第24話
今回は急な外出であったため、サイクロプスを倒した翌日にはベルーゼたちは帰国することになった。
慌ただしくはあるが、計画的に仕事を終わらせてから訪れた前回とは異なり、ダスターがするべき仕事が山積みになっているのだ。
ダスターとしてはこのままここで現実逃避をしたいところだが、帰国後のロシンからの視線の冷たさを考えれば、早々に帰るべきだろうと率先して帰り支度を行った。
その結果、その日にはドワーフの国へと無事に帰国することが出来たのである。
ダスターがロシンの監視のもと仕事をさせられている横目に、ベルーゼは漸く落ち着くことが出来たため、早速ホルスの能力を診断してみることにした。
「ホルス、これから君の能力を見る魔法をかけるけど良い?」
「ハイ、ショウチイタシマシタ」
ホルスから許可を得たベルーゼは、わくわくとしながら呪文を唱えていく。
それは、新しい仲間が出来たことに対してのものだけで無く、見た目からしても、自分たちに不足しているパワーファイターである可能性が高いホルスへの期待が多く含まれていた。
ホルス サリク
ランク D
HP 5
MP 5
物理攻撃 5
物理防御 5
魔法攻撃 2
魔法防御 1
敏捷 1
回復 1
補助 1
属性
火
習得技
ファイヤーブレス 突進 身代わり 火炎蹄(四本の蹄全てに炎を灯し、相手へ襲い掛かる)
スキル 「万力無双」
スキル発動時は通常時の2倍の攻撃力を発揮出来る。
ただし、発動中は体力が減り続けるため、長時間の発動は死の恐れもある。
どうやらホルスは重戦士タイプのようだ。
現れたホルスの能力値が自分の望む通りのものだったことに、ベルーゼは歓喜の声をあげ、ホルスへと抱き着いた。
それをペルが妬ましそうに見ているが、今のベルーゼはそれに気づいてやれるほど冷静では無かった。
今のベルーゼたちには貴重な前衛専門の戦闘要員。それも、マシロとは違って壁役にもなれる体力があるというのはそれだけベルーゼにとってとても魅力的だった。
(これで人数も四人になったし、2対2で連携の練習も出来るようになる。それに、ホルスが壁役を引き受けてくれれば俺やペルの戦いが楽になるはずだ)
この結果だけを見ても、あの時にホルスを助けた自分の判断は間違いでは無かったとベルーゼは改めて感じた。
更にいえば、今までは皆同じEランクであったが、一つとはいえランクが高い彼がいることで、己も早く強くなろうというペルたちの向上心にも繋がるはずだ。
指針となる者が傲慢であれば、仲間内でのもめ事に発展する可能性もあったが、都合の良いことに、ホルスはとても穏やかな性格をしている。
ホビットの城で大騒ぎをしていた時に、嫉妬に駆られたペルに幾度となく突っかかられていたが、全て穏やかに受け入れてしまったほど懐の深い男なのである。
そのことで更にペルから妬まれてはいたが、ケインやマシロとの時のようにその内打ち解けるだろうと、ベルーゼは楽観的に考えていた。
何せ、遊んで!遊んで!とじゃれてくるケインの相手も嫌がらずに行っているし、ペルとケインから邪険にされがちなマシロにも優しく接している。
そのおかげでペル以外の二匹とはすでに割と友好的に接しているのだ。
ケインよりはましだが、少し天然が入っているように感じられるところは気になる部分ではあるが、パーティー内の空気調整には問題ないレベルであろう。
(ホルスを助けるためだったとはいえ、サイクロプスに挑んだ時には魔物討伐への同行は立ち消えることを覚悟したけど、それもなんだかんだで承認されたし。これからは少しずつみんなで戦闘になれていって、早く俺たちだけでも戦闘に出ても良いって言ってもらえるくらいにならないとな)
そんな闘志を胸に宿しながら、ベルーゼは仲良くじゃれているケインとホルスを見つめる。
すると、そんな彼へそっと寄り添ってくる影があった。
「ん?どうしたの、ペル」
「………」
黙って自分の身体をベルーゼへと擦り付けてくるペルに、ベルーゼは疑問を抱きながらも、反射で愛猫の身体をするりと撫でる。
しかし、何時もはそれだけで喉を上機嫌で鳴らすはずのペルが無反応なことに、ベルーゼは更に首を傾げた。
そんな主人の反応を見ていたペルは、ベルーゼの首筋に顔をこすりつけると、まるで所有の証をつけるように、そこを甘噛みしてくる。
それでも防御力の高いベルーゼの肌は薄い跡すらも付くことは無く。その光景を確かめたペルは、とても悲しそうな声色でぽつりと言葉を零した。
「ベルーゼ、ホルス、スキ?」
「えっ?…うん勿論スキだけど、それがどうかしたの?」
突然のペルからの質問に、ベルーゼは意味が分からないながらも正直に答えた。
だが、その言葉を聞いたペルは表情まで泣きそうな悲しいものへ変え、必死に身体を摺り寄せてくる。
「ダメ、ダメ、ダメ」
「え、え、ちょっ、どうしたんだよペル。何が駄目なんだ?」
押し倒されそうな勢いのペルにベルーゼは目を白黒させながら問いかける。
しかし、ペルはその質問に答えることは無く、ただ、ダメだとばかり繰り返し、何も答えてはくれない。
(ど、どうしよう。ペルは泣かせたく無いけど、どうして欲しいのかがまるで分からない。俺、何かしたっけ?)
