赤蟻
武器も完成したのでフォルはドワーフの村を出ることにした。
温泉に入りに来たエルフやホビット達に聞き込みをして赤蟻の情報はある程度揃えている。
今、赤蟻はドワーフの村の近くでよく目撃されているらしい。どうやらドワーフの村に来る他種族を狙っているようだ。
温泉が評判になってからは他種族が頻繁にドワーフの村にやってくる。そういう時はどうしても少人数になる。それを赤蟻は狙っているみたいだ。
まだ襲われた人達はいないみたいだけど、気を付けないといけないだろう。
フォルは朝早くドワーフの村の入口に立っている。
ルミルも新しく作っただろう大槌を背中に背負って横に並んでいた。
「本当についてくる気か?はっきり言って返り討ちに遭って死ぬ可能性の方が高いぞ?」
「だったら尚更ついてくわよ。私がいなかったらアンタ本当に死んじゃうじゃない。」
「死ぬ気はないんだけどな。」
「私も死ぬ気なんかないわよ。」
ルミルはそう言って笑った。
赤蟻がいる場所は大体分かっている。ドワーフの村で装備は一新したし、フォルは直ぐにでも赤蟻を倒しに行こうと思っていた。まぁ、それはルミルに止められたが。
赤蟻がいるだろう場所に行くことは行くが、まだ赤蟻と戦うことはしない。
まずは行動パターンを見極め、弱点を探し出し、赤蟻の隙を見つける。
その間に誰かが襲われないようにする為、赤蟻の情報を温泉に来ていたホビットとエルフの人達に広めて貰ったりもした。
赤蟻は強い。臆病なくらいでちょうどいいはずだ。
見つからないように茶色のマントに身を包んで2人はドワーフの村を後にした。
・・・
情報が正しければ赤蟻がテリトリーにしている場所にたどり着いた。
いや、テリトリーかどうか分からないが一番目撃されている場所がここら辺になる。
これからしばらくはここで野宿になる。赤蟻に気付かれないようにする為にテントなんかは設置しない。焚き火もできない。水浴びも毎日は無理かもしれない。
女性であるルミルには少しキツいかも知れない。けど我慢してもらうしかない。
幸いな事に今は暑くも寒くもない。
夜は若干寒いけど焚き火をしないと死んでしまう程じゃない。
ドワーフは寒さに弱いらしいが何とかなるだろう。
5日が過ぎた。その間で赤蟻が現れたのは10回。
どうやら赤蟻は朝と夜に1回ずつここに来ているみたいだ。
そして20分位ウロウロして帰っていく。
主に主食は花の蜜や木の蜜みたいだ。たまに他の昆虫族を食べているみたいだが。
赤蟻は大体1匹でいることが多い。
ここに来るときだけ集団から離れているのか、それとも群れから追い出されたのか……
この森で赤蟻のようなアリは他に見たことがない。種族が違うのか、それとも突然変異か。見た目が違う赤蟻を他のアリ達が持て余すようになって群れから追い出したのかもしれない。
ありえるかもしれない。しかしその可能性は低いだろう。
油断はしないようにしよう。フォルはそう考えて気を引き締めた。
「フォル、まだ赤蟻と戦わないの?」
「まだ赤蟻の事が良くわかってないからな。」
まだ5日目だというのにルミルが早くも今の状態に飽き始めていた。
まあ、仕方ないのかもしれない。何せ1日の殆どが草むらに寝転がってアリの観察か木の影に隠れてのアリの観察だ。
緊張感も薄れてきている。そろそろ行動に移すべきだろうか?
赤蟻に気づかれて奇襲を受けるわけには行かない。
フォルはまだ不覚的要素があるが赤蟻と戦うことを決意する。
決行日は明日の夜にした。
ここら辺に来るときの赤蟻はいつも1匹だ。
赤蟻が1匹の時に暗闇に隠れて奇襲をかける。足の1本でも斬れればかなり有利になるだろう。
フォルはルミルにそのことを話して今日はもう寝ることにした。




