転換
明日から実行に移そうと話を終わらせ、
私はいつもより五時間ほど早い眠りについた。
……
「フルタさん、フルタさん」
声が聞こえる。
目を覚ますと、再び私は古びた図書館のような場所にいた。
声をかけてきたのはアルフォートだった。
「よかった。再び会えました」
アルフォートは言った。
「そうですね」
私は少し混乱していた。
「私は一度睡眠を取ったのですが、その時はつながらなかった。これは二度目の睡眠です」
アルフォートは言った。
「私もです」
しかし、先ほどまでアルフォートの役をしていたから、混乱する。
「先ほどまでフルタさんの役をしていましたから、本人に会うと混乱しますね」
「同じ事を考えていました」
「はは。そうですか。それでフルタさん。結構厄介なことになったかもしれません」
アルフォートの記憶と私の記憶が混ざりあう。
「おぉ、そんな展開になったのですか」
「フルタさんこそ。盗賊を雇用ですか。それは実に面白い」
「これは再会する際に、お互いの記憶が融合しあうというシステムなようですね。
あっシステムってわからないですよね」
「大丈夫です。フルタさんの記憶がありますから、理解できます」
「すみません。記憶上拒否反応がなかったので、実行しましたが、問題なかったですか?」
「はい。全然問題ないです。セコイアにあんな仕事任せられたなんて、驚きました」
「彼女はどうも優秀なようで、頼りになりました」
「そうだったんですね。私はただの侍女とばかり、いえ。低く見てるわけではないのですよ」
「もちろんわかります。アルフォートさんも、部下の使い方が上手くて、少々ショックを受けています」
「それはこちらも同じです。
言われてみれば、理解できますが、情報同士をつなぎ合わせる感覚は私にはありませんでした」
「ところで、再会したという事は、それぞれ元の世界に戻るのでしょうか?」
「そうかもしれませんね」
「あの、これから先のプランとかありましたか?」
私は尋ねた。
「いえ。申し訳ないです。流れるままにしていました」
「全然。それはこちらも同じですから」
「じゃあ。また元に戻っても、流れるままで良いでしょうか?」
「私は構いません。アルフォートさんは?」
「私も構いません」
「そうですか……、いつ切り替わるんでしょうね」
「そうですね。どうするのでしょう」
私達は沈黙を続けるが、
何も変化がなかった。
「どうしましょう」
「どうしましょう」
「あのご趣味は?」
「何か見合いのようですね」
「本当に。暇を持て余すと、人はこうなるのですね」
「そうですね。
いつもは頭の中は仕事でいっぱいでしたから、頭の中が空くと、どうしたら良いのかわからないのでしょうね」
「私は仕事中毒だと思ってましたが、どうも違うようだ」
「どう違うのですか?」
「恐らく空白が怖いのです」
「空白が?」
「はい。きっと埋めたくなるのでしょう」
「間が空くと、変な事をしゃべってしまう。あの感じですか?」
「わかりますか?」
「わかります。私達は似ているのかもしれませんね」
「そういえばソウルメイトとか言ってましたね」
「あの。お互いに流れ的には問題ないと思ってて良いですか?」
「もちろんです……、しかし変化がないですね」
「そうですね。私、今が一番緊張しているかもしれません」
「あぁ確かに。私もです」
「おかしいですね」
「おかしいですね」
(ぴんぽんぱんぽん)
「それでは再び移動します」
……
(こんこんこん)
「アルフォート様、食事の用意ができました」
セコイアの声がする。
昨日はずいぶんグッスリと眠れたようだ。
ようやく元の世界に戻ってこれた。
プロジェクトの進行状況を確認しよう。
(がちゃ)
ドアを開ける音がする。
あれ……、
セコイアがいる。
どういう事だ?
あれ、
戻っていない。
どういう事だ。
「今日は楽しみですね。倉庫を確認してから、孤児院に打診しに参ります」
セコイアは笑った。
やはり、
戻っていない。
まぁいいか。
了解はもらったし、
向こうも結構派手にやってくれてるし楽しもう。
そう思えた。
「そうだね」
私は笑顔で返した。
食事を終え、
私は執務室に戻る。
とりあえず書類を見ようと、書類を見て回る。
面倒だな。
そう思った。
何が面倒って全てが手書き。
そして要領を得ない文章が多い。
とりあえず雛形を作ろう。
そう思い書類に必要事項を記入した。
作業は昼過ぎまでかかった。
私はガーナを呼び出す。
「お呼びですか?アルフォート様」
「あぁ。この書類を見てもらいたい」
私は書類を手渡す。
「これは手続きに関する書類ですね」
「あぁ。不備はないか?」
「不備はございませんが、肝心の申請内容が書かれておりません」
「それはいいのだ。それと同じ書類を版で刷って、配れば、仕事は早くならないか?」
「これをですか……」
ガーナは不思議そうな顔をしている。
「ちょっと待ってください」
ガーナは部屋から出て行った。
三十分ほど経ち、
ガーナは戻ってきた。
「これは便利です。
他の事務官に見せたところ、これだと仕事がずいぶん楽になると言っていました」
「そうか。じゃあ、この件を任せて良いかな」
「はい。よろこんで。ではどうしましょう。
まず我々内部で使用しはじめて、徐々に外部に広げるという形だとどうですか?」
「理由を聞いても?」
「いきなり全体で使いだすと、雛型が間違っていた場合、修正が困難です。しかし内部で使っていると、雛型が間違っていても、修正は比較的容易です」
「なるほど賢いな。
それで行ってくれ。
それで今後はできるだけ、この雛型を作って済ませられるものは、雛型で済ませるようにしよう」
「それは事務官側で判断しても良いと?」
「あぁ構わない。ただ同じような機能のものは作るな。全体で採用する前に、確認するようにして欲しい」
私は思い出した。
便利なツールを作っても、
再利用されない。
そして同じようなツールが何十個もある事実を。
私達は車輪を再発明する必要はないのだから。




