心配してるわよね、それって……」


 お願いだ、三千花……それだけはやめてくれ、姉貴が実はブラコンだったとか、100万回転生しても絶対に認めたくない。


『涼也さんが、妹に執着するのにはそういう理由があったんですね……』


「お兄ちゃん大好きだけど、学校には来ないでね……」


 いやいや、確定なのかそれ……


 学校から帰ってきたら、いきなり男子の名前が出てきたから心配になっただけなのに……


 まあ、そういうのをシスコンって言うのか……気をつけよう……


* * *


「充電終わったよ」


「早いな、あんまり減らなかったってことか」


「そうだね、今日は座学の授業ばっかりだったのと、掃除当番も力仕事とかは男子がやってくれたから全然余裕だったよ」


 また男子の話がでてくるのか……

 

 だがここは平常心でスルーしよう。


「体育とかはどうするんだ?」


「アレルギーで給食食べられないことになってるから、その辺の理由で、激しい運動とかは見学かな」


「なるほど、お昼が食べられないから、激しい運動をすると6時間目までもたない、って言えば良いのか」


「そうだね、あるか分かんないけど、持久走とかはやっても意味ないし」


「意味がないことはないんじゃないかと思うけど……って意味ないの?」


「だって、普通の子だったら走れば筋肉ついたりするかもしれないけど、この体じゃ、バッテリーが減るだけで、成長したりもしないから」


 そりゃそうか……そう考えると何か急ぎの用事があって走るならともかく、運動のためだけに走るのはアンドロイド的には全く意味がないんだな。


「そっか、じゃあ体育は見学だな」


「授業出ても体が育たないからね、ダンスくらいならやってもいいけど」


「運動会とかでも、出られそうなのがそれくらいだもんな」


 運動会なんてバッテリー切れの最たる理由のひとつだからな、クラス全員のダンスとかに出てお茶を濁すしかないな。間違ってもリレーの選手なんかになってはいけない。


「それに、夕花が居るせいで、他の子の成績が下がっちゃったりすると良くないと思うんだよね、だから平均レベルで過ごさないと……」


「そうか、他の子の活躍の場を奪っちゃだめだってことだな」


 ぶっちゃけ、小学校で運動が出来たり成績が良かったりすると、異性にもモテてしまうので、ここは兄としても大人しくしてもらって良いと思う。


「……今、夕花がモテない方が安心って思ったでしょ?」


「い、いや、何のことだろう……」


 なぜに、そんなに鋭いんだ? もしかして心の声が聞こえてる?


「分かりやすいわよね……でも良いんじゃない、そんなに心配してくれるお兄さんが居てくれて」


 三千花にも丸分かりなのか……でも、普通このくらい心配するよね?


「大丈夫だよ、夕花も涼也お兄ちゃん大好きだから!」


 そういって、ぎゅっと抱きついてくる夕花。


『ちょっと、ズルいですよ夕花、心配させるようなことばっかり言って、涼也さんの気を引こうなんて』


「えーでもホントのことしか言ってないし……それに、お兄ちゃん大好きだけど、絶対学校には来ないでね」


 大好きって言ったり、拒絶したり……ものすごくヤキモキさせられるな……これ、小学生の男子とかだったら、一発で好きになっちゃうんじゃないの?


 一抹の不安を覚えながらも、家では甘えてくれる夕花に心を掴まれてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