第13話:初敗北
「……楽しい?」
玲奈の文字がモニターに残っている。
神谷恒一は、その画面を見たまま動かない。
さっきの勝負。
+1億9500万。
数字だけ見れば大勝ちだ。
だが。
「……」
違う。
「……勝ってない」
小さく呟く。
東條凛が反応する。
「……どういう意味?」
「……」
視線をチャートに戻す。
150.20
150.60
150.10
「……」
動きが軽すぎる。
「……さっきの最後」
「……」
「完全に遊ばれてた」
「……」
凛の表情が変わる。
「……つまり?」
「……本気じゃない」
その瞬間。
チャートが動く。
150.10
150.80
151.40
「……!」
一気に上昇。
「……来たな」
「……どうする?」
「……」
恒一は画面を凝視する。
「……」
違和感。
だが。
「……」
今度は違う。
「……重い」
「……?」
「さっきとは違う」
「……」
「今度は本気で上げてる」
さらに上がる。
151.80
152.40
「……」
「……ロング」
ポジションを持つ。
その瞬間。
わずかな違和感。
だが遅い。
チャートが動く。
152.60
152.90
+800万
+1800万
「……」
伸びる。
だが。
「……浅い」
止まる。
153.00
152.95
「……」
「……おかしい」
「……鑑定」
【USD/JPY】
上昇確率:48%
「……!」
崩壊。
152.10
151.30
150.40
+800万
−1200万
−3800万
「……!」
「切れ!」
すぐに決済。
結果――
−5200万。
「……」
だが終わらない。
チャートが動く。
150.40
151.20
152.10
「……!?」
再び上昇。
「……」
「……遅い」
理解する。
「……読まれてる」
「……」
さっきのエントリーの逆。
「……」
呼吸が浅くなる。
「……」
「……もう一回いく」
「……大丈夫?」
「……ああ」
「……取り返す」
チャートを見る。
151.80
152.40
「……」
「……ショート」
その瞬間。
逆。
152.80
153.40
「……っ!」
−2000万
−4500万
「……!」
「切れ!」
決済。
結果――
−9100万。
「……」
沈黙。
画面だけが動く。
「……」
「……完全に読まれてるな」
凛が言う。
「……ああ」
「……」
「……あいつ」
「一手先じゃない」
「……」
「二手、三手先を見てる」
「……」
凛が息を吐く。
「……厄介ね」
「……」
恒一はわずかに笑う。
「……いいな」
「……?」
「……これくらいじゃないと」
「面白くない」
その時。
モニターに表示。
「遅いね」
「……」
「……次は外さない」
「……必ずな」