そんな状況に弱り果てたベルーゼは、助けを求めるようにホルスたちへと目を向ける。
だが、その気配を感じ取ったらしいペルが素早くベルーゼの眼前へと移動し、その視線を遮る。
「ヨソミ、ダメ、オレダケ、ミテ!!」
「えっ」
涙目になりながら縋るように再びすり寄って来るペルの様子から、ベルーゼもようやくペルがホルスへ嫉妬してこのような行動に出たことが理解できた。
もともと他の動物がベルーゼの側へ寄ることを嫌うペルにとっては、ベルーゼ自らが過剰と思えるほどに構おうとするホルスは許容範囲を大きく逸脱する存在だったのだろう。
それでもベルーガの言葉を思い出して従魔の契約には協力したが、ここへ来て、独占欲とベルーゼが取られてしまうかもしれないという不安が爆発してしまったらしい。
そのことを悟ったベルーゼは、場違いだとは分かっていながらも、いじらしいペルの姿に胸をきゅんとときめかせていた。
(ああ、もう。ペルは相変わらず可愛いんだから!)
だが、ときめきと同時に、ベルーゼは自分のせいで大切な者を悲しませてしまったことへの罪悪感も感じていた。
ペルをこのままにしておくわけにはいかないと慌てながら、ベルーゼは最大限に優しい手つきでペルの手触りの良い毛並みを撫でる。
「ごめんね、ペル。俺が鈍感なせいで、またお前に悲しい思いをさせてしまったね」
「ベルーゼ、ペル、キライ?」
「そんなわけが無いだろう。寧ろ、大好きだよ」
涙に濡れた瞳でじっと見つめてくるペルに心を更に痛めながら、ベルーゼはペルの背中を撫で続ける。
そんな彼らの姿を、先ほどまでじゃれついてくるケインの相手をしていたホルスが静かに見つめ、未だに騒ぎ立てているケインをそっと諭して黙らせた。
そんなホルスの気づかいに内心で感謝しながら、ベルーゼは駄々っ子のように自分の胸へ頭を擦り付けているペルを愛おしそうに見やる。
「ペル。前にも言ったけど、俺はとても動物が好きなんだ。だから、これからもたぶん従魔は多くなっていくと思う」
「ベルーゼ、ウワキモノ」
「うっ、そう言われると返す言葉も無いんだけど。でもね、俺はどれだけ従魔が増えても、ペルのことを好きな気持ちが減ることは無いって断言できるよ。寧ろ、今日みたいな可愛い姿を見ると、どんどん好きって気持ちが大きくなっていって困るくらいだ」
そんなどこぞの浮気夫の言い訳のようなことを真剣な表情で言うベルーゼに、ペルは諦めにも似た表情を浮かべた。
そして、苦笑いをするように口元を歪ませる。
「ウワキモノ」
「うう、ごめんね。ペル」
「シカタナイ、アキラメル。デモ、オレモカマッテ。デナイト、ユルサナイ」
自分の主の浮気症は今に始まったことでは無いと諦めたらしいペルの言葉に、ベルーゼが嬉しそうに頷きを返す。
そんな彼らのことを、その場に居たダスターやロシンたちが、ペル同様に苦笑いをしながら見守っていた。
ここまで閲覧していただき、ありがとうございます。
今回は前回投稿文に入りきらなかった部分を加筆修正して投稿させていただきました。
ただ、もともとの文章が短かったのでペルの嫉妬部分を膨らませてみたのですが、ちょっと微妙な感じになったので反省しております。
ここのところについてはその内時間が出来たら書き直すかもしれません。
追記
初めに投稿した際に書き忘れておりましたが、この話で第1章は終了です。
うっかりしており、申し訳ありません。




