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魔王陛下の目指せ!モフモフパラダイス  作者:
第1章 幼児期編
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第20話

 ベルーガに秘技を伝授されてから1ヶ月。

 彼女から教わった方法はベルーゼの想像以上に効果が高く、早くも一番頭を悩ませていたケインはベルーゼの言うことを聞いてくれるようになったし、ペルもベルーゼからの言葉をケインとマシロへ通訳してくれるようになった。

 特に、ペルの通訳はあらゆる動物に有効であったため、動物を触らせて貰いやすくなったことはベルーゼにとって良い誤算だ。


 マシロだけは始めの内、やや冷めた反応をしていたのだが、ベルーゼに絆されたのか、近頃は甘えてくれるようになっている。

 ただ、言うことを聞くほどは懐いてはいないため、自分の気が向くままに生活しているので油断は出来ない。


 つい先日も、外に出かけたまま帰って来ず、城の兵士を動員して大捜索劇を繰り広げるはめに陥った。

 ペルとケインの鼻をたよりに見つけた先で、大量の犬に囲まれているところを発見した時には肝を冷やしたものだ。

 ペルの通訳によると、どうも美味しそうな木の実の匂いを感じて城の兵士に着いて行き、そのまま城下町まで出て行ってしまったらしい。


 その上、途中で犬に見つかり、ただの兎だった時の名残で本能のままに逃げ出したは良かったが、いつの間にか追いかけてくる犬の数が増え、恐慌状態に陥ってしまったそうだ。

 後のことは本人もよく覚えていないそうだが、ベルーゼたちが発見した時には広場の隅に生えた木の根部分に深い穴を掘り、その中で籠城していた。

 犬たちを追い払うよりも、深く、入り組んでいるその穴からマシロを引っ張り出す方が大変だったくらいなので、よほど必死に掘ったのだろうと、ベルーゼはマシロを哀れに感じた。


 だが、そう感じたのはベルーゼだけだったようで、ケインは怯えるマシロに構う事無く、遊べ遊べとベルーゼとマシロへちょっかいをかけようとするし、ペルは、ベルーゼに抱かれているマシロへ射殺しそうな目を向けた。

 おかげで、余計に憔悴してしまったマシロを回復させるため、ベルーゼはその後1日がかりでマシロのカウンセリングをするはめになってしまった。


 その時には最終的に、心を開いたようにベルーゼの手に甘えていたマシロだが、普段は触ろうとするととても怒る。

 だが、放置されるのは寂しいらしく、ベルーゼがマシロに構わないでいると、いつの間にか近くへ寄ってきていたりする。


 しかし、決して自分からすり寄ったりはしない。あくまで、触らせてやっても良いんだぜ?という態度を崩さないのだ。

 それでいてそのまま放っておくと拗ねて暴れるのだから、非常に面倒くさい。


(まあ、そんな面倒くさいところがまた、可愛いんだけどね)


 初めて体験するツンデレの反応に、ベルーゼはげんなりするどころか、寧ろテンションが上がって仕方がない。

 兎と言えば寂しがり屋なイメージだった彼としては、マシロの意外性がツボにきたようだ。

 そのため、ついつい構い過ぎては本人やペルから抗議されている。


 そんな社交性の低いマシロは、訓練にしてもあまり積極的ではなく、ケインとペルが絡んでくるから仕方なく参加しているといった雰囲気だ。

 それでも貴重な前衛要員であるし、なにより、スキルのお陰で急所への攻撃が当たりやすいのはベルーゼとしては魅力的だ。

 ケインがよく彼からの攻撃を鳩尾に喰らい身悶えている。

 ただ、ペルは持ち前の素早さを生かして上手く避けているようなので、動きが素早い相手に攻撃を当てるのはまだ難しいようだ。


 しかし、肉食系の動物への恐怖が抜けきらないようなので

 それをいかに克服させるかが今後の課題だろうと、ベルーゼは頭を悩ませている。

 因みに、どうやら最初の時にダスターたちに脅されたことがトラウマになっているらしく、いくら訓練だから大丈夫だと言い聞かせてもマシロは断固としてベルーゼへ攻撃してくることが無い。

 一度、無理を言って攻撃させようとしたのだが、顔色を悪くしてガタガタと震え始めたため、それ以来させていない。


 また、せっかく人数が揃ったのだからと、最近は1対1の訓練よりも、四つ巴の混戦や二人一組のパーティー戦訓練に専念している。

 訓練の合間や終わった後に回復魔法をかけるので、マシロ以外は回復魔法の扱いにも慣れてきた。

 回復要員としてなら、戦場に出ても問題が無いと兵士たちからもお墨付きを貰っている。

 ベルーゼとしては、使える攻撃魔法の幅も増えたため、やはり一度は実戦訓練がしたいところだ。


 以前はにべも無く断られてしまったが、そう簡単に諦めるようでは魔王の名が廃る。

 そう奮起したベルーゼは、実戦訓練の実現へ向けて、着々と準備を進めている最中だ。

 準備といっても、武器の用意などといった方向では無く、ダスターや家臣たちといった過保護な者たちを懐柔するべく色仕掛けを敢行しているのだ。


 これについても、ベルーガから教わった手法がとても役にたっているため、その内良いものが手に入ったら、お礼として装飾品などを彼女へ送ろうと考えている。

 最近はダスターから魔道具作りも教わっているので、自作するのも良いかもしれない。




 そんなことを考えつつ、ケインがマシロへと襲いかかろうとしているところへ土壁を展開する。

 今はペルとケイン、マシロとベルーゼに別れてパーティー戦の訓練中だ。

 思惑通りケインが土壁へ衝突して動きが止まる。そこへすかさず水球を放とうと詠唱を開始するが、ケインを囮にしていたペルの方が一足早く詠唱を終え、ペルの作り出した風の刃がマシロへと襲いかかる。


