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ピジョーの地

 ドバトのピジョーを背負う蟹を先頭に、何人かの村人がその後に続く。蟹の後ろから村人たちが、また代わる代わる問う。

「ピジョーは死んだのか。どうしてそんな姿になったんだ」

「なぜピジョーは死んで戻ってきたんだ」

 蟹はなにも答えることなく、ピジョーを背負って黙々と歩いた。それが偉大な義務であるかのように、ふらつきながら、転びながら歩いた。


 小屋の跡地に着いたとき、はじめて蟹はふり返り、後についてきた村人たちに言った。

「ピジョーを知らない奴は手を上げろ。ここでたったひとり、悔しさと寂しさにのたうち回りながら暮らしていたピジョーを知らない奴は手を上げろ」

 手を上げるものはいなかった。


 蟹はゆっくりとピジョーを背中から下ろした。

 とても穏やかな顔で死んでいる。すべて終わったんだと。何位でもいい、ピジョーはゴールを切った。走り切ったのだ。かつて幼い手で、ひとりぼっちで立てたバラック小屋の跡地、ピジョーの地に、いま帰ったのだ。

 小屋が燃やされた際に出た灰はなくなっていた。地面にみなで、流れ出る涙も拭わず穴を掘り、安らかに眠る丸焦げのピジョーを埋めた。


 柿太郎が木片を拾って目印を立てた。


 『汚いドバトのキチガイ・ピジョー。我らが誇り高き敗残者、ひとりぼっちのビンボー・ピジョー、ここに眠る。享年十二歳』




(つづく)



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