『十五年待った庭に、幼馴染が婚約者を連れて帰ってきました』 ――忘れた約束はいりません。私は今日から、自分の人生を育てます
『十五年待った庭に、幼馴染が婚約者を連れて帰ってきました』
――忘れた約束はいりません。私は今日から、自分の人生を育てます
十五年待った庭に
あなたは知らない女性を連れてきた
黒い日傘が落とした影の下で
幼い日の指切りは
あなたの笑い声にほどけていった
それでも
花に水を注いだ日々は消えない
誰かを待ち続けたこの手で
今度は私の明日を育てよう
忘れた約束はいりません
この庭に次に咲く花は
私が私のために選ぶ花です
登場人物紹介
相沢 蓮/25歳
本作の主人公。町の園芸店で働きながら、幼馴染・湊の母である妙子の暮らしを支えている。十歳の夏に湊と交わした「大人になったら結婚しよう」という約束を信じ、十五年間、故郷で彼の帰りを待ち続けてきた。植物を育てることが得意で、穏やかで我慢強い一方、自分の望みを後回しにする癖がある。
立花 湊/25歳
蓮の幼馴染で、十五年前に結婚の約束を交わした相手。十八歳で上京し、現在は東京の広告会社に勤めている。故郷に残る蓮へ母のことを頼みながら、次第に連絡を減らし、ある日突然、結婚を考えている恋人を連れて帰ってくる。都合の悪い過去から目をそらし、自分を支えてくれた人々の存在を当然のものとして受け入れている。
立花 妙子/65歳
湊の母。夫を早くに亡くし、故郷の古い一軒家で暮らしている。心臓に持病があり、長年にわたって蓮に通院や買い物を助けてもらってきた。蓮を本当の娘のように愛し、「いつか家族になるのだから」と自分から「お義母さん」と呼ばせた。しかし、息子の帰りを待たせることで、蓮の人生まで自分のそばへ縛りつけてしまったのではないかと後悔している。
三好 沙耶/23歳
湊が東京から連れてきた恋人。都会的で洗練されており、明るく積極的に振る舞う。両親から湊との結婚を反対され、「地方で暮らす母親とうまく付き合えること」を証明しようと、理想の嫁を演じている。湊から蓮の存在を知らされていなかったため、蓮を恋敵だと思い込み、焦りから妙子の暮らしや大切な庭へ踏み込んでしまう。




