北野の要塞
丸焦げになって死んでいったピジョーを埋めた。
その「ピジョーの地」にほど近く、なにかが霞んで見えることに柿太郎は気づいた。
「あれは、なんだろう」
その異様な姿にみな恐怖を覚え、とっさに物陰に隠れた。
「俺が見てくる」
蟹は木陰に身を隠しながらひとりでそっと巨大な建物に近づいていった。
「灰だ。これはピジョーのバラック小屋を燃やしたときの灰だ。俺は覚えている」
ピジョーの灰は無造作にこの建物の材料に使われていた。
蟹はさらに外壁で囲まれた建物に近づき中を覗いた。そこでは無数のシラミがゴソゴソと、辺りを警戒しながらも忙しそうに動き回っている様子が見えた。
「シラミだ。すでにここに基地を造っているのか」
蟹は、柿太郎たちが身を隠している物陰に、シラミたちに気づかれないよう、またゆっくりと戻った。
「シラミだ」
蟹は静かに柿太郎と村人たちに告げた。
「ここは、ピジョーの地だ。このままではピジョーの地が奪われてしまう」と柿太郎が言う。
「あいつら、ピジョーの小屋の灰で要塞を造ってやがる。あの灰はピジョーのものだ」
蟹はそう言うと、物陰から巨大で異様な姿を現わすシラミの要塞を眺めた。
そして、北野の谷がすでにシラミに奪われていること、敵はまだ近くにいることを早く村の住民たちに伝えなければと、蟹たちは『征服計画書』を持って村へと急いだ。
(つづく)




