第22話
ホビットの国までは以前とは違ってペルに跨がって行く。
距離は有るが、馬車では小回りが効かないので危険だと判断したためだ。
隣で馬に乗る父親の凛々しさに見とれながら、ベルーゼは従魔たちと共に疾走する。
そのスピードが怖いのか、マシロがピルピル震えてベルーゼにしがみつく。それを彼は内心デレデレしながら宥めた。
(ふふふ、気性が荒いけど、本当は怖がりなんて、本当にマシロは可愛い。もちろん、俺の役にたてることが嬉しくて内心はしゃいでいるペルも可愛いし、はしゃぎすぎて俺を困らせないようにと、必死で抑えているケインも可愛い)
帰ったら三匹とも存分になでくり回さなければと密かに計画を立てる。
そんな、ベルーゼ的パラダイスを妄想しながら進んでいると、前方から兵士が一騎駆け寄って来た。
「ダスター様。サイクロプスのだいたいの位置が分かりました。ここより一キロほど離れた草原にいるようです」
「そうか。あの辺りはたしか野生動物が多く生息していたはずだ。被害が大きくなる前に叩くぞ」
「では、皆に速度を上げるよう伝令して参ります」
「頼んだ。そういうわけだから、お前たちはそろそろ後方に下がっていろ」
「はい、父上。お気をつけて」
颯爽と駆けて行く父の姿を見送り、ベルーゼは後ろへと下がる。
そうは言っても後ろ過ぎて引き離されたり、ダスターの雄姿を見逃しては元も子もない。
ベルーゼはペルにほどほどの距離を保つように頼み、進んでいく。
しばらくすると、森から抜けて一面に草花が広がる草原地帯へ出た。
恐らく、サイクロプスも近くにいるはずだ。
ベルーゼはいつ敵が出ても良いようにそっと身構える。
すると、ケインが不意に足を止め、右手の方を見やった。それに少し遅れてペルも同じ方向を見やって立ち止まる。
「どうしたの、ペル」
「アッチ、ケモノ、コエ、スル」
「あっち?」
「タスケテ、イッテル、タクサン」
「なるほど、ありがとうペル。すみません、誰か父上に伝えてもらえますか?」
ベルーゼたちの会話を聞いていたであろう、周りにいる兵士に声をかける。
案の定、兵士は何も聞き返すことはなく、素早い動きで先頭にいるだろうダスターの元へと向かう。
ベルーゼは周りの兵士たちに合わせて前に出過ぎないように注意しながら横へと方向転換して進んで行く。
しばらく進んでいくと、前方に巨大な影とその近くにいる牛の群れが見えてきた。
どうやらサイクロプスに襲われているらしい。
逃げようとした個体から棍棒で叩き潰されている。そのせいで身動きが取れていないようだ。
そんな、怯えてすっかり縮こまっている牛たちの中で、一匹だけサイクロプスと対峙しているモノがいた。
その牛は他の個体に比べて一回りほど身体が大きく、サイクロプスを威嚇するように口から炎を吐き出している。
恐らく牛からランクアップした個体なのだろう。
仲間を守るために奮闘したのか、身体は傷だらけになっている。
それでも戦意を失っていない姿にベルーゼは感服した。
それと同時に、あの牛を是非とも従魔にしたいといういつもの衝動が襲ってくる。
それをどうにか抑え込みつつ、ベルーゼは父親たちが到着するのを待つことにした。
ここで不用意に手を出しては、ダスターとの約束を破ることになるからだ。
すると、目の前でサイクロプスが火を吹く牛へと棍棒を振り上げる。
牛はとっさにそれを避けようとするが、棍棒の軌道上に子牛がいることに気が付くと、ぐっと踏みとどまった。
どうやら、自分を犠牲にして子牛を守るつもりらしい。
だが、ここで彼を殺すわけにはいかないとベルーゼは一瞬で決意を固めた。なにせ、彼はベルーゼが従魔にするのだから。
ベルーゼは、とっさに火牛とサイクロプスの間に大きな土壁を出現させる。
