連絡係りのはったん
あひるランドでのダニ騒動はわずか一夜にして収束した。
はったんは悠々と下水道を通過し、島を隔てるベニヤ板をくぐってあひるランドに戻った。
「ダニは見えなくなったな」とつぶやきながら、アヒル防衛大臣が待つピジョーのアパートへと向った。
「蚤ヶ島新政府は嘘ばかりついてるんだ。『征服計画書』とは全然違う。あひるランドのダニ騒動も知らないふりだ。いまはぼくらも色々と話しをでっち上げて対応してるところだね。心中の探り合いだ」
頷きながらアヒル防衛大臣があひるランドの状況を伝える。
「ダニは一気にいなくなったよ。一旦退却したんだろう。でもあひるランド軍はやはり数が少なすぎる。しかし志願兵はかなり集っているよ。ほとんどがカモメやハト、あとはモグラだけど問題はない。皆には力がある」
はったんが答える。
「でもさ、ダニがぜんぶいなくなったと考えるのは危ないよ。奴らはどこかに残っていてこちらの様子を窺っているとぼくは思う。蚤ヶ島の本来の目的は、このあひるランドを植民地にして住民ぜんぶを奴隷にすることだ」
「おそらくそうだろうな」
アヒル防衛大臣も同じように考えていた。旧政権時代からの軍事に関する専門家だ。状況の裏の裏をみることには長けている。
ダニ騒動が収束すると同時に旧政権のアヒルたちが再び勢力の巻き返しを謀っていることも防衛大臣は感づいていた。しかし彼らの勢力は小さくいまは考えなくてもいいと判断していた。
はったんが再び口を開いた。
「それで、枝子大統領が言うには、多摩の浦の対岸の村で騒動が起こっていて、他の村から攻撃されている。村を助けるためにあひるランド軍の援軍が欲しいらしい。今日、伝えたかったことはこれなんだ」
「援軍? 蚤ヶ島軍と共闘しろということか」
「そう。本当は村でそんな騒動は起こっていないと思うよ。ピジョーが戻ってこないから村について確かなことは分からないけど」
「どういう形での共闘になるの」
「完全に蚤ヶ島政府の指揮命令系統の下に入る。簡単にいうとあひるランド軍が蚤ヶ島軍に吸収されるということだ」
「なるほどね」
アヒル防衛大臣は薄笑いを浮かべ頭を掻きながら続けた。
「枝子大統領に、軍隊の再建は進んでいる。志願兵も整ってきていると伝えてくれないか。喜んで援軍を送るつもりだと。実際どう動くかは、もう少し情報を得てから決めよう」
「そうだね。いま枝子の話しに乗って動いたら、元々少ない軍隊が全滅にされる。じゃあぼくは蚤ヶ島に戻るよ。あまり時間をかけると変に勘ぐられるからね。情報に関しては十分注意してくれ」
「分かってるよ」と防衛大臣は羽根をくちばしで掻きながら笑って答えた。
(つづく)




