暗殺未遂
「……………」
ヒカナは目をさました。
体が鉛の様に重い。頭がぼーっとする。
「ここは?」
顔を動かし周囲を確認する。
顔を右に動かすと私の寝ているベッドの端に突っ伏す1人の人物。光を受けて輝きをおびる綺麗な黒髪の男性。彼は……
「ロークズ様……」
ヒカナのつぶやきに彼はハッと起き上がり、彼女をしばらく見つめると、泣きそうな顔でギュッと抱きしめた。
「よかった」
「ロ、ロークズ様!」
ロークズの突然の行動に赤面して慌てるヒカナ。
(ロークズ様に抱きしめられちゃったわ。嬉しい。
それに意外と筋肉質でたくましい……お貴族様って筋肉質なイメージ無いから意外だわ)
「わ、悪い。思わず……」
真っ赤なヒカナに気付きロークズは慌てて彼女から離れる。
数秒の沈黙の後にロークズは頭を下げ語りだす。
「すまなかった。どうやら料理に毒が盛られていた。屋敷の者の誰かが私と君との関係が許せなかったようで、君を狙って……
容疑者は全て拘束済みだ。これから、ごう……尋問してでも犯人を見つけ出して裁く」
ロークズが怒りを滲ませてヒカナに宣言する。
コンコン。
部屋がノックされる。
「失礼します」
この屋敷のメイド長がやって来る。彼女の手には赤い液体が入った小瓶。
ヒカナはメイド長の持つ小瓶を見つめ、
「それは?」
「霊薬です」
「えっ!」
メイド長の言葉に目を丸くするヒカナ。
エリクシールの入った小瓶をヒカナに渡して彼女は告げる。
「使われた毒は強力なもので回復するまで引き続き内服していただきます」
「エリクシールなんて高価なものを何度もなんて……」
平民のヒカナでもエリクシール1本で王都の一等地に豪邸が建てられる程に高額だと知っている。
恐縮するヒカナにロークズは静かに言う。
「今回は使用人が仕組んだとは言え、防げなかった私の……いやローベル公爵家の落ち度だ。毒の後遺症が残ろうものなら公爵家の面子にも関わる。それに君が苦しむのを見るのはわたしも辛い。だから頼む」
「……わかりました」
言ってヒカナは震える手でエリクシールをメイド長から受け取ったのだった。
エリクシール。
支配階級の以外は意外と知らない事実。
それは…………
エリクシールが、どんな怪我や病気。そして呪いでさえもが、たちまち癒してしまうとてつもない霊薬だということを……
実はヒカナが猛毒で意識を失っている間に【エリクシール】を1本使い彼女は一命を取り留めています。




