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妖怪派遣業  作者: 蜂兎類
9/10

第九魔 人間社員愚痴大会

とある週の金曜日の夜


 百鬼スタッフサービスから徒歩数分の場所にある居酒屋『赤ちょうちん福助』の座敷では人間社員だけの飲み会が開かれていた


 妖怪社員は参加禁止、理由は単純である。愚痴の内容が主に妖怪社員に対してだからである。


 集まったのは『真壁修司まかべしゅうじ♂28歳』『 相馬律そうまりつ♂28歳』『三門慧みかどけい♂32歳』『御厨真みくりやまこと♂41歳』『青木タケル♂30歳』『瀬良アキ♀24歳』『桐生ナツメ♀19歳』『神代柚葉かみしろゆずは♀35歳』


 全員が妖怪社員に振り回される側の人間達だ、つまり今宵の飲み会は、定期的に開催される百鬼スタッフサービス被害者の会である


「乾杯」


 ジョッキがぶつかる.全員が最初の一口を流し込む。そして五秒後「聞いてくれ」相馬が口火を切る。


 相馬が聞いてくれと言う時は大体ろくな話ではない。


「またつゆさんか」修司が聞く。


「またつゆさんだよ」


 相馬は即答した。


相馬律「俺な この前特殊案件班の書類作ってたんだよ、半日かけて」


三門慧「あ〜あそこのか、基本全てややこしいよな、怪異のレベルが段違いなやつだ」


瀬良アキ「それってあれですか?案件によっては作成した書類も怪異が移って文字化けしたりするレベル」


相馬律「そう、案件によっては作成した書類も文字化けしたりするレベルで、それでやっと完成したんだ」


一同「うん」


相馬律「そう、完成した瞬間にな」


 相馬は遠い目になった


相馬律「つゆさんが来た、もうすでに目は虚ろだったんだ」


 一同爆笑


真壁修司 とある週の金曜日の夜


 百鬼スタッフサービスから徒歩数分の場所にある居酒屋『赤ちょうちん福助』の座敷では人間社員だけの飲み会が開かれていた


 妖怪社員は参加禁止、理由は単純である。愚痴の内容が主に妖怪社員に対してだからである。


 集まったのは『真壁修司まかべしゅうじ♂28歳』『 相馬律そうまりつ♂28歳』『三門慧みかどけい♂32歳』『御厨真みくりやまこと♂41歳』『青木尊あおきたける♂30歳』『瀬良アキ♀24歳』『桐生ナツメ♀19歳』『神代柚葉かみしろゆずは♀35歳』


 全員が己の人生で臨死体験を経験しており、紆余曲折を経て百鬼スタッフサービスに入社した者達、そして全員が人間との妖怪との常識が違いすぎるため、妖怪社員に振り回される側の人間達だ。


つまり今宵の飲み会は、定期的に開催される百鬼スタッフサービス被害者の会である


「乾杯」


 ジョッキがぶつかる.全員が最初の一口を流し込む。そして五秒後「聞いてくれ」相馬が口火を切る。


 相馬が聞いてくれと言う時は大体ろくな話ではない。


「またつゆさんか」修司が聞く。


「またつゆさんっすよ」


 相馬は即答した。


相馬律「俺な この前特殊案件班の書類作ってたんすよ、半日かけて」


三門慧「あ〜あそこのか、基本全てややこしいよな、怪異のレベルが段違いなやつだ」


瀬良アキ「それってあれですか?案件によっては作成した書類も怪異が移って文字化けしたりするレベル」


相馬律「そう、案件によっては作成した書類も文字化けしたりするレベルで、それでやっと完成したんだ」


一同「うん」


相馬律「そう、完成した瞬間にですね」


 相馬は遠い目になった


相馬律「つゆさんが来た、もうすでに目は虚ろだったんだ」


 一同爆笑


真壁修司「もうダメじゃねぇか」


青木尊「俺もそう思った」


神代柚葉「その日は何持ってたの?」


相馬律「缶ビールっす、両手に」


「終わった」

 

