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【第256話】職務質問

「もう降ろしても良い?」


「そんなに重いですか?」


 肩車自体がいやなわけじゃなくて、ちょっと目立ちすぎるんだよね、この状況。


「いや、ちょっと恥ずかしいし、あんまり目立ちたくないんだよね」


 平日に学校にも行かずにウロウロしてるっていうのが、転校することになってるにしても、まずいんじゃないかと思うんだよね。

 もしお巡りさんにでも職質されたら、なんて答えればいいのか正直さっぱり分からない。


「急にどうしたのですか? 大丈夫ですよ、こんなに仲良さそうにしてるんですから」


「いや、今はネットで知り合って連れ回したとかで逮捕されたとかっていう話もニュースで聞くし、どんなに懐かれてても怪しいところがあったら駄目なんだよ」


 陽花のつもりで接してたから、大丈夫かもって思ってたけど、傍から見たら、小学生を学校にも行かせずに連れ回してるようにしか見えないし、今の御時世、そんなことしたら社会的にアウトだ。

 まあ、AIは最新のニュースとかには疎いことがあるので、陽花が楽観視するのも分からないでもないけど。


 と、そんなことを思っていたら、心配事というのは現実になるもので……


「君たち、学校に何か用事でもあるのかい」


 制服を着たおじさんに声をかけられた……そう、お巡りさんだ。


「えーっと、ちょっと妹が学校を見たいって言うので連れてきました」


「妹さん? 小学生かな? 学校には通ってないの?」


「はい、最近引っ越してきて、4月からこの小学校に通うことになってるんですが……」


「4月から? もう引っ越してきているんだよね、すぐに転校できない理由でもあるのかな?」


「えーっと、一緒に住む姉がまだ引っ越せていなくて……僕が預かっている状態なので……」


「なおさら、学校に通ったほうが良いんじゃないかな? 本当にこの学校に転校することになっているのかい?」


「えーっと、はい、そうなっているって聞いているんですが、手続きをしているのは僕じゃないので……」


「お父さんかお母さんが手続きをしたのかな? 学校に聞いたら分かるかい?」


「えーっと、学校の誰に聞いたら良いかも分からなくて……」


 何か既に犯人扱いのような質問のされかただ、もしかして交番に連れて行かれたりするのか?


「あのー」


 突然現れたお姉さん……誰だろう、どこかで見たような……


「もしかして、忍野さんですか?」


「えっ、はい、そうです! もしかして学校の関係の方ですか?」


「はい、私、5年生の担任をしています柊木と言います」


「あっ、じゃあ、4月から夕花がお世話になる?」


 今、5年生の担任ってことは、4月から夕花が転入する6年生の担任になるってことだよな。


「そうです、私のクラスに入ってもらうことになってるんですよ」


「そうだったんですね、よろしくお願いします!」


 なんと、夕花の担任の先生だったらしい。どこかで見たと思ったら、さっき体育で鉄棒を教えてた先生だ。こっちに気づいて、授業が終わったから来てくれたのか。


「あー、ちゃんと学校と話は通ってたんだね。では、続きは先生とどうぞ、私はこれで失礼しますね」


 お巡りさんは、先生の話を聞くと警戒を解いてくれたようで、そのままにこやかに立ち去ってくれた……

 良かった。なんとか交番に連れて行かれなくて済んだ……


「すみません、夕花が学校を見たいっていうので連れてきたんですが、お巡りさんに質問されてしまって」


「ごめんなさい、夕花がわがまま言ったから……」


「そんなことないよ、夕花ちゃん! 新しい学校が楽しみだったんだよね、学校が見たいなんて偉いね夕花ちゃん!」


 先生が褒めてくれる……うーん優しくて良い先生だ。


「そんなに、学校が気になるなら、4月からじゃなくてもいいんだよ、明日から学校に来ない?」


 えっ、それはどうなんだろう? ランドセルとか教科書とか、なにも用意出来てないし。


「う、うん、じゃあ、明日から……」


「良かったー! 先生、明日から夕花ちゃんと一緒にお勉強できて嬉しいよ! よろしくね!」


「うん、よろしくお願いします」


 おいおい、陽花、なぜ俺や夕花の意見を聞かずに勝手にOKするんだよ。


「えーっと、でも先生、まだランドセルとか教科書とかこっちに届いて無くて……」


「大丈夫ですよ、5年生の教科書は貸出用のものがありますから、筆箱とノートだけ持ってきてくれれば……もし、それも無かったら、見学だと思って、授業を聞いてくれるだけでも良いですよ」


