第14話
投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。
ドワーフ王国へと戻ってきたベルーゼは、早速ギルドに所属していると言う人間の医者を呼び、ケインの後ろ足について相談した。
その結果、やはり手術などを行うよりも、リハビリを行うことで歩行能力の改善を目指す方が良いとの結論に至った。
この世界の医療技術では一つに融合してしまっている足を二つに分けることは難しいし、融合している膝から先を切除しても、義足に適合出来る可能性は極めて少ないらしい。
ベルーゼは知らなかったが、この世界の義足は魔法道具の一種らしく、魔法で動かす仕組みとなっている。
そのため、上手く適合すれば自分の手足同様に操ることが可能だが、適合しなければ動かすことすら出来ないうえ、魔力をかなり消費するため、魔力の少ない低ランクの魔獣には身体への負担が大きく命に関わる恐れもある。
それならばまだ、このままの状態で歩けるように訓練した方が良いというのが医者の見解だ。
ケインは生まれた時からこの状態なのだから、ヤタガラスのように元々三本足の生き物であると考えれば良いということらしい。
その言葉に、ベルーゼは目から鱗が落ちるような心地がした。
彼の中には犬は四本足だという固定概念があったが、確かに元からそういう生き物ならば問題は無いはずだ。
幸い、ケインはまだ赤ん坊(進化してとてもそうは見えない大きさになったが、元は赤ん坊なのでその扱いだ)なので、これからいくらでも鍛えようがある。
そうと決まれば早速実行だと、ベルーゼたちはその日からケインの歩行訓練を開始した。
勿論、それと並行してベルーゼは呂律が回るように練習し、ペルは回避訓練を行っている。
回避訓練については、ケインもある程度動けるようになると自ら参加し始めた。
どうやら、一人だけ除け者にされていると感じていたようで、悲痛な声で訴えてきたため、ベルーゼは無碍に出来なかったのだ。
始めた当初は魔法に当たりっぱなしだったケインだが、彼は直感には優れているようで、暫くすると反射で避けるようになった。
頭の良いペルなどはそのことを利用し、ケインが反応を示した方へ魔力吸収の魔法を展開するなどの工夫を行っている。
だが、それはあくまで利用しているだけであり、まだ連携と言えるほどのものでは無い。
ここから技術と絆を高め、いつかはお互いの短所を補い、長所を生かせる関係になってくれたらとベルーゼは思う。
「グルルルル。ジャマ!」
「ガウガウッ!」
訓練が終わり暇になったのだろう。
ベルーゼに遊んで欲しいとケインが纏わりつき、ペルがそれを険悪な表情で引き剥がす。
しかし、どこまでもポジティブ思考のケインは遊んでもらったと勘違いしたらしく、楽しそうにじゃれている。
それを心底嫌そうにあしらうペルの様子からは、連携は遠いように感じた。
ひとまず、自分も戦闘に参加出来るようになって二人をサポートしよう。
そう考えたベルーゼは、そこからより熱心に滑舌を良くする練習を行った。
早口言葉や発声練習など、考えられる限りの方法をひたすら試した。
そんな努力が実り、7歳を目前にしたある日、ようやくロシンから魔法を使って良いという許可が下りた。
そうなれば一刻も早く使ってみたいと考えるのが人間というもの。
ベルーゼは明日を待ちきれない!と、夕食後だというのに無理を言って訓練場へと飛び出した。
「ベル、ガンアレ」(ベル、頑張れ)
「ガウッ!」
「ベルーゼ様、落ち着いてよくイメージをしながら呪文を唱えてください」
「ロシンの言う通り、魔法の行使にはイメージが大事らしいからな。使う魔法をしっかり頭に思い描け。それと、けっして無理はするなよ。魔法は扱いを誤れば大惨事になりかねんからな」
「はい!父上。そのことは胸に刻んでおきます」
心配して着いてきたダスターたちの声援をうけながら、ベルーゼは生まれて初めて魔法を使う。
自分のこれから使う魔法の理論を思い出しつつ、どういう魔法を放ちたいのかイメージを固める。
「降り注げ、水球!」
ベルーゼが唱えた呪文に伴い、拳大より少し小さいくらいの水の塊が的代わりの案山子へと降り注ぐ。
その数は九つ。初心者にしては中々の数だろう。
イメージ通りに魔法が発動したことに、ベルーゼはほうっと、息をついた。