満場一致の意見だった。お酒二刀流の時はつゆが絶好調の証だ。


相馬律「でな、俺の肩叩きながら言うんすよ『相馬くんって本当に真面目よれぇ』ってね」


相馬律「『どれどれ、ちゃんと出来ているかチェックしてあげれれえわ』って」


真壁修司「嫌な予感しかしない」


御厨真「呂律まわってないつゆさんとか一緒にいたくない」


 そして相馬は天井を見上げる。


相馬律「その直後につゆさん缶ビール倒した」


 一同爆笑


相馬律「しかも、俺が慌てて書類持ち上げたら『あっ、濡れちゃったね。ならもう飲もう」


 一瞬静寂


 そして座敷が揺れるほど笑いが起きた。


御厨真「意味分からん、ならってなんだよ」


真壁修司「理屈が成立してねぇ」


 相馬は頭を抱えて「その後、つゆさん寝たんすよ?俺のデスクの横でげろ吐かれたら困るから俺が移動する羽目になりましたよ」


真壁修司「だろうな」


相馬律「で、俺がことの顛末を報告するはめになったんすけど、もちろん怒られた」


三門慧「そこで怒られんのは理不尽な気がするな」


相馬律「『大事な書類に酔っ払ったつゆを近づける方が悪い』って」


三門慧「マジ理不尽」


「本人は覚えてないからな、何一つ」


 一同「だろうな」


 青木が腹を抱えて笑っていたが突然真顔になった


青木尊「俺も聞いてほしい」


真壁修司「どうした」


青木尊「俺まだ入社して半年なんだよ、普通の会社で普通の事務職だと思ってたんだよ」


真壁修司「うん」


青木尊「確かに名前は変だよ?でも実際に妖怪がいるなんて思いもしないじゃん?」


真壁修司「うん」


「初出勤の日に、社長に挨拶しに行ったんだよ。そしたらな」


 青木はジョッキを握り、震えながら言った。


青木尊「腕から目が生えてた、いまだに慣れねえよ」


 爆笑


真壁修司「あれで社長だからな、俺も最初に会った時の衝撃は忘れないよ」


青木尊「見た目インパクトありすぎるからな~。しかも俺に聞くんだよ『青木くん この目充血してないかな』どの目だよ、と思わず突っ込んでしまったんだ」


青木尊「そしたら『全部見て』って、二十分かかったぞ」


 座敷が笑いに包まれる


真壁修司「眼科かよ」


青木尊「途中からどこまで見たか分からなくなったからな、こっちの目が充血するわ」


 御厨が笑いながらジョッキを置く


御厨真「俺は轟さんかなぁやっぱり」


真壁修司「あの人、いや妖怪化か。はまだ常識がる方じゃないか?」


御厨真「いやね、この前クレーマー案件に同行したんだ、なんでもはなからイチャモンつけられてきてたみたいでさ。そこの社員が相手の事務所に呼び出されたんだと。相手はとてもじゃないが堅気には見えなかったんだ」


