第14話 球技大会
その翌日。僕は電車で会場に来た。
正直今の祈里さんに会うのが怖い。
僕は会場内に入る。
「おはよう」
背後から話しかけられる。後ろを振り向くと、そこには祈里さんがいた。
「おはよう」
僕は緊張しながらも、そう返答をした。
「昨日の事だけどさ」
僕は頷く。
「三輪君は何も悪くないよ」
「そう……」
どうしよう、緊張して言葉があまり出てこない。
「私達これからも同じようにやって行こうよ」
「うん」
なんとなしに気まずい。だけど、なんだか少しだけ、ほっとした気分になった。
そして。球技大会が始まった。まずは男子だ。
午前は男子がやって午後は女子がやる、といったスケジュールになっている。
さて、野球だ。
僕は運動が出来ない。きっと今日もやらかしてしまうだろう。
だけど、不思議と怖さはない。
「三輪くん頑張れ」
向こうで、祈里さんが応援してくれているから。
「なあ、あのさ」
ベンチで隣の席の、福城君が、話しかけて来る。
「三輪君って、そんなに秋峯さんと仲いい訳?」
「ま、まあ」
緊張して上手く話せない。
「僕が一方的に仲良くさせてもらってるというか」
あれ言葉遣い変だったりする?
「そうだったのか。出会いは?」
「彼女と一緒にご飯食べてた」
「え、あいついつもどこで食べてるの」
「それは、内緒だって」
「へえ、秋峯さんの秘密ってわけか」
「……うん」
とは言っても、僕の会話はこれでいいのかって迷ってしまう。
「なあ、その長髪」
僕はびくっと肩を鳴らす。
その間に、味方の二番バッターが、ライト前に転がるヒットを放つ。
「すげえよな」
「え?」
今の流れ的に、やじられる流れかと思っていた。
「髪の毛そこまで伸ばせるって」
「伸ばしたいわけじゃ、ないんだけどね」
僕も出来る事なら、この髪の毛を切りたい。
「理由は複雑だから、あんまり言いたくないけど」
「なら、言わなくてもいいよ」
「っうん」
そしてどんどんと、進んでいく。
「僕の出番だ」
そして、福城君がたちあがる。
「がんばってください」
そう、僕が言うと、「敬語はいらないよ」と言って、立ちああった。
そして、福城君が打席に立つ。
彼はバットを構える。
チャンスの場面だ。
なんとなく、応援したくなる。
福城君のバットは宙を切り、三振に倒れてしまった。
「だめだったね」
そう言って福城君は僕の隣で座る。
「ドンマイです」
「だから、敬語いらないって」
ちなみに僕はベンチスタートだ。
だけど、その後途中から僕も打席に立たせてもらえる。
正直打席になんて立ちたくはない。
蚕糸に害に道はない。現に僕が練習との時は、たまたま一本ヒット出たけれど、それ以外は全部凡退。
打てるわけがない。
まあでも、今はまだベンチだから、そこまでは心配をする必要はない。
杞憂に終わる可能性もある。
そして僕は、ベンチから只、試合を眺め続けた。
それから、打席に立ったのは7かいの場面であった。僕はバットを構える。
二対一だ。
打てなくてもいい、とはわかっているけれど、でも、やはり緊張する。
「がんばれー」
大声で叫ぶ人がいる。
僕はその声援にこたえるために、撃たなくてはならない。
僕は、全身でフルスイングを舌。
そして、そのバットの先にボールがちょこんと当たる。
そして、地面をてんてんと転がる。
そのボールを、取るために、サードにいた人が前進する。その間に僕は一塁ペースまでたどり着いた。
なんと格好が悪いんだろうか。
だけど、無事に一塁に着いた。
ヒットだ。
まさかのヒットで、出塁できてしまった。
ラッキーすぎる。
僕は小さくガッツポーズをした。
だけど、僕はホームベースに帰ることは出来なかった。
結局、次のバッターが、二人目のバッターがまとめて打ち取られてしまった。
まあ仕方ない。言い方は悪いけれど、僕が活躍出来たら、負けてもいいのだ。
「お疲れ」
福城君がそう声を優しく声をかけてくれた。
「うん。ホームには帰れなかったけれどね」
「ヒットで出塁した、というだけで偉いよ」
「ありがとう」
クラスメイトでありながら、今日まではあまり交流のなかった福城君だったけれど、でも、今日話しているだけでも、結構いい人なんだな、と感じた。
この人ならば、僕の複雑な事情も呑み込めるんじゃないかとも。
だけど、僕は言えないのだ。怖いから言えない。
今も、祈里さんにどう思われているのかも分からないのだから。
そして試合は無事に勝てた。
その次の試合でも勝った。
だけど、三戦目にようやく負けた。
僕は今日、合計で四打席に立って結局最初の一安打だけだった。
だけど、無安打よりはましだ。そう思い、僕は自分を許すことにした。