ベルーゼの攻撃呪文には殆ど攻撃力が無いが、皆無という訳ではない。
一つ一つのダメージは小さくとも、塵も積もれば山となる。
そのことを、死にかけていたケインを治療するペルの様子から学んだベルーゼは、攻撃時には数で勝負することにした。
そのために打てる魔法の数を増やす方法を頭に叩き込んでいたため、どうせならと試してみたが、上手くいって良かったとベルーゼは胸を撫で下ろす。
幸い、ベルーゼには大量の魔力が有るので、制御さえ覚えれば数千の水球を降り注がせることも理論上は可能なはずだ。
それだけの攻撃を受ければ、傷は浅くとも足止め程度にはなるだろう。
その間にペルやケインに攻撃して貰えば相手の隙を突ける、というのがベルーゼの考えだ。
どうやらその考えは当たっているようで、少しではあるが、今の攻撃で練習用の案山子に傷が付いている。
「塞げ、土壁」
水球の成果に満足したベルーゼは、そのまま次の魔法を唱える。次に唱えたのは、彼が最も得意な防御魔法。
これは、読んで字のごとく、任意の場所へ土の壁を作り出すというものだ。魔力の量によって硬度や大きさが変わるため、自分の防御だけでなく、敵を包囲することも出来そうだとベルーゼは睨んでいる。
唯一の特技なので、ベルーゼとしては防御系の魔法は誰にも負けないと言えるレベルに極めたい。
そのためには、防御以外への流用も出来るように工夫を施す必要があるだろう。
出現した土壁の強度をダスターに攻撃してもらうことで確かめ、改良点などをロシンに相談する。
そうして一通り審議を終えたところで、いよいよ今覚えている最後の魔法、回復魔法を試すことにした。
だが、これに関してはどれくらいの効果があるのか見なければ分からないため、実験台になってくれる者が必要だ。
そのことに今更気づいたベルーゼは、ばつの悪さを感じて頭を掻く。
(仕方ない。兵舎あたりから、誰か適任者を探して来てもらおう)
そう考えてダスターたちの方を振り返る。
そこでふと、ベルーゼの魔法をキラキラした目で見つめているケインへと目をやった。
その身体には、ペルへちょっかいをかけて返り討ちに合った際に出来た小さな傷が沢山ある。
これは丁度いい実験台と言えるだろう。
「かの者へささやかな癒やしを」
早速ケインを側へ呼びよせると、面白くなさそうな顔をするペルへ苦笑した後、呪文を唱える。
そうして滴り落ちた一滴の水。
それが触れた途端、ケインの体に出来ていた傷が塞がっていった。
しかし、傷の数が多かったことと、もともとそれほど効果が高くない魔法のため、全てが治ったわけでは無い。
(ふむ。やっぱり俺の回復魔法も数でカバーしなきゃダメみたいだな。まあ、ペルより回復魔法への適性低いんだし当然か)
だが、ケインもベルーゼよりは回復魔法への適性があるため、得意な光属性の「癒やしの光」という「癒やしの水」と同等の下級回復魔法が使えるように訓練をしている最中だ。
彼も回復魔法を使えるようになれば、効果が小さいとは言え、パーティに回復魔法が使える者が三人いることになるため、何かと重宝するはず。
ひとまず、ベルーゼは防御系魔法の習得と回復魔法の扱いを中心に訓練し、他の二人に攻撃魔法と回復魔法を習得させればバランスが取れるはずだ。
魔法の試し打ちで得た成果を鑑みて改めて今後の方針を立てたベルーゼは、翌日から回避訓練の際に城の兵士に魔法を使って貰う方法を止め、自分たちでお互いに魔法を掛け合う方法へと訓練内容を変更した。
初めは魔法の扱いが下手なので避けたり防御したりする訓練にはならないだろうが、魔法が上手くなれば十分その訓練にもなるはずだ。
ベルーゼから訓練内容の変更を告げられた兵士たちが伴侶から三行半を突きつけられた者のような悲壮感溢れる表情をしていることにも気付かず、ベルーゼは晴れやかな表情で訓練を開始するのだった。
ここまで閲覧していただきありがとうございます。
お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
活動報告へは一応記載させていただいておりましたが、もう一つ連載している話の投稿などをしていたらこちらの投稿がより遅くなってしまい申し訳ないです。
次からはここまでお待たせすることは無いかと思うので、これからも閲覧していただければ幸いです。