それに合わせ、彼の意図を汲み取ったのだろう、ペルが全速力で火牛の方へ疾走した。
その間になにやらグルグル言っていたが、それを聞いてケインとマシロが返事をしていたため、恐らく二匹に指示を出していたのだろう。
マシロはその指示に嫌そうな顔をしながらも、ベルーゼの腕の中から抜け出すと、近くへ寄ってきたケインの背中へと飛び移る。
すると、ケインはベルーゼたちとは反対側へ走り出し、十分に距離を取ってから呪文を唱え始めた。
どうやら囮になるつもりのようだ。
サイクロプスは身体が大きく力が強いが、あまり頭は良くない。
今も、ベルーゼが出した土壁に思考が追いついていないらしく、振り上げていた腕を下ろして不思議そうに壁をつついている。
その隙にベルーゼとペルは火牛の元へとたどり着き、ベルーゼは急いでスキルを展開した。
今の彼のスキルの範囲では牛の群れたちをギリギリ覆える程度だが、強度はダスターの攻撃すら二回は凌げる。
サイクロプスがいくら強いと言っても一発で打ち破ることは出来ないはずだ。
それを利用してダスターたちが応援に駆けつけてくれるまでの時間を稼ぐ。
この作戦をやるには、ベルーゼたちだけなら不安だが、今回は近くに兵士たちもいるから何とかなるだろう。
ベルーゼはそう算段し、目線で兵士に謝罪と協力要請を訴えた。
その視線を受け、それまでベルーゼの行動に困惑していた兵士たちも、凄く困った顔をしながら頷く。
これでせっかくの戦闘に参加する権利が無くなる可能性が高くなったわけだが、ベルーゼはこの牛たちを守れるならそれも本望だと腹を括った。
ペルに回復魔法を施されている火牛が、ベルーゼのことをジッと見つめている。
恐らく、突然現れたベルーゼたちが敵か味方かを見定めているのだろう。
そんな視線に、ベルーゼは安心させるようにとびきり甘い笑顔を向ける。
「大丈夫。君のことは俺が必ず守るから。勿論、君の仲間のこともね?だから、安心して休んでて」
「・・・・・・・・・」
ベルーゼの笑顔に、少し驚いたような表情をしていた火牛だったが、ペルからの通訳でベルーゼの言葉を理解したらしく、そっと頷いた。
その時の一途なまでに真っ直ぐな視線に、ベルーゼはゾクゾクするほど見惚れる。
(やっぱりこの子は俺の従魔にしよう)
そう決意を新たにし、ベルーゼは目の前の壁へと視線を戻す。
ケインたちに動きが無いことから考えるに、どうやらまだサイクロプスは攻撃に移る気は無いようだ。
そのまま応援が来るまで壁を弄って遊んでいてくれれば良い。
そうベルーゼは願ったが、やはり現実はそんなに甘くは無い。
『ガーン!!』
そんな爆音とともに目の前の土壁が破壊され、凶悪なサイクロプスの顔が露わになった。
その迫力に、思わずベルーゼは息を飲む。
一方、サイクロプスの方は面白くなさそうに壊れた土壁を見つめると、すぐに興味を無くしてベルーゼたちへと視線を定める。
その視線を受けても、後ろの火牛に良いところを見せようと、ベルーゼは表面上は涼しげな表情を保った。
しかし、初めて直面する命の危機に、背中を冷や汗が伝う。
本音を言えば、縮みあがるほどに恐ろしい。だが、ここで引けば火牛は二度と手に入らない。
その思いが、ベルーゼを突き動かしていた。
全く同じ種族をみつけても、ベルーゼが気に入った火牛はこの一匹だけだ。
ならば、ここで奮起せねばならないだろう。
そう思えば、自然と恐怖を抑え込むことが出来た。
(恐怖は後で父上に甘えて吐き出せば良い。今はただこの目の前の敵から牛たちを守ることだけ考えよう)
ベルーゼはそう気を引き締めると、時間をかけて練り上げていた魔力で新たな土壁を作り上げる。
それは、先ほどのその場しのぎのものとは異なり、強度は防弾ガラス並み。そして、それをドーム状にすることで、サイクロプスを完全に包囲する。
