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七月十八日 退魔開幕②


 七月十八日、放課後。


 怪異との決戦の時が、すぐそこまで迫っていた。

 霊能力者たちはそれぞれの行動を開始する。


 今回の作戦は極めてシンプルだ。


 国内でも有数の退魔エキスパートである照尾と権藤。

 そして彼らを防御面でカバーするリミディ。

 怪異との戦闘経験が豊富なこの三人で護衛対象の羽田絵麻を守りきるのだ。


 残るメンバーは戦闘向きとは言い難いので、遠隔でのサポートに回る。


 周防は事前に、絵麻の帰宅コースを何度も何度も歩いて往復していた。

 もしかしたら怪異出現の前兆がどこかで見つかるかもしれないからだ。

 ある種の露払いというやつであるが、今のところとくに効果はない。


 高上と佐々木は、砂根の屋敷でメンバーからの連絡を待つことになった。

 連絡手段は、スマホアプリのよくあるグループウェア。

 会議機能とワイヤレスイヤホンを使えば複数人での遠隔会話が可能になる。


 照尾たちが怪異と遭遇したときに、その情報をリアルタイムで共有できればなんらかの役に立てるかもしれない。

 あるいは考えたくないことだが、彼らがもし全滅してしまったとしても、怪異に関するなんらかのヒントを通話履歴に残すことができるだろう。


 先月に修験者・千条が怪異と交戦した際には、敵に関する手がかりがなにも残らなかった。

 今回はその反省から、できる限り交戦の記録を残そうと高上は考えたのだ。


 「もしもし、首尾はどうですか? そろそろ時間ですよね?」

 「ああ、今から下校を開始するぜ」


 照尾が作戦行動の開始を宣言した。

 いくつか言葉を交わしたあとスマホの通話を切った照尾は、そのまま車の運転席に乗り込んでエンジンをかける。


 「クルマで帰宅するとは考えたネ。これってアナタのクルマ?」

 「いや、レンタカーだ。経費は所長に請求するさ」


 運転席に照尾、助手席に権藤、後部座席にはリミディと羽田絵麻。

 一同は高校から絵麻の自宅まで、これから車で移動するつもりだった。


 よく言われることだが。

 雷に遭いそうなシーンにおいて逃げ込むべき安全地帯のひとつとして、自動車の中が挙げられる。

 車に雷が直撃しても、電気は車の表面を伝って地面に流れていくからだ。


 車の内部にいる人間が感電することは、基本的にはない。

 より安全を期すならば車内の金属類に触れず、なおかつ窓からできるだけ離れるようにするとなお良い。


 移動と護衛を両立できる自動車の利用というアイディアは高上の発案だった。

 怪異の起こす雷が物理法則に基づいているかどうかは定かでないため、どれほど有効なのかは未知数ではあるが。


 「ねえ、照尾さん。シートベルトってしたほうがいい? 金属の部品があるし、落雷的にはちょっと危なくないかな?」

 「お前の商売道具よりかは安全なんじゃねえのかな」


 権藤が大事に抱えている霊刀をちらりと見て、照尾は悪態をついた。

 雷に対して刀を振りかざせば感電の恐れがある、なんてことは小学生でも分かりそうなものだった。


 「雷の怪異を相手にそんなもんは自殺行為だって、事前に言ったよな。なんで持ってきちまったんだよ。この仕事には労災は降りねえぞ」

 「私の相棒だからね。鞘に収めて車内に置いとく分には問題ないし、もしかしたらなんかの役に立つかもしれないでしょ? 照尾さんこそ、その十字架の首飾りとか金属っぽくて危ないんじゃないのお?」


 砕けた軽口を叩き合う二人。

 できるだけ車内を明るい雰囲気にしようという、絵麻への配慮だった。


 「よし、出発するぞ」


 四人を乗せた車が、ゆっくりと動き出す。

 時刻は十六時ちょっと過ぎ。

 やや陽射しが弱まっているものの、空は十分な晴れ模様。


 帰り道が今、スタートした。


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