第21話
先王たちの元を訪れてから、更に2年が経過した。長い時間をかけて徐々に慣らしてきたお陰か、最近はダスターも大分子離れしてきている。
ベルーゼの方も、ダスターから離れていても1日くらいなら平気になっているので、そろそろ実戦訓練の話を持ちかけ直す頃合いだろう。
だが、ダスターたちの過保護さを抜きにしても、ベルーゼの立場上、そう易々とは護衛無しで外になど出して貰えない。
この状況を如何に打開するかで、ベルーゼは未だに頭を悩ませていた。
別に、護衛無しなことに拘る必要は無いだろうとも思うのだが、どうにも城の者たちは一部を除いてベルーゼに甘いため、ベルーゼは、護衛が付くと何もさせて貰えなさそうな気がしているのだ。
そうならないためには、どうにかして自分たちの実力を認めさせる必要が有るだろう。
さて、どう話を切り出したものか。そう悩んでいた時、ポルン王子からの救援要請がドワーフ王国へと舞い込んで来た。
その内容は、Sランクのサイクロプスが領内へ現れ、動物たちを殺し回っているというものだ。
農業で生計をたてているホビットたちにとって、大事な家畜を襲われるかもしれない事態は存亡の危機にもなりかねない。
だからこそ、確実に対応してもらえるようにと、ダスターのもとへ直接手紙を持った使者がやって来た。
よほど慌てていたのだろう。
その使者であるホビットは、動物を大切にする彼らには珍しく、瀕死になるほど馬を急がせて城へ駆け込んで来た。
その兵士の姿に、サイクロプスの脅威を知らないベルーゼにも、大変な事態であることくらいは分かった。
後からロシンに確認してみたところ、やはりサイクロプスはとても強い魔物であるそうだ。
あまり頭は良く無いが、体格の良さと力の強さを活かした戦い方をする。
こことは別の大陸では、サイクロプス一匹のせいで滅んだ国もあると聞き、ベルーゼは背筋が寒くなるのを感じた。
この大陸のモンスターは基本的にドワーフ王国が間引きしている。
そのため、あまり強いモンスターは生まれ難いのだが、たまにこういう個体が出てきてしまうものらしい。
そういう時に被害が拡大しないよう駆除するのも、この国の大切な役目だ。
そのことを誰よりも理解しているダスターは、知らせを聞いて直ぐに判断を下す。
「早速討伐へ向かう。急ぎ準備せよ」
「御意」
ダスターの言葉を聞いた将軍が、準備のために足早に立ち去る。
その姿を見送ることもなく、ダスターも準備をするために立ち上がった。
情報によると今回の相手は一匹らしいが、Sランク相手に油断は禁物。
そのため、この国で唯一単独でもスキルでSランクと渡り合うことが可能なダスターが、軍を率いて出向くことにしたようだ。
いつになく真剣な表情の父親に緊張しながら、ベルーゼは思い切ってダスターに声をかけてみる。
「あの、父上」
「ん?どうしたベルーゼ」
「・・・・・・・・・足手まといなのは承知の上でお願いします。俺も、俺たちも連れて行って下さい!」
「良いぞ」
「えっ?」
断られるとばかり思っていたベルーゼは、二つ返事で了承したダスターに拍子抜けする。
そんな息子の様子に苦笑いしながら、ダスターは、ベルーゼの頭をポンポンと叩いた。
「ワシもこのままではお前のためにならないことは分かっている。だから今回は同行を許可しよう。ただし、絶対に前線には出るな。あくまでお前たちは負傷者の治療に専念しろ。・・・今後は、モンスターの討伐へ向かう兵士たちに回復要員として着いて行くことならば許可しよう」
「・・・っ!ありがとうございます父上、俺頑張ります!」
嬉しさのあまりテンションが上がり過ぎているように見えるベルーゼ。
そんな彼に、ダスターは複雑そうな表情をしつつ、絶対に前線には出るなと念を押した。
それに深く頷きながらも、ベルーゼの心はこれまでに無いほど高揚していた。
だが、ベルーゼとて相手がサイクロプスとなれば、前線に出るような無茶をするつもりは無い。
(次からは護衛付きとはいえ実戦に参加出来るんだから、ここで無茶をしてご破算になるのは嫌だもんね。熱くなって失敗しないように注意しないと)
これをきっかけにまた少しずつ周りの説得と戦闘訓練を行い、前線に出せる戦力として考えて貰えるようにすれば良い。
そう、舞い上がり過ぎている自分を宥めるように思考する。
それでも頬が緩んでしまうのを、ベルーゼは止めることが出来ないでいた。
そこへ、ケイン、ペル、マシロの三匹がテコテコとやって来た。
「ガウッ」
「よしよし、ケイン。初めての戦闘だ、俺たちは足手まといにならないように気をつけような」
「ガウ?」
「グルルル」
「ガウッ!」
ベルーゼ同様、戦闘に出られることが嬉しいのか、ケインが尻尾を振り回しながら飛びついてくる。
それを撫でながら、ベルーゼはケインがはしゃぎ過ぎて前線に出てしまわないよう、忠告することにした。
それにケインは首を傾げていたが、最近通訳役が板についてきたペルが、ケインだけでなく、我関せずといった風情で余所見をしていたマシロへも通訳ついでに厳重に言い聞かせているようだ。
それでようやく理解したのか、ケインは元気の良い返事を返してきた。
(分かってるのか凄く不安なんだけど、まあ、大丈夫だろう。たぶん、きっと、大丈夫だと信じたい)
ケインの態度に一抹の不安を抱いたものの、ひとまず部屋に戻って支度を整えることにした。
ベルーゼの防御力は正直並みの防具以上なので、彼には必要無いものだが、そこは気分の問題だ。
あった方が気持ちが引き締まる気がしたので、付けることにした。
後は武器としてよりも魔法を使う際の触媒の意味合いが強い杖を持ち、ペルやケインたちにもモンスター用の簡易な防具を身につけさせて、いざ出発だ。
ここまで閲覧していただき、ありがとうございます
今回用に書いていた話が加筆修正していくうちに長くなってしまったので、今回と次回分に分けて投稿することにしました。
ただ、切りの良いところで分けたら今度は今回分が短くなり過ぎてしまいました。申し訳ないです。
次回分は、もう一つ連載している方の話を投稿してから投稿させていただく予定なので、いましばらくお待ちください。