だが、これも所詮は時間稼ぎにしかならないと分かっている。
「すみません!俺たちでコイツを足止めしてる間に強力な攻撃魔法を練って下さい!」
「承知いたしました!」
「魔術の使えない人は牛たちの非難に回って下さい」
「はい!」
ベルーゼの言葉を合図に、兵士たちがそれぞれの役目を果たすべく分散していく。
その間にもドームの中からガンガンと大きな音が鳴り響いている。
壊れるのも時間の問題のようだ。
さて、次はどう出るか。
そうベルーゼが思案していたところへ、ペルがケインたちになにやら指示を出し始めた。
それを受けて、ベルーゼたちから距離を取っていたケインとマシロが、更に別々の方向へ走り出す。
すると、俺とペルを含めてサイクロプスを中心に三角形が出来た。
「アイツ、アタマ、ワルイ。バラバラコウゲキ、コンラン、スル』
「なるほど、流石はペルだ。帰ったらお前の好きな魚を上げるよ」
「グルルル」
誉めながら撫でると、ペルはとても嬉しそうに喉を鳴らした。
それを見ていた他の二匹も誉めて欲しいらしく、気合いが入ったようだ。
特にケインは気合い充分と言いたげに牙を剥いて唸りを上げている。
あまりはりきり過ぎて大怪我をしないように此方が注意しておかなければと思いつつ、ベルーゼは慎重に相手の出方を窺う。
すると、やはりサイクロプスは中で大暴れしているようで、直ぐにドームへ大きなヒビが入った。
その次の瞬間。
先ほどとは比べものにならないほど大きな音を立ててドームが砕けた。
そして、中からはサイクロプスが怒りに顔を染めて現れる。
(これはけっこうヤバいかもしれない。)
そう思いつつも、ベルーゼは結界が壊れてしまわないよう、気合いを入れる。
そして、他の二匹により距離を取るように指示を出した。
まだ牛たちを連れた兵士たちが近くにいる。なにより、彼の後ろには傷が癒えきっていない火牛がいるのだ。
ここで自分の結界が壊れるわけにはいかない。
ベルーゼはここが正念場だと集中力を高める。
その目の前で、サイクロプスが怒りのままに腕を振り上げた。
足元に真っ二つに折れた棍棒が転がっているところを見ると、どうやらドームの強度に棍棒が耐えられなかったらしい。
(ということは、コイツは素手でドームを壊したのか)
ならば初めから素手で戦えば良いのにとベルーゼは考えたが、もしかしたらペルがベルーゼの贈った手甲を気に入っているように、このサイクロプスもあの棍棒がお気に入りだったのかもしれないと思い直した。
(それで、あの棍棒が壊れたから怒ってるとか?それは攻撃力とかアップしていそうで嫌だなぁ)
そんなことを考えている間に、サイクロプスが結界へ腕を振り下ろす。
ドゴーンッ!と、凄い音はしたものの、結界はどうにか持ちこたえたようだ。
だが、結界を維持しているベルーゼには、あの攻撃を防げるのはあと一回くらいだろうことが理解出来た。
結界が破れると、次の結界を張るまでに数秒のタイムラグがある。
その間を上手くケインたちに稼いでもらわなければならない。
初めて感じる命のやり取り特有の緊張感に、ベルーゼの頬を自然と汗が伝った。
いや、汗が伝うのは何も頬だけでは無い。背中や掌なんかも汗で湿っている。
こんなものは、好き好んで味わうものでは無いと、ベルーゼは出かける前の自分へ忠告したい気分になった。
その間にも、サイクロプスが再び腕を振り上げる。緩慢なその仕草をベルーゼたちは固唾を飲んで見守るしかない。
そして、そんな彼の目の前で、サイクロプスの攻撃を再度防いでくれた結界は粉々に砕け散った。
ベルーゼは急いでスキルの再試行を試みるも、サイクロプスが振り下ろした腕をそのままなぎ払おうとしているのが見えた。
