表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王陛下の目指せ!モフモフパラダイス  作者:
第1章 幼児期編
24/27

第23話

 ホビットの国にたどり着いたベルーゼたちは、盛大に迎えられた。

 城へと続く中央通りに並ぶ、人、人、人。どうやら国民のほぼ全員が集まっているようだ。

 その歓声の多さに圧倒されながら、ベルーゼはダスターに抱っこされたまま城へと進んで行く。

 その横では、人ごみが怖かったのだろう。マシロがぴるぴる震えながらケインにしがみついている。

 一方、しがみつかれている方のケインは声をかけて貰えるのが楽しいらしく、ブンブンと尻尾を振り回して上機嫌だ。


 そのまた隣で、煩わしそうに不機嫌アピールをしているペルとは大違いである。


(そういえば火牛はどうしただろう)


 そう考え、ベルーゼが後方を振り返ると、ケインほどではないが、嬉しそうに悠然と歩いている巨体が見えた。

 どうやらこの牛、なかなかに大物のようだ。


(なんだか流れで群れから連れ出して来ちゃったけど、後で従魔になってくれるように交渉しないとな)


 その時に、なんて名前をつけようかと考えながら、ベルーゼはなんとか歓声から気を反らせる。

 彼はあまり注目を集めるのが苦手なのだ。

 将来は父親の跡を継いで王様になるのだから、今から慣れておいたほうが良いのだろうが、そう簡単に出来ることでは無い。

 ベルーゼはその内心の緊張を表に出さないようにしながら、どうにかお城までたどり着く。

 すると、城の入り口で、ポルンとセレーナが待っているのが見えた。


「やあ、お疲れ様」


「二人とも怪我はしていない?」


「おお、ベルーゼが少し背中を打ったが、既に完治している。問題無い」


「お久しぶりです、ポルン様、セレーナさん」


 相変わらず頼りなさげに笑うポルンと、心配そうに声をかけてくれたセレーナへとベルーゼは笑いかける。

 ダスターの言葉を聞いて、セレーナは益々心配そうな顔をしたが、ポルンの方は意外にも男の子だから大丈夫だよと言ってくる。

 その言葉は普段女子のような扱いをされて不満に感じているベルーゼにとってとても嬉しいものだった。

 「無理はしすぎちゃ駄目だよ」と釘も刺されたが、それを入れても嬉しさの方が勝る。

そのため、ベルーゼはポルンへとても輝かしい笑顔で元気に頷いた。

 そんな息子を、ダスターが複雑そうな表情で見ている。

 どうやら自分が言った時には不満そうにしていたのに、ポルンへは素直に返事をしたことが不満であるらしい。

 そのことに気が付いたベルーゼは、ここで拗ねられても困るので、可愛く甘えて誤魔化すことにした。


「父上、抱っこ!」


「・・・・・・・・・」


「・・・だめ?」


「いや、おいで」


「わーい!」


 拗ね初めていたのだろう、ムスッとした表情をしていたダスターへ、ベルーゼは最終手段の潤んだ上目遣い攻撃を使った。

 それにダスターは耐えかねたようで、少し複雑そうではあったものの、ベルーゼを抱き上げた。

 どうにかダスターを誤魔化すことには成功したようだ。


 只でさえサイクロプスとの戦いで機嫌が良くないであろう時に無用な争いは避けたかったベルーゼは、内心ほっとため息を吐いた。


「あの二人は相変わらずね」


「そうだね、僕たちもあれくらい仲良くしたいなぁ」


「何言ってるのよ、バカ!」


「痛てっ!」


 そんなベルーゼ親子を見て、ポルンが調子に乗った発言をしてセレーナに怒られていた。

 ただ、セレーナの表情から察するに、彼女は恥ずかしかっただけのようだ。


(本当、リア充末永く爆発しろ)


 ベルーゼは、自分のことを棚に上げてつい、そんな悪態を心の中で吐いてしまう。


 城の中へ入ると、既にサイクロプスを討伐したお祝いパーティーの準備が整っていた。

 そのままパーティーに雪崩れ込み、ベルーゼはホビットたちに戦いの様子を聞かせて欲しいと群がられる。

 ドワーフたちの気遣いなのか、はたまた種族の違い故か。普段ここまで人に囲まれることが無いベルーゼは、目を白黒させながら、彼らが望むままに話をする。


 サイクロプスが恐ろしかったこと、ダスターがどれだけカッコ良かったかということ。

 説明することに慣れていないベルーゼの話はあちらこちらへと脱線するため、とても聞きにくいものだったことだろう。

 だが、ホビットたちは皆熱心に彼の話を聞いていた。


 おかげでベルーゼも、あのときに感じた負の感情を消化することが出来たため、寧ろ話して良かったのかもしれない。

 ダスターも、あれだけ不機嫌だったのが嘘のように、現在はポルンと共に陽気に酒を酌み交わしている。

 その横で、彼らよりも長身故に背丈が合わないセレーナが、どこか狭そうにしながらお酌をしているのが見えた。

 その光景に、ベルーゼはなんだか可笑しいような気持ちが込み上げてくる。


 そんな楽しいパーティーは夜中まで続き、ベルーゼは気が付くと、ベッドの上で朝を迎えていた。

 どうやら、また寝落ちしてしまったらしい。

 ふと、横を見ると、彼に寄り添うように眠るペルとケインが見えた。


 ペルはベルーゼが目覚めた気配で目を覚ましたらしく、パチリと目を開けると、ゴロゴロと甘え始めた。


(ああ、もう可愛い!!)


