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どうせ俺はもう可愛くないし  作者: 葉藻ごま油


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2 ポイ捨てされた俺

 中学を卒業した俺と宗雪は、同じ高校に進学した。家から自転車で通える距離にある、そこそこの進学校だ。


 偶然にも志望校が同じだと知った俺は、宗雪との高校生活を楽しみに受験勉強を頑張った。別に付き合ってるわけでも、プライベートで遊ぶ友達ですらないのにだ。



 そして俺も宗雪も無事に第一希望の高校に受かった。しかし俺の思い描いていた楽しい高校生活は訪れなかった。俺は捨てられたのだ、あの宗雪という男に。


 理由は明快、俺の身長がすくすくと伸び、もう美少女じゃなくなったからである。受験勉強中に身体のあちこちが痛かったのは成長痛だったのだ。


 俺の身長は高校入学時には170センチを越え始め、一年の終わりには176センチまでになった。おそらく180ちょいある宗雪よりは小さいが、俺に以前のような可愛らしさはない。


 宗雪が俺に素っ気なくなったのは、俺が173センチとなった夏の初めごろだった。やつは俺に会いにくるルーティンを廃し、廊下ですれ違っても軽く会釈して足早に立ち去るようになった。


 頭を殴られたようなショックだった。それに会釈って何だよ。


 先輩から俺を守ってくれた、あの宗雪はもういない。俺はやつに惨めにポイ捨てされたのだ。そしてこうなって初めて、俺の気持ちは疑似などではなく本気の恋愛感情だったことを自覚したのである。


 



 失恋から抜け殻のように過ごした一年が終わり、二年のクラス替えは俺の中で修羅場となった。


 俺をゴミクズのように捨てた男・宗雪と、俺を目の敵にしている女子の笹山さんと同じクラスになってしまったからである。


 笹山さんと俺は一年の時も同じクラスだった。小柄で可愛く、snsで学校一のフォロワー数を誇る、ちょっとした有名人だ。

 

 彼女と俺はクラスで一緒に行動するグループの仲間という感じで、学校外でも遊ぶけど一対一では遊んだことはなかった。


 何度かデートに誘われたが、その時の俺は宗雪に捨てられたショックと怨嗟の念に飲み込まれていて恋愛どころじゃなかったため丁重にお断りしていた。


 俺のつれない態度に笹山さんは怒らなかった。彼女には俺と付き合うよりも、顔面強めな俺との写真や動画をインプ稼ぎの一環としたい目論見があったのだ。


 だが俺はそれにも乗り気じゃなかった。


 中学の最後らへんで先輩にチアコスさせられた情報が校内で拡散して問題になり、教師から事情聴取されたり、高校で厳重注意を受けた先輩が教師に連れられて謝りにきたりした。


 ただでさえ可愛いことで知られていたのに更に噂の的となってしまった俺は、中学時代のその一件が必要以上に広がると面倒なので、高校ではなるべく目立たず過ごしたかったのだ。


 だから自分のsnsには爺ちゃんちで飼ってる柴犬の豆太郎の写真ばかりを載せ、人の写真には極力写り込まないよう心がけていた。ダンス動画などもってのほかだ。


 だがsns女王の笹山さんはしつこく食い下がってきた。折れた俺は彼女と何度かツーショ写真を撮った。それがカップル写真としてバズった当初、彼女はご機嫌となり俺達は周りから付き合ってる扱いされた。


 ところが『彼氏のほうが美人』というコメントが次第に増えていき、俺達の写真が『彼氏のほうが美人なカップル』として笹山さんの意図せぬ方向へバズったことで、彼女の怒りを買ってしまったわけである。


 


 そして今──俺は始業式がもうすぐ始まるからそろそろ体育館に移動しなければならないというこの時に、俺を捨てた男・宗雪と俺を憎む女子・笹山さんとの三人で、教室に取り残されている。


 最初に「桜ちゃん」と宗雪に呼びとめられた俺が立ち止まり、そこへ「川瀬くん、同じクラスなんだ〜うれしい♡」と笹山さんがカットインしてきた形だ。川瀬は宗雪の名字である。どうやら笹山さんは宗雪をロックオンしているようだ。


 宗雪は俺と笹山さんを交互に見てから、ふっと切なげな顔をしてこう言った。


「桜ちゃん……彼女と同じクラスになれてよかったね。二人は付き合ってるんだよな」


 俺と笹山さんが同時に「「は? 付き合ってないし」」と言ったので、宗雪はびっくりしていた。


「え……? 桜ちゃんと笹山さん、カップル写真でバズってたよな……? みんな、二人が付き合ってると思ってたけど」

「写真は撮ったけど、笹山さんとは付き合ってない」

「そうだよ。桜くんはただの友達だから」


 友達どころか俺は彼女の憎悪の対象だ。


「そうだったのか……」


 宗雪の誤解が解けたらしいところで「お前ら、もうすぐ始業式が始まるぞ。早く移動しろ〜」と廊下から教師に注意され、話はそこで一旦うやむやとなった。


 

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