御厨真「相手はめちゃくちゃ怒ってた。とてもじゃないが堅気には見えなかったし、明らかに親分さんみたいな人もいてさ、チンピラみたいなのが机叩きまくってた」


御厨真「そこに俺たちが到着したんだ」


御厨真「でな、真っ先に轟さんが土下座したんだよ、そしたらさ」


御厨真「その事務所の床が割れた」


 爆笑


真壁修司「何でだよ」


御厨真「知らねぇよしかも謝罪した後のあと顔をあげてな『貴様の怒りは理解する』『だがその怒りで人生を浪費するな』『まず座れ』ってな具合に説教が始まった」


 一同大爆笑


桐生ナツメ「クレーマーどうなったんですか?」


御厨真「最終的には轟さんをオヤジと崇めて『一生ついていきます』ってそこの親分みたいな人に言われていた」


真壁修司「手下が出来上がっちゃったよ」


 三門が焼き鳥を食べながら苦笑する


三門慧「俺はサラさんかな」


真壁修司「おっ」


三門慧「最近の事なんだけどこの前報告書頼んだんだ、金曜日まで期限だからゆっくりでいいからねって」


「うん」


三門慧「火曜日に完成したっぽいの」


御厨真「優秀じゃん」


三門慧「提出してこない」


御厨真「なんで」


三門慧「待った方が完成度が上がりますって」


 爆笑


真壁修司「ワインかよ」


「しかもな、期限過ぎても出してこない」


 三門が頭を抱える


三門慧「なんでだよ」


「『私はもっと待ちましたから』って。知らんし」


 全員笑い崩れた


 そしてナツメが机を叩く


桐生 ナツメ「私もある、マリ先輩です」


 一同「あー」


 納得だった


桐生 ナツメ「百鬼スタッフサービスの一日って動画作ったんですけど、それが大好評だったんです」


桐生 ナツメ「社長映っちゃったんです」


桐生 ナツメ「百目鬼だから目がいっぱいあるじゃないですか?こっちはもうそれに見慣れているけどモザイクかけ忘れてしまいまして」


桐生 ナツメ「フェイクなのか心霊動画なのかでネットがめっちゃ炎上したんですよ」


真壁修司「あの人くらいだよね、会社で人間の姿に全く擬態していないの」


桐生 ナツメ「マリ先輩って仕事出来るんですよ、仕事はめちゃくちゃできるんですけどやっぱり妖怪なので、どこまで言っていいか分かってないんですよね」


桐生 ナツメ「そして毎回炎上して毎回専務に怒られています。なぜか私も」


真壁修司「仕事出来るポンコツってこっちに余波来るから怖いよね」


 話は止まらなかった


 酒が進むほど愚痴が増える


 全員がそれぞれ妖怪達に振り回された記憶を持っているからだ


 そして自然と話題は女性妖怪社員へ移った


御厨真「しかしよ、うちの女性陣みんな可愛いよな」


「うちの女性陣みんな可愛いよな」


 男達が頷く


三門慧「それは認める」


瀬良アキ「専務とても綺麗だしイケメンだし」


三門慧「サラさんも美人だ」


桐生ナツメ「マリ先輩可愛いし」


相馬律「つゆさんも黙ってれば美人っすよね」


真壁修司「しゃべらずにアルコールが入ってなければな」


 爆笑


青木尊「でもやっぱり冬華さんだろ」


 その瞬間


 全員が頷いた


「まあな、レベルが違う」


「歩いてるだけで空気変わる」


「初めて見た時本気で芸能人かと思った」


「俺も」


 皆が口々に評価する。


青木尊「正直人生で見た中で一番綺麗だった」


 全員頷く


 そしてアキがニヤニヤしながら修司を見る


青木尊「そういや修司」


真壁修司「なんだ?」


青木尊「気になる妖怪社員とかいないの」


真壁修司「いない」


 即答だった


青木尊「早い」


三門慧「いや待て、お前一番仲良いじゃん、女性陣全員と仲良いだろ?」


 修司はしばらく考え、そして真顔で言う


真壁修司「可愛いんだぞ、確かにみんな可愛い、でもな」


 ジョッキのビールを飲み干し置く


真壁修司「つゆさん見たらまず酔っ払いが浮かぶ」


 爆笑


真壁修司「俺な、噴水に飛び込んだつゆさん回収した。駅員と終電で喧嘩したつゆさん回収した。店内に雨降らせて代わりに店長に謝った。財布忘れて立て替えた。スマホ失くして探した。飲み代を何度も経費で落とそうとするのを止めた」


 修司が指を折る


真壁修司「可愛いより先に介護が来るんだよ」


 座敷が笑いに包まれた


真壁修司「冬華さん見ても、綺麗だなより先にツララ降るなって思う」


 爆笑


真壁修司「サラさん見たら、今日はいつまで待つのかなって思う」


真壁修司「マリ見たら大体燃えてるし、アザミさん笑顔怖いし、なぜかつゆさんの尻拭い押し付けられるし」


青木尊「分かる」


真壁修司「だから恋愛感情になる前に、保護者感情が来るんだよ。いや、しつけが出来てないペット……?」


青木尊「それだ」


 その瞬間だった。ガラッ、個室の扉が開く


「楽しそうね」


 聞き覚えのある声に全員が固まる。そこにはビールのピッチャーを持ったつゆが立っていた。


真壁修司「なんでいるの」


雨坂つゆ「酒有る処に我有り」


真壁修司「世紀末の覇者か」


雨坂つゆ「飲み会に私を呼ばないとはいい度胸してるじゃない」


真壁修司「今日は人間社員の妖怪社員に対しての愚痴大会だから帰って下さい、退散退散」


雨坂つゆ「ぐっはっは、我を追い出したければ強力な結界をはるがよい」


真壁修司「ラスボスか、そんなん貼れたら仕事で常に貼っとるわ」


 どうやら愚痴大会第二ラウンドが始まるらしい。


百鬼スタッフサービス日報


案件名

人間社員愚痴大会


結論

妖怪社員は可愛い


だがそれ以上に手が掛かる


修司の感想

恋愛感情より保護者感情の方が育つ


百鬼スタッフサービス

今日も人間社員は元気に胃を痛めています

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