 ベルーゼはそんな姿に、一も二もなくペルを抱きしめる。

 ウリウリとペルの肩口に顔をこすり付けていると、横から何やら視線を感じた。

 そちらへベルーゼが視線を向けると、ベッドのすぐ側で寝そべっている火牛と目が合った。

 優しいその眼差しは、とてもサイクロプスへ一匹で挑んでいた猛者と同一の者とは思えない。

 所謂、気は優しくて力持ちというタイプなのかもしれない。


 普段は穏やかで優しいけれど、いざという時には仲間を庇って勇敢に戦う。

 火牛からはそんな優しさの中に隠れた力強さを感じた。


(うああ、格好いい!)


 ベルーゼは、勝手ながら頭の中で自分たちを守る火牛の姿を想像し、その格好良さにうっとりと目を細める。

 やはり、彼には俺の従魔になってもらいたい。そんな願望が彼の中で生まれた。


「ごめん、ペル。通訳して」


 どうにも辛抱出来なくなったベルーゼは、己の中に生まれた衝動が促すままに行動することにした。

 彼の言葉から、主人のこれからの行動を予想したのか、ペルは複雑そうな表情だ。

 しかし、ベルーガとの約束を思い出したのだろう。彼は特に何か言うことも無く、渋々頷いた。


(これで、心置きなくこの子を口説くことが出来る)


 ペルの反応に安心したベルーゼは一つ深呼吸をすると、期待と不安で高鳴る胸を押さえつけ、冷静そうな表情を取り繕った。

 そして、そのままゆるりとベッドから降り、火牛の前へと歩み出る。

 そんな彼を、火牛は相変わらず優しい眼差しで見守っていた。


 火牛の態度に勇気付けれたベルーゼは、本人も気付かない内に握り締めていた手を開き、火牛へと語りかけた。


「まずは、謝らせてね。流れとは言え、君を仲間たちから引き離してこんなところまで連れて来てしまってごめん」


「ブモー」


 ペルからの通訳を受けて、火牛がゆるゆると首を振る。どうやら気にするな、と言いたいらしい。

 この牛はすでにEランクに進化しているだけのことはあり、普通の動物よりり知性があるように見受けられる。


「キニスルナ、イッテル」


「・・・ありがとう。それで、これからのことなんだけど。よかったら、このまま俺の従魔になってくれないかな?」


 自分の予想を肯定する言葉がペルから告げられたことで、幾分緊張がほぐれたベルーゼは、ここからが正念場だと、本題を口にした。

 それに対して、火牛は暫しベルーゼの瞳をジッと見つめていたが、ペルからの通訳に一つ頷くと、見た目に相応しい豪快な鳴き声を上げる。


「・・・ブモーーーーン!」


「・・・・・・・・・。ジュウマ、ナル。タスケタ、レイ、スル」


 火牛の決意に満ちた瞳から、その言葉が彼の心からの言葉であることがベルーゼにも伝わってくる。

 その、見ている方が照れくさく感じるくらいの熱い瞳が、ベルーゼにはとても魅力的に写った。

 少し恩着せがましい手を使った気もするが、これからこの瞳を何度も見ることが出来るのだと思えば気にならないほどだ。


 ベルーゼは、その喜びからか、蜜に惹かれる蝶のような心地で火牛の顔へと手を伸ばす。

 そして、するりと撫でたその頬の毛並みのしなやかさにうっとりとしながら、更に、その魅力的な瞳を見つめて語りかけた。


「ありがとう。君の名前は今日からホルスだ。俺の騎士として、ずっと側に居てくれ」


「ブモー!」


「・・・ワカリマシタ、ワガアルジ、イッテル」


ランクアップのための黒い霧へと包まれる中、律儀にそんな言葉を返す火牛に、ベルーゼは感極まった。


(なんて紳士なんだ!流石は俺の騎士)


 ドキドキとときめく胸を押さえながら、ベルーゼは彼のランクアップを見守る。

 その視界の端で、床で寝ていたマシロをゲシゲシと叩いているペルが見えた。


(床で寝てたら風邪ひくから、起こしてあげてるのかな?流石ペルは面倒みが良いな)


