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ピジョーの「しお」
戻らないピジョーを心配しながらサマンサとはったんは、相変わらずあひるランドにあるピジョーのアパートで策をねっていた。
「なんだろう、これは」
「えっ?」とはったんはサマンサが手にしている箱を見た。
サマンサはピジョーが大切にしていた塩の入った箱を見つけたのだ。
ピジョーは、村の子どもらのイタズラで羽根に火をつけられて村を追われ、泣きながら多摩の浦を渡った。そのときの涙が固まってできた塩だった。流したなみだの分だけ塩はあった。
あひるランドで、ドバトであるがゆえに、理由なく虐げられたり、辱められた際には、この塩を取りだしなめた。あのときの思いに比べたら、こんな情けなさや悔しさは何でもないと、涙の塩をなめながら、自分に言い聞かせていたのだ。
「塩のようだね」
「ピジョーが使っていたものだろう」
「しかし、ピジョーは上手く村に着いただろうか」
心配そうにはったんは言った。
「大丈夫だよ、きっと。でもあの『計画書』の内容が村人に知られたら、大変なことになるだろうな。しかし伝えなければ村がやられてしまう。柿太郎やおばあさんたちはいま、どうしているだろうか・・・」
サマンサもまた心細く心配な様子で答えた。
(つづく)




