平民の少女
「ごめん待ったかい?」
ロークズは馬車から降りて、待ち合わせ相手に声をかける。
王都の貴族街手前の広場。噴水前にロークズの待ち合わせ相手の少女が1人立っていた。
「い、いいえ」
ロークズの言葉に少女は慌てて顔を左右にふる。
「ハハハハ。お前は私の女なのだから……そう緊張するな……」
言って彼は少女の姿を上から下まで見つめ、
「デートの前に先ずは服だな。そんな格好では私の沽券に関わる」
……………
一軒の服屋に入る一行。
服屋に入るなり少女は展示されている新品の服に息をのむ。少女はヒカナと言った。
孤児院育ちのヒカナは中古の服しか持っていない。どんなにいい服でもくたびれ色褪せた継接ぎだらけの物しか所持していないのだ。ヒカナも年頃の少女である。目の前の真新しい服にときめかないわけがない。
「き、綺麗な服……えっ!」
うっとりと呆けるヒカナを現実に戻すは服に付けられた値札タグ。この服1着で2ヶ月くらいは3食お腹一杯食べて生活できる金額だった。
ヒカナは想像以上の金額に1歩後退る。
「ハハハハハ」
ヒカナの様子にロークズは笑うと適当に服を1着手に取り、視線を服の値札タグに向けるとつぶやく。
「値段は気にするな。この程度の金なら10着だろうが20着だろうが我が公爵家にとってははした金だからな」
「はした金」
公爵家の財力の一端を知り衝撃を受けるヒカナ。
「だから好きな物を選びたまえ。
そうだ。私からの贈り物としてデートの度に1着プレゼントしようではないか!」
「こんな高価な物を毎回いただくなんて……そんなおそれ多い」
ロークズの提案に慌てて首をふるヒカナに彼は笑顔からスンとした表情に変えて、
「私のデート相手がみすぼらしい格好をしていては私の……いや、我が公爵の沽券に関わると先程も言っただろう?」
「す、すいません」
「わかればよろしい」
慌てて謝罪するヒカナにロークズは満足そうに頷いた。




