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見えない取引

 政策本部会議が開かれていた。ここには政権幹部たちが勢揃せいぞろいしている。新入りのサマンサの自己紹介がひととおり終わり、今日の本題に入った。


 先ず枝子が口を開いた。

「緊急に対応しなければならない問題がふたつほど報告されています。先ずひとつは、今日からここで働いてもらうことになったサマンサからの報告ですが、ベニヤ板の向こう側、私たちの友好国であるあひるランドでダニが大発生して政権機能が麻痺しているとのことです。このままでは国が滅んでしまいかねない状況だそうです。アヒルたちの政権はすでに壊滅しサマンサたちが新たに政権を任されたがどうにも出来ないようです。これを解決しなければならないというのが一点。

 二つ目は、多摩の浦の対岸の村で、分断が生じ、それに乗じて他の村々のものたちが資源を奪おうと村に攻め込んでいるようです。これは私たちの情報部からの報告です。これに対する援軍を求められています。この二つの問題を早急に解決しなければなりません。いずれも友好国でありますし、ともに平和で安定した状態でなければ、この蚤ヶ島にも危険がおよぶことになるかも知れません」

 幹部のひとりがおもむろに手を上げ立ち上がって話し始めた。

「先ずあひるランドのダニ問題の解決が先決ではないでしょうか」

 幹部らみながうなずく。

「あひるランドとは地続きで我々にとっても危険きわまりない。我々はダニのことならよく分かる。真っ先に解決すべきです。一方、村の危機についてですが、まだ情報が足りない。詳しい情報がないとこちらも具体的な作戦が立てられません。どのくらいの軍事力で村を襲ってきているのか。その迎撃、防衛にどれほどの兵力が必要なのか分かりかねます。しかも現在、わが蚤ヶ島は財政が逼迫している実態があります」

「そうね。そのとおりかも知れないわね」

 枝子はそう言い、発言を促すようにサマンサの方を見た。

「村で起こっている混乱について、もう少し詳しい情報はありませんか」とサマンサが質問した。

「村では毎年、八幡様と弁天様のお祭が行われているようですが、これが想定外に拡がってしまったようです。お祭といっても両者の喧嘩に過ぎないものらしいのですが、八幡様側につくもの、弁天様につくものと真っ二つに村が分断してしまったようです。その隙に他の資源の乏しい村々が襲ってきたという分けです。その兵力については先ほど申し上げたようにいまのところ分かりません」

「どうしたらいいのか・・・」

 枝子が溜息をもらした。

 サマンサが立ち上がった。

「あひるランドにも少しですが軍隊は残っています。なんとか連絡を取り村の防衛のために出動させましょう。カモメやハトからなる志願兵も集まってきています。十分ではないかも知れませんが、この蚤ヶ島の、そして村の力にもなると思います。一方であひるランドのダニですが、これはあひるランドの軍隊を整えるためにも、いますぐ駆逐しなければなりません。何より先に解決すべき問題です」とサマンサは訴えた。

 サマンサの発言を受けて枝子が尋ねる。

「この国にはダニも沢山住んでいる。あひるランドのダニ騒動は簡単に収束出来るでしょう。サマンサ、援軍は確かに確保出来るの。出来たとしても、我々の指揮下に入ってもらうことになる。命令統制が乱れないようにね。それでも大丈夫?」

「もちろん、大丈夫です。我が軍は援軍にすぎませんから」とサマンサは幹部みなに宣誓するように言った。

「では、ダニの駆逐を急いで。あとは村に関する情報収集。あひるランドとの連絡はサマンサに任せるわ」


 会議室を出、廊下を歩きながらサマンサは思った。

「エサを撒きやがった。ひとつ、ふたつくわえてみるか。これも交渉だからな」





(つづく)


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