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戦い

赤蟻と戦う


フォルはルミルにその事を伝えた。

まだ赤蟻の弱点を見つける事はできていないが、このまま遠くから観察していても弱点なんか見つからない。まだ3日しか経っていないが、こんな事を1週間やろうと1年やろうとそれは変わらないとフォルは考えていた。


赤蟻が1匹しかいない時に暗闇から奇襲を仕掛けられることが確定しているだけでも充分だろう。


赤蟻が1匹の時に夜の暗闇に紛れての奇襲をする。その時に赤蟻の足を何本か切り落としたいが、それは難しい。傷を付けて動きを鈍らせることが出来るだけでも御の字だ。


赤蟻の外皮は硬い。フォルの実力では傷をつけるのも難しいだろう。

そこで狙うのは関節部分だ。しかし戦いながら狙える場所ではない。だから奇襲をかける。


ルミルは別のところで待機だ。

ルミルの武器は大槌だ。巨大な大槌は重く、筋力が高いドワーフといえど、まだ少女のルミルには荷が重い獲物といえる。

赤蟻は蜘蛛ほどではないが素早い。ルミルの攻撃は普通なら絶対に当たることはないだろう。だから奇襲だ。強力な1撃を当てて動きを止める。


最初の攻撃が決まればフォル達が圧倒的に有利になるだろう。


・・・


日が沈む。月が顔を出し周囲を暗闇が包んだ頃、赤蟻はいつもと同じように現れた。

いつもと行動が変わらないのなら、赤蟻は30分程ここで花の蜜を吸ったりしながら時間を潰すはずだ。


準備は既に整っている。

フォルは奇襲をかけるため草むらに隠れて息を殺している。

しばらくはフォル一人で戦っていき、赤蟻をルミルが待機している場所まで誘導する。

ルミルは小さな木の上で待機だ。赤蟻が近くに来た時を狙って上から思いっきり大槌を振り落とす。

そのあとは弱った赤蟻を2人で倒すという作戦だ。


余りにも穴が多い作戦と言えるが、フォルとルミルは完璧な作戦だと思っているので修正しようなんて考えは微塵も浮かんでいない。


(最初が肝心だ。まずは赤蟻を負傷させて怒らせて、ルミルの所まで誘導しないと。)


すぐ近くに赤蟻がいる。大丈夫だと思ってはいるがフォルは手と足の震えが止まらないでいた。

吐きそうになる。涙が出そうになる。

フォルは歯を食いしばって足を震える手で叩いて震えと吐き気を無理やり押さえ込んだ。


敵はすぐ目の前にいるのだ。気付かれるわけにはいかない。

あれから今まで、赤蟻を倒すことだけを考えて生きてきた。それが今、ようやく実現する。


(恐怖なんか捨ててしまえ。頭を麻痺させろ。)


赤蟻がフォルに背を向けた瞬間、フォルは手に持った刀に魔力を込める。

刀は徐々に赤い光りを帯びていく。刀の周りが熱さで歪んだように見えた。


フォルは勢いよく草むらから飛び出した。

赤い光を放つ刀を力任せに振るい、赤蟻の後ろ左足を切り落とす。

狙い通り関節を捉えたその斬撃は何の抵抗もなく赤蟻の足を切り落とした。


赤蟻は痛覚が無いのか痛がる素振りを見せないが、怒りに顔を歪めフォルを睨んでいる。

フォルは背筋に寒気が走り思わず後退した。


赤蟻は後ろ左足を奪われた事で上手く動けないようだ。

このまま攻撃を続けたい欲に駆られるが、フォルは作戦通りルミルのところまでの誘導に徹することにした。

刀への魔力供給を一旦止めて走る。

足が1本無くなっても赤蟻にはまだ5本の足がある。

速さは無くなったが、動けないわけじゃないのだ。いや、むしろ怒りのせいで若干速くなっているかもしれない。


フォルは赤蟻の攻撃を避けながらルミルが隠れている木を目指して走る。

バレないように多少の攻撃を加えることも忘れない。

追い詰められて仕方なく逃げている感じを意識しながらフォルは走った。

赤蟻の足を切り落とす事ができた興奮からか、足や手の震えはもうない。心臓は爆発しそうなほどに高鳴っているが、これは恐怖や混乱から来るものではないだろう。

何故ならフォルは自分でも分かるくらい冷静だったからだ。


赤蟻の怒りに任せた単調な攻撃は簡単に避けることができる。

避けながら攻撃する余裕も出てきていた。

時間がゆっくりに感じる。赤蟻の動きが遅いわけではない。

フォルの反応速度が明らかに常軌を逸しているのだ。


ドゴンッツ!!


大きな衝撃音と共に赤蟻のからだが地面に叩きつけられる。

赤蟻の上には赤く輝く大槌を叩きつけたルミルの姿があった。


これで決まったかの様にも思えたが、赤蟻はまだ動いている。

体は地面に軽くめり込み、口からは体液を吐き出しながらも赤蟻はまだ息があった。


「もう1回っ!!」


ルミルは大槌を天高く上げてもう一度赤蟻に叩きつける。


ドゴンッツ!!


赤蟻の体は更に地面へとめり込んだ。

もう戦える力は残っていないだろうが、止めを刺さないと次に襲われたとき、死ぬのは自分たちかも知れない。油断はできない。

そう考えたフォルは刀に魔力を込めて赤蟻の右目を貫いた。

刀は赤蟻の後頭部まで貫通した。

込める魔力を最大にして赤蟻の脳を焼くことも忘れない。


しばらくして赤蟻が完全に動かなくなった所でフォルは刀を引き抜いた。




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