これは間に合わないかもしれない。
そう思っていると、遠方にいたケインとマシロが同時に魔法をサイクロプスへ命中させる。
これで、どうにかサイクロプスの意識があちらにいってくれれば間に合う。
そう考えたベルーゼだったが、サイクロプスに取っては蚊に刺されたようなものだったのか、全く意にも介した様子は無く。そのまま腕を振り抜いた。
「グッ!」
「ベルーゼ!」
「ブモッ!」
スキルの発動が間に合わないことを確信したベルーゼは、自分の守備力の高さを頼りに、ペルと火牛の前に出て庇う。
その衝撃の凄まじさに、意識が飛びかける。
しかし、彼は自らをストッパーにしている一瞬の隙に、ギリギリで結界を再度張ることに成功した。
(背中が焼けるように痛いけど、どうやら死ななかったみたいだ)
人生でこれほど頑丈で良かったと、思ったことは無い。
そう感じてしまうほどに、サイクロプスの攻撃は強力だった。これを受けて生きていられるのは一重に防御力の高さとランクのおかげだろう。
だが、周りの心配は相当なものだったようで、ペルと火牛が大慌てで彼の側へと寄ってきた。
「ベルーゼ、ベルーゼ!」
「ブモー!」
「ありがとう、二人とも。ちょっと背中が痛いだけだから、大丈夫だよ」
「デモ!」
泣きそうな声を出しながら必死でベルーゼへ回復魔法をかけるペルと、心配そうに頭をスリ寄せてくる火牛へベルーゼは笑顔を向ける。
それは彼らを安心させようと思っての行動だったのだが、どうやら余計に心配させてしまったらしい。
ペルが益々泣きそうな声をあげ、火牛も申し訳なさそうな表情で俯いてしまった。
「ベルーゼ!大丈夫か!」
「父上!」
ベルーゼがどうやってこの二匹と、恐らく遠くで心配しているだろうケインとマシロを宥めようかと考えていると、待ちに待った救援の声が聞こえてきた。
慌てて声のした方を見ると、ダスターがまるで鬼神もかくやといった表情でこちらへ駆けてきていた。
「おのれ!よくもワシのベルーゼへ怪我をさせたな!粉々に砕いてくれる!!」
「あー、やばい」
あれは完全にキレている。
鬼のような形相の父親に、ベルーゼはこれはこれで後が大変そうだとのんきな感想を抱いた。
一方、キレたダスターは、護衛の兵士たちを置き去りにしてサイクロプスの元へと走る。
そんな彼の足となっている馬が死にそうになっているのを見て取り、ベルーゼは心底申し訳なくなった。
あれは確実にベルーゼが危ないと聞いて馬に無理をさせたに違いない。
(後でしっかり労ってあげないと)
そんなことを考えている間にも、サイクロプスはダスターを無視してベルーゼたちの方へと攻撃を加えようとしていた。
どうやら、新たに現れた強敵よりも、目の前にある獲物の方が彼にとっては重要らしい。
しかし、その攻撃はベルーゼたちが時間を稼いでいる間に兵士たちが作り上げた強力な魔法が阻止した。
「「「サンダーボルト!!」」」
「ガアアッ!」
「俺のことも忘れるなよ!突火爆散」
サイクロプスは兵士たちが放った雷の楔により、手足を地面に縫い付けられて動けなくなった。
その間にたどり着いたダスターが、止めとばかりに重い一撃をサイクロプスの胴体へと叩き込む。
突火爆散は、敵の身体へ突き立てた斧を介し、ダスターの魔力全てを注ぎ込んだ炎を送り込むという技だ。
ダスターは魔法を使えないが、魔力が無いわけでは無いし、属性への適合が無いわけでもない。
ただ、魔法を発現出来るほど、魔力の扱いが上手く無いだけだ。
彼の能力は魔法を使うには向かないが、突火爆散のように、物理攻撃からの連携技として使えば、有効な手段に変わる。
初めて見るダスターの奥義に、ベルーゼは呆然と見とれる。
(やっぱり父上はカッコいい!)