 それを上手く避けられれば良かったのだろうが、マシロは身が竦んでしまったらしく、動くこともままならないようだ。

 そのため、ベルーゼは攻撃を諦めると、瞬時にスキル『絶対領域』を使い、結界の中へマシロを入れる。

 そのついでに敵認定をしておいたケインとペルを結界の範囲外へと押しやった。


(これで少しは時間が稼げたはずだ)


 今のうちにと、すっかり腰が抜けているらしいマシロを拾い上げ、ケインたちから距離を取る。

 マシロは攻撃力は期待出来るのだが、やはり犬と猫の大型版であるケインとペルが牙を剥くと恐怖心が刺激されてしまうようだ。

 だが、初めは近づくだけで気絶していたのだから、気を失わないだけ成長したと言えるだろう。

 

 今は兎に角、彼が復活するまでの時間を稼がなくてはならない。

 ベルーゼはある程度の距離を取ると、一旦結界を解除して素早くペルたちの周りに土壁を張り巡らせる。

 攻撃力が低すぎるベルーゼは水球などを放つよりも、得意な防御魔法の土壁を張り巡らせる方が余程足止めとして役に立つ。

 事実、ペルたちも防御力の高い土壁を壊せずに苦戦しているようだ。


 この時間を上手く使わなければこちら側はジリ貧。そう正しく理解しているベルーゼは、急いで懐に隠していたマシロを取り出すと、彼に癒やしの水を使う。

 怪我をしているわけでは無いのだが、回復魔法には少し精神安定の効果もある。これで少しはマシロも平静を取り戻してくれるはずだ。


「マシロ、頑張らないと本当にケインの餌にされちゃうかもしれないよ?」


 ピルピルと震えて周りが見えなくなっているらしいマシロを正気に戻すため、ベルーゼの言葉はわざと脅すような言葉を投げかける。

 その言葉に、マシロが可哀想なほどびくりと大きく震えた。

 怯えた瞳に罪悪感を抱きながら、ベルーゼはマシロに発破をかけるためだと、心を鬼にして言葉を続ける。


「それに、ここで頑張ってくれたら俺、何でも一つだけお願いを聞いてあげるんだけどな」


「っ!」


 ベルーゼの言葉に明らかに反応をするマシロへ、ベルーゼは内心ほくそ笑む。

 声帯が弱いらしく、滅多に鳴くことの無いマシロだが、その分身体で感情を示すため、三匹の中でもケインに匹敵するほど考えていることが分かりやすい。

 そのせいで戦闘訓練では狙いをペルやベルーゼに悟られてしまうことが有るためあまり良いこととは言えないが、少なくとも意志の疎通を図る上では役にたっているため、一概に欠点とは言えない。


 爛々と目を輝かせているマシロに、恐らくご馳走を期待しているのだろうとあたりをつけつつ、ペルたちへ意識を戻す。

 その視線の先では、ケインを踏み台にすることでようやく土壁の檻から脱出したらしいペルがベルーゼたちの方へと飛び出そうとしていた。

 そんなペルへ牽制として水球を放つ。


「マシロ、頼んだよ」


 水球に紛れて飛び出して行ったマシロに小さく言葉をかけた後、ベルーゼは彼を後押しするべく、新しく覚えた闇魔法『黄泉への誘い』を唱える。

 これは対象者の影を操り、相手をその場へ一時的に縫い止めるという、詠唱に少し長く時間がかかる割に名前負けしているように思える技だ。

 だが、ベルーゼが使うそれは相手の影だけでなく、周囲の影も操ることが出来るため、黒色の触手のような怪物が一気に襲い掛かっているように見え、見栄えだけは良い。


 その触手をペルが魔力吸収で上手く捌きつつ真っ直ぐに突っ込んで来る。

 このままいけば、後20秒もしない内にベルーゼのもとへとたどり着くだろう。

 

 しかし、その横からベルーゼが操作した影の触手によって運ばれたマシロが必殺の跳び膝蹴りを放つ。


『グルルル!』


 影を処理することに夢中でマシロへの注意が疎かになっていたらしいペルが、諸に攻撃を脇腹に喰らって唸りを上げる。

 そのまま怒りに任せてマシロへ食らいつこうとしていたため、ベルーゼはペルの口へと急いで影を押し込んでそれを止めた。


「はいっ!そこまで」


『グルルルルッ!』


「ダメだよ、マシロは仲間なんだから本気で襲っちゃ駄目。何時も言ってるでしょ」


 肉食動物としての本能なのか、どうしてもペルとケインは興奮すると手加減を忘れてしまう。

  おかげで、ベルーゼは常に彼らがやり過ぎてしまわないように見張らなくてならない。

 その分周囲の探査能力が身についてきているから無駄では無いが、何となく損をしている気分になるベルーゼだった。


ここまで閲覧していただき、ありがとうございます


今回は苦手な戦闘シーンの練習として、下書きの時には無かったはずの戦闘訓練を書き足してみました。

書くのに時間がかかった割にしょぼくて申し訳無いです(汗)

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