「は、はい、じゃあお願いします」


 こうして、夕花に一言の相談もなく、明日から学校に行くことになった。


* * *


『ちょっとお兄ちゃん! どうして、勝手に決めちゃうのよ! どうするの明日!』


「ごめん、なんか、断れる雰囲気じゃなくって……」


 先生の熱意に押されて、つい、返事をしてしまった。


『お姉ちゃんも、どういうつもりなの! 学校に行くの夕花だよね?』


「ごめんなさい、夕花を学校に行かせないと、涼也さんが捕まってしまうと思って……」


「えーっと、それは誤解が解けたから、明日からは家にいればよかったんじゃない?」


「でも、義務教育だから学校に行かないといけないんですよね」


 まあ、普通はそうなんだろうけど、今まで行ってなかったのに、今更4月まで行かなくても変わらないよな。


「普通は、勉強できる機会が減っちゃうから、なるべく引っ越したらすぐに転校するんだろうけど、そもそも、小学校の勉強とか授業受けなくても分かるんじゃないかな」


 中学生に教えられるレベルだし……


「もしかして、4月まで行かないという選択肢もあったんですか?」


『むしろ、それ一択だよ! どうすんの? 入れ替わったまま行くの?』


「それは元に戻そう。もう一回入れ替えるスクリプトは作ってあるから、明日の朝実行する設定にしてもらえれば、元に戻せるから」


「ええっ、それでは涼也さんと一緒に居られるのは今日だけなんですか!?」


『それは、自業自得だよ! お姉ちゃんが入ったまま学校行っちゃったら、おかしなことになるでしょ! 記憶をコピーしたりしないといけなくなるよ』


 それは整合性取るのが難しくなるからやめて欲しい。それに、途中でしゃべり方が変わったりしたら、友達から変に思われるだろうし……


「諦めろ陽花、こうなったら、ちゃんと夕花にバトンタッチして、学校に行ってもらうしかないから」


「もしかして、私、やらかしましたか?」


「そうだな、準備しなきゃいけないことが結構あったのに……」


 俺も肩車して欲しいとか言われて、してあげちゃったのがいけなかったんだよな……多分、あれでお巡りさんにも見つかったし、先生からも見えちゃったんだろうな。


「ごめんなさい、なんてことをしてしまったんでしょう」


「まあ、俺ももう少し目立たないように気をつければ良かったんだけど……」


 聡さんとかにも説明しないといけないけど、まあ、俺も「はい」って言っちゃったからしょうがないよな。


『もういいよ、学校に行きたくないわけじゃないから……それに、何か足りなくても、急に明日から行くことになったからっていう言い訳もできるし』


 そうだよな、準備ができてなくても許される状況だから楽ではあるか。


「じゃあ、許してくれるんですね」


『許すも何も、しょうがないでしょ、行くしか無いよ』


「まあ、その代わり、せっかくの入れ替わりも今日だけだから、それでチャラだな」


「ああ、そうでした! 買い物! 涼也さんと買い物に行って、美味しい晩ご飯を作るんです!」


「小学生が出歩いててもおかしくない時間帯じゃないといけないから、夕方になるまで待ってくれ」


 そもそも、午前中にフラフラ出歩いてたのがいけないんだよな。

 まあ、職質されたけど、逮捕もされなかったし、アンドロイドだってばれなかったから、良かったとしよう。


 担任の先生にも会えたし、結果的にはそんなにマイナスなことはなかったんじゃないかな。

 夕花には頑張ってもらうしか無いけど……


 こうして、急遽、明日から小学校に行くことになってしまったのだった。

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