そう改めて実感した。
炎に体内を焼き尽くされたサイクロプスが、確実に絶命したことを確認すると、ダスターが素早い動きでベルーゼの元へとやってくる。
「大丈夫か、ベルーゼ!怪我は!?」
「大丈夫です、父上。背中は痛みますが、内蔵や骨には異常無いみたいですから」
「本当か?ちょっと見せてみろ」
軽く身体を動かしてみた感覚から正直な見立てを進言したのだが、ベルーゼの言い分は聞き入れてもらえなかったらしい。
ダスターは心配そうにベルーゼの上着を捲ると、背中を確認した。
「ああ、なんということだ。この白い肌に青あざが出来るなんて・・・」
「傷は男の勲章と言いますし、青あざ程度ならそのうち治りますよ」
「いや、急いで治療しよう。おい、救護班はまだか!」
まるでこの世の終わりのような声を出すダスターに、ベルーゼが努めて明るい声で答えたが、またもその言葉が聞き入れられることは無かった。
まるでか弱い少女のような扱いをされ、ベルーゼは少しムッとする。
だが、最近はベルーガから教わった小悪魔術を使用しているため、彼はあまり文句を言える立場では無いのかもしれない。
そんな中、慌てて駆けつけた回復魔法が使える兵士によってきちんとした治療が施される。
背中をべろんっと捲られるのは、ベルーゼも恥ずかしいが、断れるような雰囲気では無いので大人しく治療されるしかない。
「ガウッ!」
「きゅ?」
治療が終わる頃。漸くケインたちもやって来た。
ケインは珍しく不安そうに耳を伏せ、マシロも心なしか落ち着かない様子だ。
どうやら二匹もベルーゼが心配であるらしい。
そんな二匹を安心させるため、ベルーゼが優しく語りかける。
「お帰り、二人とも。大丈夫、ちょっと打っただけだから」
「ダイジョウブ、チガウ!セナカ、アオイ!」
「ブモー」
だが、ベルーゼの言葉に、ペルがキッと目をつり上げる。その上、それに同調するように火牛までもが声をあげた。
ダスターも治療してくれている兵士さえもがペルの意見に賛成のようで、ベルーゼは四面楚歌状態だ。
ここでまた何か言えばまた怒られるか、心配される未来しか思い描けない。そのため、ベルーゼは言いたいことが多々あったものの、黙っておくことにした。
治療の結果。ベルーゼの背中へ出来た青あざは綺麗に治った。
それでようやく安心したらしいダスターが、今度はなんであんな無茶をしたのかと怒り始める。
「お前は前線には出ない、そういう約束だっただろう!」
「ごめんなさい、父上。俺もそのことは反省しています。でも、後悔はしていません。この子を救うことが出来ましたから」
「お前というやつは!・・・・・・・・・はぁ、もう良い。お前はそういう性格だと諦めよう」
怒りからか拳を握りしめたダスターを見て、ベルーゼは殴られることを覚悟した。
だが、何を思ったのか、ダスターは大きなため息を吐くと、その拳を解いて疲れたような表情をした。
しかし、直ぐに厳しい表情へと戻ると、ベルーゼを見据えてくる。
「だが!死ぬことは決して許さん!何があろうとも、絶対に生き延びろ。俺に、二度と家族を失う孤独と絶望を味あわせないでくれ」
「・・・!はい、父上。誓います、俺は絶対に父上より早く死にません」
「なら、良い。・・・・・・・・・行こう、ポルンたちにも報告せねばならんからな」
「はい」
踵を返した父の背中が何故だか小さく見え、ベルーゼは思わずダスターに抱きついた。
そんな息子を、ダスターは無言で抱き直し、そのまま馬へと乗る。
横を歩くペルが複雑そうな表情をしているが、気を使ったのか、何も言わなかった。
その優しさに甘え、ベルーゼは暫し最愛の父とのタンデムを楽しむことにした。
普段、ベルーゼの前ですら弱いところを見せようとしない父が吐いた小さな弱音。
(それを汲み取って気持ちを軽くしてあげるのは、俺の仕事だ。いや、むしろ他の人には渡したくない)
だから、父が少しでも元気になれるよう。母がいない寂しさを少しでも埋められるようにと、ベルーゼは思いのたけを込め、ぎゅっと強く父親の手を握った。
ここまで閲覧していただき、ありがとうございます。
思った以上に長くなり、途中で力尽きかけましたが、どうにか書き上げることが出来ました。
後、本文中に入れることが出来なかったので補足しておくと、Sランクのサイクロプス相手に火牛が早々に殺されていなかったのは、サイクロプスが遊ぶために加減をしていたからです。
そうでなければ一瞬で肉塊にされています。
この辺の細かい設定もそれとなく文章に入れれれば良かったのですが、拙い技量で申し訳ない。




