第12話:初激突
「……次は、本気でいくわ」
玲奈の言葉が、頭の奥に残っている。
モニターに映るUSD/JPY。
静かだ。
だが、それは“何も起きていない”静けさじゃない。
「……来るわね」
東條凛が呟く。
「……ああ」
神谷恒一は短く答える。
呼吸が、少しだけ浅い。
だが、視界は冴えている。
「……鑑定」
【USD/JPY】
上昇確率:50%
短期変動:極不安定
リスク:極高
「……」
どちらでもない。
つまり。
「……完全に“読ませない動き”だな」
「ええ」
凛が頷く。
「向こうも同じことができるなら」
「確率は意味を持たない」
「……」
純粋な読み合い。
その時。
チャートが動く。
151.20
151.80
152.40
「……」
一気に持ち上げる。
「……強いな」
「……いや」
首を振る。
「……速すぎる」
「……?」
「自然じゃない」
「……」
「見せてる」
さらに上がる。
152.80
153.40
「……」
買いが増える。
板が厚くなる。
「……」
だが。
「……揃いすぎてる」
「……」
凛が静かに聞く。
「……罠?」
「……ああ」
「入る?」
「……」
一瞬、迷う。
だが。
「……来るな」
チャートが止まる。
153.50
153.45
「……」
空気が変わる。
「……ここだ」
「ショート」
ポジションを持つ。
その瞬間。
反応。
153.80
「……っ」
逆に上がる。
−800万
「……!」
速い。
反応が。
「……読まれてる」
凛が呟く。
「……ああ」
玲奈。
こちらのエントリーに合わせて動かしている。
「……」
だが。
「……まだだ」
次の瞬間。
崩れる。
153.10
152.30
151.50
「……!」
一気に落ちる。
+1200万
+3000万
+4800万
「……」
押し返した。
だが。
終わらない。
151.50
151.80
152.20
「……!」
再び上がる。
「……二段構えか」
凛が呟く。
「……」
恒一は、画面から目を離さない。
「……これは“返し”だ」
「……?」
「本命は、そのあと」
チャートが上がる。
152.50
153.10
「……」
「……今だ」
「ショート追加」
ポジションを重ねる。
「……!?」
凛の目が見開く。
「そこ!?」
「……ここが終点だ」
次の瞬間。
崩壊。
152.30
151.40
150.80
「……!!」
一気に落ちる。
+6000万
+1億2000万
+1億8000万
「……」
空気が変わる。
完全に、流れを掴んだ。
「……ここで利確」
ポジションを閉じる。
結果――
+1億9500万。
「……」
凛が、ゆっくり息を吐く。
「……勝ったわね」
「……」
だが。
恒一は、首を振る。
「……いや」
「……?」
「……まだ終わってない」
その瞬間。
チャートが“歪む”。
150.80 → 151.60 → 150.20
「……!?」
凛の表情が変わる。
「……なにこれ」
「……」
恒一の目が、細くなる。
「……遊ばれてるな」
「……?」
「……あいつ」
その時。
別モニターに表示。
「楽しい?」
「……」
玲奈。
「……」
恒一は、わずかに笑う。
「……ああ」
「最高だ」




