鍛冶と温泉
鉱石も手に入れて後は鍛冶をするだけなのだが、少し問題が出てきた。
ルミルが武器の制作にやる気を出しすぎたのか、納得できる武器ができるまで渡さないと言ってきたのだ。
他にも問題はある。昼の間、ルミルは村の仕事の手伝いで細工の作業をしなければいけないので鍛冶の作業は夜中の数時間だけしかとれないのだ。
ルミルはスランプなのか、こだわりすぎてしまったのか、鉱石を手に入れてから1週間が過ぎてもフォルの武器が完成していない。普通に使えそうな武器は何本も出来上がっているが、ルミルはそれに納得していないらしく、それでいいからとフォルが頼んでも頑なに渡してはくれなかった。
ルミルの目の下には黒いクマが薄らと出てきており足取りも怪しい。
それを見てフォルは不安になって声をかけるが大丈夫の一言で片付けられてしまう。
武器ができるまでの間、フォルは何もすることがないので村の周りを走り回ったり、ルミルから借りた剣で素振りをしたりしていた。
余りにも暇だったので木の実を集めてドワーフ達にそれを売り始めたりもした。
木の実の採取を行わないドワーフ達には好評だ。
木の実は鉱石に変わり、フォルはそれをルミルに持っていく。
ルミルはその鉱石で武器を試作していった。
それから更に1週間が過ぎた。
ルミルが作った武器はかなりの数になったが、フォルの武器はまだ出来ていない。
いい加減にして欲しいという気持ちにもなるが、ルミルが納得していない以上どうにもならない。フォルはただ待つのみだ。
あまりに暇を持て余したフォルは魔法で地面を掘り、温泉を掘り当てて露天風呂を作った。
自分用に作った露天風呂だったが、フォルが気持ちよさそうに入っている姿を見たドワーフに依頼されたので、それを男湯と女湯に別けてドワーフ達に開放する。ドワーフ達に風呂文化が生まれた瞬間だ。
これによりフォルはドワーフ達から英雄のような扱いを受けるようになった。
フォルの武器を作っているルミルにも注目は集まり、村に居るドワーフ達は仕事の休憩時間にルミルに鍛冶の技術を教えるようになった。これによりルミルは更に鍛冶の腕を上げることになる。
更に1週間が過ぎた。
ドワーフの村に温泉が増えた。最近はエルフやホビットが温泉に入りに来ることもあるくらいだ。
ここの温泉は肩こりと腰痛に良く効き、美肌にも効果があるらしく客足が無くなる事はない。
しばらくしてドワーフの1人が宿屋を村の手前に建てた。
これは遠くから温泉に入りに来るエルフやホビットに頼まれたからだ。
宿屋が出来たおかげでフォルはテント暮らしから解放された。しかもフォルは英雄扱いなので宿泊料はタダだ。フォルは久々の布団にニヤニヤが止まらなかった。
温泉は硫黄成分が強いのか少し匂いが強い。
これのせいなのか分からないが昆虫族が寄り付かなくなっていた。
これからドワーフの村は温泉と鍛冶の村として発展していくことになるが、それは別の話だろう。
・・・
「で、できた。遂にできたわ!」
フォルが日課の素振りをしていると、ルミルが叫びながら走ってきた。
その手には細身の長剣が握られている。
「できたわよ!私の最高傑作!ありがたく受け取りなさい!」
「おー、あ、ありがと。」
ハイテンションのルミルにフォルは若干引きつつ長剣を受け取った。
フォルは鞘から長剣を抜いて刀身を見る。
日本刀のような片刃の刀身には綺麗な波の模様が入っていた。
その刀身はどこか薄らと赤く光っているように見える。
「なんか赤く光ってるように見えるんだけど。」
「あぁ、それは材料に砕いたルビーを使っているからよ。魔力を込めると刀身が熱くなるわ。」
ルミルが言うには魔力を込めることで刀身が熱くなっていき、最大では鉄をも溶かす程になるらしい。
柄の部分は熱を通しにくい素材らしいが、普通に熱くなるそうなので多用はできそうもない。しかし切り札としては充分に使えるだろう。
ルミルが自信満々に最高傑作というだけある。
「これは、凄いな。」
「そうでしょ?あー疲れた。いい仕事したわー。」
ルミルは肩をゴキゴキと鳴らしながら笑う。
フォルは刀を鞘に戻して改めてルミルに礼を言った。
「本当にありがとう。」
「どういたしまして。」