 実際は起こすというよりも強力なライバルが現れたことへの八つ当たりなのだが、それは言わぬが花というものだ。


 そんな状況の中で霧が晴れる。そうして見えたのは、火牛の時よりも更に大きくなった身体と、その倍の大きさは有りそうな大きく白い翼だった。

 その勇ましさは、ベルーゼの心を鷲掴みにしたようで、彼は恥も外聞も無く衝動のままに叫ぶ。


「か、カッコいい!」


「アリガトウゴザイマス。ゴシュジンサマ」


「あ、喋れるようにもなったんだね」


 ペルに続いて二匹目の会話が出来る仲間の登場に、ベルーゼは少なからず驚きと喜びを感じた。

 その上、彼はどうやらペルよりも滑舌が良いらしく聞き取り易い。

 それは、牛の器用な舌が関連しているのかもしれない。

 だが、そんなことなど嫉妬に燃えるペルには関係が無く。彼は密かに会話の特訓をしようと心に決めた。


「ハイ。アナタ二コトバヲ、ジブンデツタエタイトネガッタラカナイマシタ」


「そうなんだ。でも、そんな堅苦しい言葉使いはしないで欲しいな。あと、ご主人様じゃなくて、ベルーゼって呼んで?」


「シカシ・・・」


「いーの。そりゃあ、俺の騎士になってとは言ったけど。俺は、従魔とは主従じゃなくて恋人同士みたいな関係になりたいんだから。・・・男の俺とじゃ、そんな関係になるのは嫌?」


 ベルーゼに注意されたものの、ホルス本人は改善するつもりは無いようだ。

 ベルーゼとしても、ご主人様と呼ばれることは騎士から慕われる王子という雰囲気がするため、やぶさかでは無い。

 だが、やはり敬語では距離を感じてしまうため、ベルーゼとしては嫌だと感じてしまう。


 彼としてはどうせなら気安く、「ホルス」「ベルーゼ」と呼び合える仲になりたいのだ。

 そのため、ベルーゼは自分の主張を押し通そうと、必殺技の潤んだ上目遣いと甘えた声で訴える。

 これでダメならば、ペルたちにも手伝って貰って外堀から埋めていく心積もりだ。


 だが、その必要は無さそうである。

 なにせ、ベルーゼの言葉を聞いたホルスはベルーゼが驚いてしまうくらいにうろたえているのだから。


「コ、コイビト?」


「そう、恋人。君らに分かりやすく言えば番かな。嫌、かな?」


 動揺して視線を彷徨わせる様を可愛らしいと内心思いつつ、ベルーゼは畳みかけるようにホルスの顔を至近距離から覗き込んだ。

 その仕草に、ホルスは他の者からでは分からない程度にほんのりと頬を染めると、慌てたように返事を返した。


「イ、イヤデハアリマセン!」


「本当!嬉しい」


 彼の返事に喜んだベルーゼが、その衝動のままに抱きつくと、ホルスがあわあわと焦っていることが感じられた。


(ふふふ、慌てちゃって可愛い。こういうことには慣れて無いんだろうな)


 これならば後一押しでタメ口をきかせることも出来るだろう。

 ベルーゼはそう、内心ほくそ笑みつつ、あたたかなホルスの体温と艶やかな毛並みを堪能する。

 微かに匂うお日様の匂いが、如何にも彼らしい。

 その匂いを思う存分堪能しながら、思考能力が低下している今の内にこちらの言い分を飲ませるべく、ベルーゼは口を開いた。


「じゃあ、俺のことベルーゼって呼んで?」


「ベ、ベルーゼ」


「良くできました。ホルス、大好きだよ」


「・・・ッ!」


 ホルスはまんまとベルーゼの思惑に乗ってベルーゼのことを呼び捨てにする。

 そんな彼に、ベルーゼは心に暖かいものが込み上げるのを感じた。


 更に気分が良くなったベルーゼは、名前を呼んでくれたご褒美にと、ちゅっと、ホルスの額へキスを落とす。

 すると、元々赤茶色だったホルスの毛並みが、更に赤くなったように見える。

 表情などから察するに、照れているようだ。


 そんな初な反応が可愛らしく感じたベルーゼは、ホルスをなでくり回す。

 すると、我慢の限界に達したらしいペルや、目が覚めたらしいケインまでもが乱入してきた。


「ベルーゼ、オレモ!!」


「ガウッ!」


「あはは、良いよ」


 最高潮に機嫌が良いベルーゼは、その二匹にも額にキスをしてやる。

 だが、ペルは、もっと!というように見つめてくるし、ケインはキスの意味が良く分かっていないのかキョトンとしていた。

 そんな二匹の反応が、また更にベルーゼのテンションをあげる。


 調子に乗ったベルーゼは、二匹に遅れてやってきた何故か全身傷だらけのマシロにも、回復魔法をかけつつキスを落としてやる。

 結果、それに何故か興奮したらしいマシロに唇へキスされたり、それに激怒したペルの暴走を止めたりと、結局その日は国に帰るために兵士たちが呼びにくるまで騒ぎ倒すことになってしまった。




ここまで閲覧していただき、ありがとうございます。


漸く少しだけBLっぽい描写が出せましたが、まだまだ主人公的にはペルやホルスたちに向けている感情は、行き過ぎた親愛です。

彼としてはペットは大好きだけれど、人間として最低限のラインは保っていたいと考えているので、どんなに興奮しても、ギリギリのところで耐えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